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2月中旬に完成した仏像の写真がSNSに投稿され、大きな反響を集めている。北海道函館で公立中学校の美術教諭をしている九千房政光(くせんぼう・まさみつ)さんが作り上げた「菩薩立像(ぼさつりゅうぞう)」だ。
函館芸術ホールで開催中の「はこだて・冬・アート展」で3月5日まで展示されている。
■実在する人物のモデルはいない。「自分の理想とする顔立ちを造形しました」と作者
付属物を合わせると高さは90センチほど。東京国立博物館に所蔵されている同名の仏像がモチーフだ。布のリアルな形状を再現するために繊維強化プラスチック(FRP)を用いて、約7カ月かけて造形したという。
SNS上では「壇蜜さん、そっくり」「松本まりかさんに似てる」などの声も上がっている。あたかも実在する女性をモデルにしたようにも見えるが、作者の九千房さんは「誰かをモデルにして形作ってはおらず、自分の理想とする顔立ちを造形しました」とハフポスト日本版の取材に答えている。
今回の新作を含めて、2018年から計10体の仏像を完成させている九千房さん。リアルな現代女性の姿を元に造形している理由については、著名な物を含めて多くの菩薩像が「女性の形に寄せて作る傾向」があると気づき、「初めから女性として作ってもいいのでは」と思い立ったという。
ただし、現在では「仏教の儀軌(ぎき)になるべく則って造像してゆくことも必要」と考えていると打ち明けた。
■九千房さんとの一問一答はこちら
―― 仏像を2018年に作り始めたきっかけは?
美術部の顧問になり、子供たちが制作しているうちに自分も作ってみようと思ったのがきっかけです。
―― 中学校教員を続けながら、造形作家として作品を作っていくことで苦労はありますか?
教員の仕事内容は報道でも取り上げられるくらい超絶激務を極めます。物理的な仕事量も多いのですが、精神的にキツイ部分がかなりの割合を占めています。初めは趣味の範囲内で行っていた活動が今ではギャラリーからの要望が多くなり、作るのがしだいに辛くなってきているレベルになっています。そのような中で教員と作家活動の両立は自分でもよくやっているなぁと思っています。
―― これまでに作った仏像は何体でしょうか?
これまでに作った作品は 大日如来胸像1、2、3作。弥勒菩薩坐像、聖観音菩薩胸像1、2作。アートフェア東京向け作品(大日如来胸像1 救世観音菩薩胸像1 弥勒菩薩坐像1)そして最新作菩薩立像1の全部で10体です。同時並行で作っている途中の物(如意輪観音や名前のついていない座像、首だけなど)もあります。
―― 「スカルプターズ・ラボ」のインタビューによると、今回の「菩薩立像」は国立博物館にある菩薩立像をモデルにしたそうですが、その理由は?
単純に一目ぼれです。あの細かい造形、バランスの取れた全体像、経年の劣化具合、きりりとしたお顔立ち、菩薩立像は次期国宝に上げられてもおかしくない作品だと思います。
―― 今回の作品を始めとして、九千房さんの仏像は伝統的な物とは異なり、現代の日本女性のような姿をしています。こうした造形になった理由は何でしょうか?また、これまで仏像を作る際にモチーフにした実在の人物はいますか?
学生の時から人物像を作ることが好きで、特に女性の美しさを形にすることを追及していました。仏像を作るときに着目したのが、数多ある菩薩像が(有名なものも含めて)女性の形に寄せて作る傾向があり、一見すると女性ではないかと思わせられるものも少なくありません。それであれば初めから女性として作ってもいいのではないかと考え作り始めました。現在はその考えを改め、仏教の儀軌になるべく則って造像してゆくことも必要と考え始めています。ちなみに誰かをモデルにして形作ってはおらず、自分の理想とする顔立ちを造形しました。「壇蜜さん」や「綾瀬はるかさん」「石原さとみさん」、最近は「松本まりかさん」に似ているとの声があります。
―― 「菩薩立像」の制作中、特に注意が必要だったのはどのような点でしょうか?
制作の際に特に注意していることは目を慣れさせないことです。制作しているとだんだんと目が慣れてきて違いやバランスの崩れがわからなくなってきます。脳内でバランスの崩れを補ってくれているのをリセットします。常に第三者の目線になるように心がけます。
―― SNS上で作品が大きな反響を呼んでいることをどう感じていますか?
ネットでは様々な反応をしていただき、それが刺激になり参考になっています。これは仏像なのか?そうではないか?といった議論が巻き起こり一つの力学が働くことを思ったりもしています。しかし、私は純粋に制作がしたい。それが根底にあります。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「本物の人間かと思った」リアルすぎる仏像に驚愕する声。モデルなしで「自分の理想とする顔立ちを造形」と作者