「これは命の問題です」LGBTQ差別発言を受けて、20歳の当事者が岸田首相に伝えたこと

山島凛佳さん

あわせて読みたい>> 岸田首相は法律で差別否定を。秘書官発言にLGBTQの人権を守る署名スタート。

「しんどくなりすぎないうちにさっさと死んでしまいたいな、と思ったことはありますか?」

岸田文雄首相にそう話したのは、性的マイノリティ当事者で大学生の山島凛佳さん、20歳。

元秘書官が性的マイノリティについて「見るのも嫌だ」などと差別発言したことについて、岸田首相は2月17日、LGBTQ関連団体らと面会し、謝罪した。参加した団体のヒアリングも行われ、山島さんは当事者の若者として感じていることや、政治に求めることを伝えた

記事後半で、山島さんが岸田首相たちに伝えた言葉の全文を掲載しています。

「またか」。差別発言が報じられた当時、山島さんはそう思った。同時に、そうした発言が国政の中枢から出ていることに絶望した。

面会の参加も最初はためらった。自分たちを傷つけている人たちの代表と会うことへの不安があったが、当事者やアライの友達、権利運動を先導してきた活動家の存在が参加する勇気になった。

「日々傷ついている友達の存在も、今私が言わなければ岸田さんはそれを知らないまま生きていくんだろうなって思うと、伝えなくてはいけないという気持ちがありました」

面会では団体側から、理解増進ではなくて差別を禁止する「LGBT法」の制定、結婚の平等(法律上の性別が同じカップルの結婚)の実現など、当事者の生きづらさを解消する法整備などを求めた

面会に参加した山島さんとLGBTQ関連団体ら、岸田首相、小倉將信大臣、中谷元首相補佐官、森雅子首相補佐官

山島さんは、LGBTQ当事者の居場所作りや情報発信をしている「プライドハウス東京」の一員。ユーススタッフとして、当事者やそうかもしれない若者の交流サービスに取り組んでいる。

若者世代は情報を手に入れやすい時代で育っていると話す山島さん。LGBTQという言葉、当事者やアライの存在も身近に感じているという。

「海外では法整備が進んで暮らしやすくなっていたり、LGBTQ+を扱った作品も増えてきてきている。社会に受け入れてもらえると思いながら育っているのに、大人になるにつれて『制度の壁』と直面して折れてしまう。私たちが否定されている現状が苦しいです」

「例えば結婚の平等が実現されていて、同性カップルも幸せになれる未来が想像できる世の中で育っていたら、私たちもカミングアウトする時にしんどい思いをしなかっただろうと思います」

岸田首相は17日、森雅子首相補佐官をLGBT理解促進担当に任命した。しかし、面会後も「LGBT法案」をめぐって「自民党が党内論議を始めるめどが立たない」と報じられており、法整備の道筋は見えないままだ。

このような状況に、「政治が変わらないことを心得なければいけないのか」と思うこともある。しかし、自身のSNSなどで声を上げた時に連帯してくれる「仲間」たちに希望を感じている。

「大丈夫かも」「この人たちと一緒なら、変えられる気がする」。山島さんは自分が今回のような訴えをする「最後のユース」になることを願っている。

山島さんが岸田首相たちに送った言葉(全文)

私は今20歳です。2003年に生まれました。岸田さん、小倉さん、中谷さん、森さんが20歳のとき、あるニュースを見て、遠くにいる友達がちゃんとご飯を食べているのかちゃんと寝れているかが気になって、抱きしめたくなったことはありますか?

守ってもらえない、幸せになれないのならしんどくなりすぎないうちにさっさと死んでしまいたいな、と思ったことはありますか?

これは私が繰り返される差別発言ニュースを、1人で、部屋で、ベッドの上で、読んでいた時の感情です。今回だけではなく、これまでも幾度となく感じてきたものです。

デジタルネイティブの私たち(子ども・ユース)は常に情報をキャッチできます。世論、著名人、企業、経団連、政治家が、国内外問わず、どんどん肯定的な意見を発信していることも、これまで何年もかけて行われてきた法整備を求める動きにようやく大きなうねりができたことも知っています。

それなのに、いまだに「慎重な」「議論」を「検討」していることを知った時、私たちの住んでいる世界とあまりにも違う「感覚」や「理解」によって行われる、あまりにも厚くて暴力的な「永田町のやりかた」に「私たちの声の届かなさ」に悔しくて涙が止まりませんでした。

「差別を許さない」の文言を避けようとしていること。

「多様性を尊重し、包括的な社会を実現する」とか言いながら、理解増進法という生ぬるいもので留めようとしていること。

私たちの家族のあり方、人生のあり方を否定しようとし続けていることも知っています。

私たちを否定してくるのは社会の「雰囲気」なのではなく、制度です、制度だけが私たちを否定しています。

私の性自認や恋愛的・性的指向、性表現は私のほんの一部分でしかないけれど、それらを否定された時、私の全てや大切なともだち、そして人生を否定されたような気分になります。

正直、今日ここにくるのも、みなさんの前でお話しするのも本当に怖かったです。なぜならあなたたちの発言や行動は、私や私の大切な人たちを長い間、傷つけ続けているから。

でも、私が1人で傷ついて泣いていたことも、私のような子ども、ユースの友達が全国に今現在もたくさんいるということも、なかったことにされたくなかったからここに来て話しています。

「社会の理解を増進する」ことが足りないとお考えのようですが、今、当事者で若者である私が、プライドハウスから「利用者」としてだけではなく、「居場所作りをしている立場」になってここに来ていること、そして、こんなにも堂々と、首相の前で訴えているという事実こそが、LGBTQ+活動団体が動き続けた結果、理解の進んだ世の中が少しずつできてきた、そして、そこで育った子供が少なからずいるということの証明だと思います。

私が、政治の場でこのようなことを話して求める最後のユース、若者でありますように。こんなことが次の世代にもう2度と、繰り返されませんように。

私はLGBTQ+当事者であるということでいかなる差別も受けず、差別禁止法がしっかりと定められている国でただ生きていきたいだけです。誰のための政治・法律でしょうか?これは命の問題です。

最後に、私はこのヒアリングにわずかながら、希望を感じています。これがただのパフォーマンスではないことを法整備をすることで、はっきりと示してください。

…クリックして全文を読む

オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「これは命の問題です」LGBTQ差別発言を受けて、20歳の当事者が岸田首相に伝えたこと

Jun Tsuboike