関連記事:TikTokで話題のエクササイズ「ホットガール・ウォーク」は心にも効く。ポイントは何を考えながら歩くか
ニューヨーク・ファッションウィークが2022年9月に開催された。Fendiのショーの最前列席には、Vogue編集長のアナ・ウィンターやハリウッド俳優のサラ・ジェシカ・パーカーなど、ファッション界のセレブたちが集結した。
そこには、18歳のTikTokファッションインフルエンサーのエリー・ジーラーさんの姿もあった。
ファッションウィークはもはや、ファッションエディターや映画スターだけのものではない。インフルエンサーもゲストリストの重要な一部となっている。そしてその事実は、多くの人を困惑させている。
1000万人以上のフォロワーを持つジーラーさんは、秋のファッションウィークのショーに招待された、たくさんのソーシャルメディア・インフルエンサーの1人だ。
「私は、キム・カーダシアンと同じ部屋に座っていました。TikTokがこれほど素晴らしい機会をもたらしてくれるとは、夢にも思わなかった」と彼女は語る。
ブランドがインフルエンサーをショーに招待するのは、彼らに価値があるからだ。特定層のファンは彼らをフォローし、どんな服に夢中になっているかを知りたがる。1本15秒のTikTok動画やInstagramのストーリーが、何千もの売り上げにつながる可能性があるのだ。
「ブランドは私たちの分析数値を求めます。つまり、私の動画をどんな人が見ているのか、正確に把握しています。年齢、性別、フォロワーの所在地などね」とジーラーさんは語る。
「誰がそこを通るかわからないのに、なぜ看板広告にお金をかけるの?ファッションインフルエンサーを雇えば、そのページにアクセスする人はみんなファッションコンテンツを求めているとわかるのに」
タイアップパートナーを探す際、企業は信ぴょう性を求める。インフルエンサーは、そのブランドのファンであり、詳しくなければならない。
240万人以上のフォロワーを持つTikTokerのマリッサ・レンさんは、「ブランドは、インフルエンサーと自分たちのブランドにどれだけ親和性があるかを見ます。そして、誰とでも仲良くなれる、誠実な人柄を求めています」と話す。
レンさんはファッション・ウェブストア「Revolve」の服を着て投稿していたところを同社に発掘され、数年前から一緒に仕事をしている。
「通常、私の広告は単発の契約ですが、Revolveのスタッフと本当に親しくなり、友達になりました。いつも良くしてくれて、楽しい旅行やプロジェクトの際には常に連絡をくれます」
ブランド主催の旅行は、TikTokインフルエンサーであることの最大の特典の1つだ。Revolveはレンさんをアメリカ最大級のスポーツイベント「スーパーボウル」のプライベートパーティに招待した。パーティでは、ジャスティン・ビーバーやドレイクのパフォーマンスが行われたという。
@marstruck we love u @revolve #revolve#revolvearoundtheworld
ジーラーさんも、Amazonによるメキシコ旅行など、これまで何度かブランド旅行に参加している。
しかし彼女は、それが正当な時間の使い方とは思わないようだ。
「こうした旅行では、みんなブランドとタイアップしたいから、ご機嫌取りに必死なんです」とジーラーさんは語る。
また、TikTokerたちはイベントなどで良い印象を与えるため、常に表向きの顔を強いられていると感じることがよくあるという。楽しいはずのイベント出演が、ストレスになりかねないのだ。
プラスサイズ向けのファッション系TikTokerで160万人のフォロワーを持つクリスティン・トンプソンさんも、ブランド旅行で不快な思いをしたことがあるという。
「スワッグバッグ(試供品やお土産が入った袋)をくれるんだけど、もらったパジャマが小さすぎて入らなかったことがある。プラスサイズの私を招待したってことを忘れてたみたい。人種やサイズにおいてもっと多様性を取り入れる努力が必要だと思います」
トンプソンさんが参加するブランド旅行では、包括性のなさが常態化しているという。「残念です。でも今始まったことではありません」
ファッション業界は未だに多様性に欠けており、ファッションイベントでは周囲に溶け込むためのプレッシャーを感じるという。「私はブランドからファッションショーに招待されることはあまりありません。ファッションを強調するために彼らが選ぶインフルエンサーではないから。あまり包括的ではないんです」
トンプソンさんは、ファッション・ウィークでは「仲良しグループ」的な雰囲気が常に存在し、グループの一員か、そうでないかで判断されるという。「会話やイベントで常に自分をはめ込もうとしているように感じる」と話す。
そう感じているのは彼女だけではない。
インフルエンサーの名声がソーシャルメディアを超えた今、ファッション業界に自分が属していないと感じ、悩む人もいる。「自分にはそこにいる価値がある」、と証明することへのプレッシャーがあるのだ。
ジーラーさんは自分を「負け犬のように感じる」と話す。「インフルエンサーの仕事内容を知らない人が多いから、私は自分の仕事を正当化し、証明しなくてはいけないんです」
FendiやDiorなどのラグジュアリーブランドとも仕事をするインフルエンサーのザック・ルゴさんも、自身の能力を認められない「インポスター症候群」であると認める。
「自分はまだ地元から出てきたばかり。Aリストのセレブが参加するイベントに招待され、彼らと同じ場所にいるのは緊張する」と語った。
有名ファッションデザイナーの娘でインフルエンサーのキット・キーナンさんは、物心ついた時からファッションウィークに足を運んでいた。彼女はMichael Korsなど誰もが憧れるショーに招待されているにもかかわらず、未だに時々場違いに感じるという。
「ファッションウィークでは、嫌な気持ちになったり、自分をちっぽけに感じたりします」
「イベントで超有名セレブを見たこともあリますが、そういう時は、私はインフルエンサーとしての役割がある、と自分に言い聞かせないとなりません」と話す。
では、TikTokのファッションインフルエンサーは次なるセレブになるのだろうか?
