「体型はトレンドじゃない」。“ヘロイン・シック”体型の人気再燃の兆しに批判殺到【2022年回顧】

「ヘロイン・シック」の象徴的存在だったモデルのケイト・モス(1997年撮影)

もっと読む:SNSでの「体型批判と人種差別」に涙を流し反論。人気歌手リゾを、多くの著名人が支持

2022年にハフポスト日本版で反響の大きかった記事をご紹介しています。(初出:11月26日)

流行の体型に乗り遅れないようにするのは大変だ。理想とされる体型は常に変化し、その体型でいることへのプレッシャーが女性にのしかかる。

近年のトレンドは、2000年代初期から中期にかけてもてはやされたスリムな体型からシフトし、ブラジリアンバットリフト(BBL:ヒップアップ形成手術)が人気だ。

その背景には、人気リアリティ番組に主演するセレブ一家、カーダシアン家の存在がある。キム・カーダシアンやその姉妹のインスタ映えする体の曲線美が人気を呼び、世界中でBBLがトレンドとなった。

カーダシアン姉妹らは手術を受けていない、と否定しているが、たくさんの女性たちが、危険を伴ってでも彼女たちのような体型を手に入れようとしている。(イギリスの国民保健サービスNHSによると、BBLは全ての美容整形の中で最もリスクが高く、死亡する確率は他の手術に比べて少なくとも10倍は高いと言われている)

ボディ・トレンドの変化

しかし、流行の体型は再び変化し始めている。

11月頭、New York Post紙は2000年代に流行したスリム体型ではなく、それ以前のボディトレンドの再来を宣言した。

記事は「お尻よ、さようなら。ヘロイン・シックが戻ってきた」という見出しで、各方面から強い反発を受けている。

x.com

ヘロイン・シックとは、1990年代初頭に流行したトレンドルックで、痩せた体、青白い肌、目の下のクマなどにより、ヘロインを打った直後のような感じを表現したルックスのことを指す。

セレブやインフルエンサー、一般のSNSユーザーなど、誰もがそのトレンドについて再び言及することがいかに危険かを発信している。

ボディポジティブのメッセージを発信し続けている俳優のジャミーラ・ジャミールさんはTikTokで、「(ヘロイン・シックは)すでに90年代に流行し、多くの人が摂食障害になった。私も20年間苦しんだ。また流行らせてはいけない。戻ってはいけない。私たちの身体は『流行』じゃない。体型は『トレンド』じゃない」と強く批判した。

@jameelajamil

#greenscreen#fyp

♬ original sound – Jameela Jamil

テレビ司会者で過食症に苦しんだ経験もあるファーン・コットンさんもこの議論について、「女性の身体は長い間議論され、執着されてきた。でも忘れてならないのは、どんな身体も恥じるべきではないということ」だとInstagramで述べた。

当時「ヘロイン・シック」の象徴的存在だったモデルの1人であるケイト・モスでさえ、その言葉に関連づけられるのが嫌だった、と後の雑誌インタビューで明かしている。

とはいえ、一部のセレブの体型には紛れもなく変化が見られている。キム・カーダシアンも妹のクロエも、以前よりスリムになったように見える。

キムは5月、メットガラでマリリン・モンローのヴィンテージトレスを着るために3週間で約7キロ減量したと発言し、物議を醸した。

2022年5月、メットガラでマリリン・モンローのヴィンテージトレスを着たキム・カーダシアン

ソーシャルメディアでは、キムやクロエからは2000年代初頭のモデルルックの影響が見受けられるとの意見もある。

BBLを得意とする美容外科医ロベルト・チャクール氏は、カーダシアン姉妹を含め、以前は曲線美を好んでいた女性たちが、今はスリムな体型を好んでいるという意見に同意する。

