【神宮外苑の樹木3000本伐採問題】新宿区は「風致地区」の規制を緩めて高層ビルの建築を可能にしていた

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低木も含めて、3000本もの樹木の伐採許可申請が提出されている、東京・明治神宮外苑の再開発計画。

この約3000本が伐採される建国記念文庫の森と神宮第二球場の周辺エリアが、再開発を進めるために、規制の厳しい風致地区AもしくはB地域から、S地域に変更されていたことがわかった。

S地域はAやBに比べて規制が緩く、変更により高層ビルの建築が可能になった。

建国記念文庫の森

どのように変更されたのか

風致地区とは、都市にある優れた自然的景観を維持するために指定された地域のことだ。

神宮内外苑は日本初の風致地区であり、建国記念文庫の森は2020年まで「風致地区A地域」、神宮第二球場周辺は「B地域」に指定されていた

Aは「優良な風致を特に保全すべき」と定められた最も規制の厳しい地域で、Bは「美観、雰囲気を守る役割を果たすべき地域」になっている。

しかし新宿区は2020年2月、この建国記念文庫の森と神宮球場周辺のエリアを「公共的なまちづくり手法等との整合を図る」ことができる「S丙地域」に指定変更した。

2月24日の新宿区の予算特別委員会で明らかになった。この変更は、これまで区議会や都市計画審議会にも報告されていなかったという。

(左)2018年11月時点の風致地区指定(右)建国記念文庫の森や神宮第二球場がS地域に変更された後の地図

この理由について、新宿区は「変更は区が決められると規定で定められているため」とハフポスト日本版の取材で説明した。

新宿区の風致地区における行為の許可については、A・B・C・D・Sの5種類の地域ごとに許可の基準や特例的許可の基準が定められている。

明治大学の大方潤一郎特任教授(都市計画)は、「A地域からS地域への変更は、区の行政内部の内規である『区長が行う許可の基準』を変更しただけなので、都市計画審議会にも、議会にも報告せずにできてしまう」と説明解説する。

S地域への変更で何が変わる?

この変更で変わることの一つが、許可される建物の高さ制限だ。

神宮外苑付近は第2種風致地区に指定されており、建物高さは原則15m以下とすることが条例で規制されている。

しかし、S地域へ変更することで、地区計画に応じた高さの建築物が建てられるようになる。

大方教授はこういった変更について「風致地区の本来の規制を、区長の特例許可によって緩和する仕組みになっている」と説明する。
また、樹木伐採についての制限は変わらないものの、緑地率の基準が緩和される上、樹木のない芝地であっても緑地にカウントされるので、樹林地を潰して芝地に置き換えるといったことがしやすくなるという。
再開発の完成イメージ図。190メートルや185メートル、80メートルの高層ビルが建築される予定になって

東京都の指針で、AからSに変更された

新宿区によると、S地域への変更は東京都による再開発計画「神宮外苑地区のまちづくり」の一環として行われた。

東京都はこの再開発を決めた際に、段階的に風致地区の区分を変えていく計画を立てたのだという。

以前は東京都が風致地区の許可権限を持っており、まず最初に都が国立競技場のあるエリアをS甲地域に変更した。

その後、2014年4月に風致地区の許可権限は区や市に移管された

建国記念文庫の森や神宮第二球場周辺のエリアに再開発の順番が回ってきたことを受け、新宿区は2020年2月に東京都の要請に応じて、S地域(S丙地域)に変更したのだという。 

しかしこのエリアは元々、都市の優れた自然的景観を守るために、風致地区のAやB地域に指定されていた。

新宿区は「A地域やB地域のままであれば、樹林地を潰して芝地に置き換えたり、高層ビルの建設をするのは難しかった」という見解を示している。

大方教授は、「それだけに、再開発促進区地区計画を定める際には、それによって実現しようとする建築計画や緑地計画を十分に吟味する必要があるわけです」と述べ、風致地区による緑地・景観の保全効果に頼らず、再開発計画を審査・認可する重要性を強調する。

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【神宮外苑の樹木3000本伐採問題】新宿区は「風致地区」の規制を緩めて高層ビルの建築を可能にしていた

Satoko Yasuda