ジーラーさんはTikTokでの成功を、更に大きなスクリーンでのキャリアへのステップだと考えている。彼女は最近、YouTubeの「Brat TV」で配信されているドラマ「Crown Lake」で俳優業をスタートした。
「TikTokerは、ディズニーチャンネルに出演していた子役のようなもの。最終的に主流のエンターテイメントで本当にやりたいことを実現できる」と説明し、「自分をセレブだとは思いたくない」と語る。
確かに、彼らの視聴者層を見れば、まだセレブの域には達していないのかもしれない。セレブは様々な年代で広く知られているが、すべての人がTikTokをやっている訳でも、人気クリエイターを知っている訳でもない。
しかし、1億4820万人以上のフォロワーを持つチャーリー・ダメリオさんのように、TikTokerもセレブレベルの名声に達することができる。
もっとも、インフルエンサーとセレブの最大の相違点は、その親近感だ。
小さな町のクリエイターがゼロからフォロワーを増やしていく姿を見れば、視聴者は自分もSNSでたくさんの人に影響をもたらすことができるかもしれない、と感じる。それは、ファッション界のAリストセレブでも達成できないことだ。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
インフルエンサーたちの苦悩。華麗な世界の裏で何が起こっているのか?
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ニューヨーク・ファッションウィークが2022年9月に開催された。Fendiのショーの最前列席には、Vogue編集長のアナ・ウィンターやハリウッド俳優のサラ・ジェシカ・パーカーなど、ファッション界のセレブたちが集結した。
そこには、18歳のTikTokファッションインフルエンサーのエリー・ジーラーさんの姿もあった。
ファッションウィークはもはや、ファッションエディターや映画スターだけのものではない。インフルエンサーもゲストリストの重要な一部となっている。そしてその事実は、多くの人を困惑させている。
1000万人以上のフォロワーを持つジーラーさんは、秋のファッションウィークのショーに招待された、たくさんのソーシャルメディア・インフルエンサーの1人だ。
「私は、キム・カーダシアンと同じ部屋に座っていました。TikTokがこれほど素晴らしい機会をもたらしてくれるとは、夢にも思わなかった」と彼女は語る。
ブランドがインフルエンサーをショーに招待するのは、彼らに価値があるからだ。特定層のファンは彼らをフォローし、どんな服に夢中になっているかを知りたがる。1本15秒のTikTok動画やInstagramのストーリーが、何千もの売り上げにつながる可能性があるのだ。
「ブランドは私たちの分析数値を求めます。つまり、私の動画をどんな人が見ているのか、正確に把握しています。年齢、性別、フォロワーの所在地などね」とジーラーさんは語る。
「誰がそこを通るかわからないのに、なぜ看板広告にお金をかけるの?ファッションインフルエンサーを雇えば、そのページにアクセスする人はみんなファッションコンテンツを求めているとわかるのに」
タイアップパートナーを探す際、企業は信ぴょう性を求める。インフルエンサーは、そのブランドのファンであり、詳しくなければならない。
240万人以上のフォロワーを持つTikTokerのマリッサ・レンさんは、「ブランドは、インフルエンサーと自分たちのブランドにどれだけ親和性があるかを見ます。そして、誰とでも仲良くなれる、誠実な人柄を求めています」と話す。
レンさんはファッション・ウェブストア「Revolve」の服を着て投稿していたところを同社に発掘され、数年前から一緒に仕事をしている。
「通常、私の広告は単発の契約ですが、Revolveのスタッフと本当に親しくなり、友達になりました。いつも良くしてくれて、楽しい旅行やプロジェクトの際には常に連絡をくれます」
ブランド主催の旅行は、TikTokインフルエンサーであることの最大の特典の1つだ。Revolveはレンさんをアメリカ最大級のスポーツイベント「スーパーボウル」のプライベートパーティに招待した。パーティでは、ジャスティン・ビーバーやドレイクのパフォーマンスが行われたという。
ジーラーさんも、Amazonによるメキシコ旅行など、これまで何度かブランド旅行に参加している。