「豊満な体型の流行ピークは5〜7前のこと。今はもっと、スリムで調和のとれた体型が求められています」

黒人女性にとってこの変化が意味するもの

「大きなお尻」は黒人コミュニティで常に称賛されてきたが、白人コミュニティでは2000年代初頭でも、まだそうは見られていなかった。

しかし、キムやその姉妹がテレビやSNSで有名になり、白人コミュニティの体型へに対する考え方が変わり、突然、曲線美のある体型が憧れの対象になったのだ。

キムは白人女性だが、ラッパーのカニエ・ウェストとの6年間の結婚生活の間、より日焼けして曲線美を際立たせたスタイルをしており、一部の黒人女性はそれを身体と文化の盗用と見ていた。(キムは否定している)

しかし最近のカーダシアン姉妹は、そのスタイルから遠ざかり、スリム体型へと向かっているように見える。

クリエイターのダイアナ・シムムパンドさんはTikTok動画で、他にも、歌手のアリアナ・グランデ、マイリー・サイラスなどが、「黒人的なルックスから白人的なルックスに移行したと感じる」と述べた。

黒人女性にとって、その何が問題なのか。

「私は黒人女性であり、差別から逃れるため、より良い対応を得るため、目標に達するため、警察から逃れるために、黒人女性であることをやめることはできない」

「でも、黒人ではない人がその仮面を被ったり脱いだりすることは公平だと言える?」とシムムパンドさんは語る。

摂食障害の専門家でポッドキャスト「My Black Body」の共同ホストであるジェシカ・ウィルソンさんは、黒人女性の身体の見方に最も影響を与える要因は白人至上主義であると考える。

「白人至上主義は、私たち黒人の身体は常に過剰であり、許容される範囲を超えていると言い続けている」と述べ、そのため黒人女性たちは常に食事制限や過度の運動を行い、体型を脅威に見られないよう努力してきたという。

細い体型は常にトレンドだったのか

また、細い体型が流行から離れたことは実際にはないという意見もある。

ウィルソンさんは、「ファッションウィークや映画、テレビ、エクササイズのインストラクターや主流カルチャーの中で、いつも見ています。スーパー・モデルのベラ・ハディッドのような人は何年も存在し、体型を称賛されています」

「人々が自分の身体について前向きに受け入れられるようになったというのは真実ではありません。もしボディポジティブが私たちを解放するに十分であれば、ヘロイン・シックについての議論はすでに死んでいるでしょう」と述べた。

多くの著名人は「ヘロイン・シック」の再来に警鐘を鳴らしている。

俳優のジャミールさんはInstagramで、メディアの責任も追及した上で、「これまですごく前進してきたんだから、絶対に引き戻されない」と強く宣言。

女性に極端なボディイメージを押し付けることを批判し、「『ハッピネス・シック』を提案します」とポジティブなメッセージを発信し続けている。

ハフポストUK版の記事を翻訳・編集・加筆しました。

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オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「体型はトレンドじゃない」。“ヘロイン・シック”体型の人気再燃の兆しに批判殺到【2022年回顧】

「ヘロイン・シック」の象徴的存在だったモデルのケイト・モス(1997年撮影)

もっと読む:SNSでの「体型批判と人種差別」に涙を流し反論。人気歌手リゾを、多くの著名人が支持

2022年にハフポスト日本版で反響の大きかった記事をご紹介しています。(初出:11月26日)

流行の体型に乗り遅れないようにするのは大変だ。理想とされる体型は常に変化し、その体型でいることへのプレッシャーが女性にのしかかる。

近年のトレンドは、2000年代初期から中期にかけてもてはやされたスリムな体型からシフトし、ブラジリアンバットリフト(BBL:ヒップアップ形成手術)が人気だ。

その背景には、人気リアリティ番組に主演するセレブ一家、カーダシアン家の存在がある。キム・カーダシアンやその姉妹のインスタ映えする体の曲線美が人気を呼び、世界中でBBLがトレンドとなった。

テレビ司会者で過食症に苦しんだ経験もあるファーン・コットンさんもこの議論について、「女性の身体は長い間議論され、執着されてきた。でも忘れてならないのは、どんな身体も恥じるべきではないということ」だとInstagramで述べた。

