イーロン・マスク氏が10月27日、総額440億ドル(約6兆4000億円)でTwitterの買収を完了した。
この取引に関しては、4月にマスク氏が買収を表明し提案が合意された後、一方的に撤回するなど二転三転の経緯があった。
コーポレート・ガバナンスの専門家でコロンビア・ビジネススクール教授のウィリアム・クレッパー氏は以前ハフポストに、「マスク氏はツイッターを所有するというゴールを達成したが、そこから何をして良いのかわからない、といった状況。ポートフォリオとして保有しているだけでなく、実際に会社を維持・経営するために必要な経営リーダーシップを発揮しなければならない」と述べた。
Entering Twitter HQ – let that sink in! pic.twitter.com/D68z4K2wq7
— Elon Musk (@elonmusk) October 26, 2022
現時点では未知のことが多いが、多くの人が憎みながらも愛してやまないTwitterで予想される今後の変化を紹介しよう。
不満を持つ人を受け入れる
「言論の自由絶対主義者」を自称するマスク氏は、プラットフォーム上でより物議を醸す投稿を許可すると公言している。しかし、詳細についてはあまり触れていない。
By “free speech”, I simply mean that which matches the law.
I am against censorship that goes far beyond the law.
If people want less free speech, they will ask government to pass laws to that effect.
Therefore, going beyond the law is contrary to the will of the people.
— Elon Musk (@elonmusk) April 26, 2022
マスク氏がTwitterで白人至上主義者に扉を開いたとしたら、彼のペルソナと密接につながっている「テスラ」ブランドが消費者感情の変化の衝撃を受けることになりうる。
また、テスラの影響力は不安な地政学的裏面がある。例えば、ロシアがマスク氏に対し、ロシアへの反対意見を封じるよう依頼し、引き換えにテスラがバッテリー生産に必要なレアアース埋蔵量へのアクセスを提示してきたらどうなるだろうか?
デジタル著作権NPO「Fight for the Future」の副ディレクター、エヴァン・グリア氏も同様の懸念を抱えている。
「Twitterのような重要なプラットフォームにおけるコンテンツ・モデレーションの決定は、人権の枠組みを通じて慎重になされるべき。今や、権力を持つ1人の人間がTwitterのスピーチポリシーを決定することになる。これは表現の自由において恩恵ではなく、嘲笑するもの」とグリア氏はメールで述べた。
追放されたアカウントの復活
何年もの間、攻撃的で暴力的な発信を続けてきたトランプ氏は、大統領時代にTwitterを利用しアメリカの連邦議会議事堂への襲撃を扇動したあと、2021年1月8日にTwitterから永久追放された。
マスク氏は永久追放の方針全般の廃止を願っており、特にトランプ氏の禁止令は撤回したいと考えている。
マスク氏は5月にFinaicial Timesに対し、永久追放は対話を分断し、プラットフォームへの信頼を損ね、いかなる礼節を促すことにもならないだろうと語った。また、永久追放はボットやスパムアカウントにのみ適用されるべきであると述べた。
「言いたいことをなんでも言えるということではない。もし違法なことや世界にとって破壊的なことを言ったら、一時的な停止、あるいはツイートの非表示化など、影響力を最小にするべきだ」
「しかし永久追放は、誰もが意見を述べることができる『街の広場』としてのTwitterの信頼を根本的に損なうものだと思っている」
「はっきり言って、トランプ氏の永久追放は道徳的に悪い判断で、極端に愚かだったと思う」
社員の解雇
一時はマスク氏がTwitterの従業員7500人のうち75%を解雇する予定だと伝えられていた。その後はその内容について否定したが、それでも人員削減は避けられないようだ。
そのため、まだ転職の準備ができていない従業員たちは、新たな雇用主を探すことになるだろう。
複数のメディアによると、CEOのパラグ・アグラワル氏やCEOのネッド・シーガル氏など、経営幹部はすでに解雇されたという。
Twitterは、これまでに構築したものを維持することはおろか、マスク氏がビジョンを構築するために必要な適切な人材が不足していることにすぐに気づくだろう。
収益重視
2021年の同社の売上50億8000万ドル(約7500億円)のうち89%を広告が占めており、広告主の賛同が得られない場合、迅速に収益源を多様化できない限り、絶望的な状況に陥る。
また、マスク氏の買収契約はTwitterに130億ドルの負債を負わせたため、プラットフォームからさらなる利益を得ることがより急務となっている。
しかし多くのブランドは、マスク氏がプラットフォームへの復活を許可する有害なコンテンツと関連づけられたくないため、マスク氏はスタートから難しい立場に置かれている。
その状況を回避するため、マスク氏は10月27日にTwitterで、最も重要なユーザーである広告主に向けて呼びかけた。
そこで彼は、Twitterが「世界で最も尊敬される広告プラットフォーム」になることを望んでおり、「何を言っても罰せられないような、参加自由の地獄絵図にすることはできない」と述べた。
Dear Twitter Advertisers pic.twitter.com/GMwHmInPAS
— Elon Musk (@elonmusk) October 27, 2022
一方、プラットフォームのモデレーション・ポリシーを緩和しながらどのようにそれを達成するつもりかはまだ不明だが、投資家に対するマスク氏の売り込みからは、彼が購読料に全力を注ぐことを示唆している。
The New York Timesが入手したマスク氏のプレゼン資料によると、彼は2028年には同社が年間264億ドル(約3兆9000億円)の収益を生み出すと予想しており、それまでに広告が同社の収益の半分以下になることを望んでいる。
その他の収入は主に購読料、次いでまだ公開されていない決済ビジネス、そしてデータライセンスによってもたらされることになる。
ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
イーロン・マスク氏がTwitterの買収を完了。これから何が変わるのか?