しかし彼女は、それが正当な時間の使い方とは思わないようだ。
「こうした旅行では、みんなブランドとタイアップしたいから、ご機嫌取りに必死なんです」とジーラーさんは語る。
また、TikTokerたちはイベントなどで良い印象を与えるため、常に表向きの顔を強いられていると感じることがよくあるという。楽しいはずのイベント出演が、ストレスになりかねないのだ。
プラスサイズ向けのファッション系TikTokerで160万人のフォロワーを持つクリスティン・トンプソンさんも、ブランド旅行で不快な思いをしたことがあるという。
「スワッグバッグ(試供品やお土産が入った袋)をくれるんだけど、もらったパジャマが小さすぎて入らなかったことがある。プラスサイズの私を招待したってことを忘れてたみたい。人種やサイズにおいてもっと多様性を取り入れる努力が必要だと思います」
トンプソンさんが参加するブランド旅行では、包括性のなさが常態化しているという。「残念です。でも今始まったことではありません」
ファッション業界は未だに多様性に欠けており、ファッションイベントでは周囲に溶け込むためのプレッシャーを感じるという。「私はブランドからファッションショーに招待されることはあまりありません。ファッションを強調するために彼らが選ぶインフルエンサーではないから。あまり包括的ではないんです」
トンプソンさんは、ファッション・ウィークでは「仲良しグループ」的な雰囲気が常に存在し、グループの一員か、そうでないかで判断されるという。「会話やイベントで常に自分をはめ込もうとしているように感じる」と話す。
そう感じているのは彼女だけではない。
インフルエンサーの名声がソーシャルメディアを超えた今、ファッション業界に自分が属していないと感じ、悩む人もいる。「自分にはそこにいる価値がある」、と証明することへのプレッシャーがあるのだ。
ジーラーさんは自分を「負け犬のように感じる」と話す。「インフルエンサーの仕事内容を知らない人が多いから、私は自分の仕事を正当化し、証明しなくてはいけないんです」
FendiやDiorなどのラグジュアリーブランドとも仕事をするインフルエンサーのザック・ルゴさんも、自身の能力を認められない「インポスター症候群」であると認める。
「自分はまだ地元から出てきたばかり。Aリストのセレブが参加するイベントに招待され、彼らと同じ場所にいるのは緊張する」と語った。
有名ファッションデザイナーの娘でインフルエンサーのキット・キーナンさんは、物心ついた時からファッションウィークに足を運んでいた。彼女はMichael Korsなど誰もが憧れるショーに招待されているにもかかわらず、未だに時々場違いに感じるという。
「ファッションウィークでは、嫌な気持ちになったり、自分をちっぽけに感じたりします」
「イベントで超有名セレブを見たこともあリますが、そういう時は、私はインフルエンサーとしての役割がある、と自分に言い聞かせないとなりません」と話す。
では、TikTokのファッションインフルエンサーは次なるセレブになるのだろうか?
ジーラーさんはTikTokでの成功を、更に大きなスクリーンでのキャリアへのステップだと考えている。彼女は最近、YouTubeの「Brat TV」で配信されているドラマ「Crown Lake」で俳優業をスタートした。
「TikTokerは、ディズニーチャンネルに出演していた子役のようなもの。最終的に主流のエンターテイメントで本当にやりたいことを実現できる」と説明し、「自分をセレブだとは思いたくない」と語る。
確かに、彼らの視聴者層を見れば、まだセレブの域には達していないのかもしれない。セレブは様々な年代で広く知られているが、すべての人がTikTokをやっている訳でも、人気クリエイターを知っている訳でもない。
しかし、1億4820万人以上のフォロワーを持つチャーリー・ダメリオさんのように、TikTokerもセレブレベルの名声に達することができる。
もっとも、インフルエンサーとセレブの最大の相違点は、その親近感だ。
小さな町のクリエイターがゼロからフォロワーを増やしていく姿を見れば、視聴者は自分もSNSでたくさんの人に影響をもたらすことができるかもしれない、と感じる。それは、ファッション界のAリストセレブでも達成できないことだ。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
インフルエンサーたちの苦悩。華麗な世界の裏で何が起こっているのか?