当時「ヘロイン・シック」の象徴的存在だったモデルの1人であるケイト・モスでさえ、その言葉に関連づけられるのが嫌だった、と後の雑誌インタビューで明かしている。

とはいえ、一部のセレブの体型には紛れもなく変化が見られている。キム・カーダシアンも妹のクロエも、以前よりスリムになったように見える。

キムは5月、メットガラでマリリン・モンローのヴィンテージトレスを着るために3週間で約7キロ減量したと発言し、物議を醸した。

2022年5月、メットガラでマリリン・モンローのヴィンテージトレスを着たキム・カーダシアン

ソーシャルメディアでは、キムやクロエからは2000年代初頭のモデルルックの影響が見受けられるとの意見もある。

BBLを得意とする美容外科医ロベルト・チャクール氏は、カーダシアン姉妹を含め、以前は曲線美を好んでいた女性たちが、今はスリムな体型を好んでいるという意見に同意する。

「豊満な体型の流行ピークは5〜7前のこと。今はもっと、スリムで調和のとれた体型が求められています」

黒人女性にとってこの変化が意味するもの

「大きなお尻」は黒人コミュニティで常に称賛されてきたが、白人コミュニティでは2000年代初頭でも、まだそうは見られていなかった。

しかし、キムやその姉妹がテレビやSNSで有名になり、白人コミュニティの体型へに対する考え方が変わり、突然、曲線美のある体型が憧れの対象になったのだ。

キムは白人女性だが、ラッパーのカニエ・ウェストとの6年間の結婚生活の間、より日焼けして曲線美を際立たせたスタイルをしており、一部の黒人女性はそれを身体と文化の盗用と見ていた。(キムは否定している)

しかし最近のカーダシアン姉妹は、そのスタイルから遠ざかり、スリム体型へと向かっているように見える。

クリエイターのダイアナ・シムムパンドさんはTikTok動画で、他にも、歌手のアリアナ・グランデ、マイリー・サイラスなどが、「黒人的なルックスから白人的なルックスに移行したと感じる」と述べた。

黒人女性にとって、その何が問題なのか。

「私は黒人女性であり、差別から逃れるため、より良い対応を得るため、目標に達するため、警察から逃れるために、黒人女性であることをやめることはできない」

「でも、黒人ではない人がその仮面を被ったり脱いだりすることは公平だと言える?」とシムムパンドさんは語る。

摂食障害の専門家でポッドキャスト「My Black Body」の共同ホストであるジェシカ・ウィルソンさんは、黒人女性の身体の見方に最も影響を与える要因は白人至上主義であると考える。

「白人至上主義は、私たち黒人の身体は常に過剰であり、許容される範囲を超えていると言い続けている」と述べ、そのため黒人女性たちは常に食事制限や過度の運動を行い、体型を脅威に見られないよう努力してきたという。

細い体型は常にトレンドだったのか

また、細い体型が流行から離れたことは実際にはないという意見もある。

ウィルソンさんは、「ファッションウィークや映画、テレビ、エクササイズのインストラクターや主流カルチャーの中で、いつも見ています。スーパー・モデルのベラ・ハディッドのような人は何年も存在し、体型を称賛されています」

「人々が自分の身体について前向きに受け入れられるようになったというのは真実ではありません。もしボディポジティブが私たちを解放するに十分であれば、ヘロイン・シックについての議論はすでに死んでいるでしょう」と述べた。

多くの著名人は「ヘロイン・シック」の再来に警鐘を鳴らしている。

俳優のジャミールさんはInstagramで、メディアの責任も追及した上で、「これまですごく前進してきたんだから、絶対に引き戻されない」と強く宣言。

女性に極端なボディイメージを押し付けることを批判し、「『ハッピネス・シック』を提案します」とポジティブなメッセージを発信し続けている。

ハフポストUK版の記事を翻訳・編集・加筆しました。

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「体型はトレンドじゃない」。“ヘロイン・シック”体型の人気再燃の兆しに批判殺到【2022年回顧】

Habiba Katsha