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飛行機が墜落する前に犠牲者が痛みを感じる時間はなかったので、その分の慰謝料を支払う必要はない――。
2019年のエチオピア航空302便墜落事故をめぐり、ボーイング社側がそう主張していることがわかった。
2019年3月10日、アディスアベバからケニアの首都ナイロビに向かっていたエチオピア航空のボーイング737型機が離陸直後に墜落し、搭乗者157人全員が死亡した。
この事故の裁判で、ボーイング社側は2023年2月に裁判所へ資料を提出。
その中で「ジェット機は音速で飛行しており、搭乗者全員はほぼ瞬時に死亡したため、痛みを感じる十分な時間がなかった」という主張を展開し、「痛みや苦しみについての追加慰謝料を支払う必要はない」という考えを示した。
ウォール・ストリート・ジャーナルが入手した裁判資料によると、ボーイング社側の専門家証人であるジョナサン・フレンチ氏は「乗客は間違いなく恐怖を感じただろう。その一方で、人間は希望を持ち続け、最悪の事態を予期しない傾向がある」「それぞれの乗客の主観的な体験を知ることは不可能だ」と論じた。
一方、原告は「(乗客は)極度の重力に耐え、衝撃に備え、そして飛行機の故障を知り、最後に恐ろしいスピードで地面に衝突した。その間、耐え難い精神的苦痛、痛みや苦しみ、身体的な衝撃や怪我を経験したことは間違いない」と訴えた。
ボーイング社の「痛みを感じる時間がなかったので、その分の慰謝料を支払う必要はない」という主張は、あまりにも被害者の苦しみを無視したものだといえる。
しかし、同社が裁判が行われているアメリカ・イリノイ州でこのような主張をするのには、法的な根拠がある。
シカゴ弁護士会は「イリノイ州の裁判所はニューヨークやテキサスなどの他の州と異なり、衝撃を受ける前に死者が感じた恐怖について損害賠償を請求できるかどうかをまだ十分に検討していない」と指摘している。
また、1979年にシカゴ郊外で起きたアメリカン航空191便墜落事故では、こういった精神的苦痛に対して請求できる損害賠償が制限された。
ボーイング社は2019年のエチオピア航空302便墜落事故で、民事訴訟の約75%を解決済みであり、残る係争の早期解決を望んでいると考えられる。
ボーイング社の広報は、残りの裁判を「建設的に解決」するために尽力する、とハフポストへの声明で述べた。
「ライオン航空610便とエチオピア航空302便で愛する人を失ったすべての方々に深くお詫びします」
「私たちは、悲劇的な事故で甚大な被害を与えたことを認識しており、すべての犠牲者の家族に、完全かつ公正に補償するとお約束しています」
「私たちはこれまでの数年、その約束を守り、大部分の損害賠償請求を解決してきました。家族の皆さんが完全かつ公正に補償されるように、残りの訴訟を建設的に解決したいと思っています」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「飛行機墜落で、犠牲者は痛みを感じなかった」。2019年の事故でボーイング社が主張