Twitterへの投稿内容が名誉毀損だとして、自民党の世耕弘成幹事長が青山学院大学の中野昌宏教授を相手に、投稿記事の削除や謝罪文の投稿などを求めた損害賠償訴訟の口頭弁論が11月4日、東京地裁であった。
この訴訟は2019年に提訴された。
中野氏側の答弁書や公開資料によると、中野氏は2018年2月と2019年7月、世耕氏について「原理研究会(統一教会)出身だそうですね」などと投稿した。
千葉日報に掲載された記事によると、世耕氏は、団体に「所属したことはなく、投稿内容は虚偽だ」と訴えているという。中野氏は請求棄却を求めている。
中野氏はまた、世耕氏の提訴自体が違法だとして、損害賠償を求めて反訴。「批判者を黙らせることを目的としたものであり、表現の自由に対する重大な人権侵害だ」と反訴状で訴えている。
世耕氏は反訴に対して、請求棄却を求めている。
世耕氏の尋問
11月4日、原告の世耕氏に対する尋問が開かれた。
世耕氏は法廷には現れず、オンラインで審理に参加。理由について「代理人弁護士に任せているので、裁判所と代理人が話して決めたことに従った」とだけ述べた。
世耕氏は尋問で、旧統一教会系の学生組織「原理研究会」や旧統一教会との関わりについて「学生、社会人、議員になってからも接触や会合に出たということも全くない」と否定。
訴訟を起こした理由について「大学教授という肩書きの人が、実名で、私が元原理研究会のメンバーという趣旨のツイートをした。これは信じてしまう人が多いのではないか。ニックネームなどの(匿名)ツイートとはレベルが違う」と述べた。
世耕氏が原理研究会に所属していたとする言説は、2000年代からネット上にあがっていたという。本人も以前から把握していたが、公の場で否定や反論をしてこなかったと世耕氏は尋問で認めている。
問題視した中野氏のツイートに対しても、提訴にあたって、反論や事前対応はしていなかった。
反対尋問でその点を問われると、世耕氏は次のように答えた。
「28万の(Twitter)フォロワーがいるので、反応や反論することでこのような言説を広めてしまう。炎上してしまうかもしれないというのがネット対策のセオリーだ」
被告側の尋問
同じ日、被告の中野氏側の尋問も開かれた。
中野氏はツイートの趣旨や経緯について「世耕氏の政治思想が原理研究会(旧統一教会)と類似している」「その思想が反人権的である」「その事実が知られていない」といった点を「問題視した結果だ」と主張。世耕氏が過去に原理研究会に所属していたと指摘する目的ではないと訴えた。
反対尋問で「ツイートを投稿した時点で、世耕氏が過去に原理研究会に所属していると思っていたか」と問われると、「思った上で発信していた」と述べた。
旧統一教会と自民党
世耕氏の尋問は、自民党と旧統一教会との関わりにも及んだ。
旧統一教会への見解を問われると「霊感商法など再三問題を起こした。合同結婚式など、自分の価値観と合致しない団体」と批判した。
自民党内では、故・安倍晋三前首相が2021年、関連団体とされる天宙平和連合(UPF)にビデオメッセージを送っていた。また世耕氏は2019年の参院選で、旧統一教会の「賛同会員」だった井上義行議員の応援演説に駆けつけた。
同じ安倍派に所属する自身と近い議員が、旧統一教会と関係があったことについて質問されたが、世耕氏は「知らなかった」「事件後の報道で知った」などと繰り返した。
安倍前首相銃撃事件の以前に「私の知る限り、自分が出席する会議などで、旧統一教会のことが議論されたことがなかった」と訴えた。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
世耕弘成氏が証言、旧統一教会は「自分の価値観と合致しない」。ツイート内容をめぐる名誉毀損訴訟