性的マイノリティの差別解消に取り組む人たちについて「お花畑正義感の人たち」などと発言したとされる問題で、自民党の城内実衆院議員(静岡7区)は9月27日、浜松市を拠点に活動している性的マイノリティの当事者や支援者らでつくる3団体が出した質問状に書面で回答した。質問状は、8月に開かれた性的マイノリティに関する会合であった、城内氏の発言の真意を問うもの。
城内氏は「非公開会議での発言の一部が切り取られて報道され、本来の趣旨と異なった形で伝わっていることを大変残念に思います」とした上で、「性的マイノリティをめぐる議論においては、様々な立場の当事者の方々からお話を聞くこともなく、一つの主張を絶対正義として振りかざすことがあってはならない、という趣旨で発言しました」と説明。一連の発言について、謝罪や撤回はしなかった。
城内氏は8月下旬、党の会合で性的少数者の差別解消に取り組む人たちについて「お花畑正義感の人たち」などと発言したとされる。
9月21日に「浜松TG研究会」、「にじいろ安場 in 浜松」、「浜松パートナーシップ連絡会」が公開質問状を提出。同日行われた会見で「浜松TG研究会」の鈴木げん代表は「これまでも、国会議員から差別発言が多くあり、またかとため息が出ました。苦しむ性的マイノリティの姿が見えていないと感じています」と語った。
また、城内氏が事務局長を務める「神道政治連盟国会議員懇談会」の6月の会合で、「同性愛は精神障害、または依存症」といった、性的マイノリティに対する差別的で誤りのある内容の冊子が配布。全国各地でLGBTQ当事者やアライが、自民党に冊子の明確な否定を求める抗議デモを実施。5万1503人分の署名が集まり、自民党総裁の岸田文雄首相と、同懇談会の事務局長である城内議員宛に送られたが、明確な対応はしていない。
城内氏の回答によると、発言があったのは「性的マイノリティに関する特命委員会」。当日は元参院議員の松浦大悟氏の講演があり、「当事者の方々にも様々な方がいらっしゃるにも関わらず、声の大きな活動団体の主張がまるで当事者を代表しているかのように扱われ、当事者の方々の分断、ひいては社会の分断をも招いている現状についてお話を伺いました」と説明した。「性的マイノリティをめぐる議論においては、様々な立場の当事者の方々からお話を聞くことも無く、一つの主張を絶対正義として振りかざすことがあってはならない。という趣旨で発言しました」と記した。
「同性愛は精神障害、または依存症」などと書かれた冊子の配布については、世界保健機関(WHO)がこれまでに同性愛を精神疾患から除外しており、間違いのある内容だが、「性的マイノリティの方々が暮らしやすい社会を実現するために、一方的な意見や価値観だけでなく、様々な立場からのご意見、客観的事実や科学的根拠をふまえて議論を進めていくことが重要だと考えます」と回答。「ご指摘の冊子に掲載の内容は、識者による講演内容が掲載されていると承知しております。講演内容については、当該識者にご確認頂ければと思います」とし、冊子の回収については明言しなかった。
鈴木さんは「そもそも質問の全ての項目に返事をいただけていないことが非常に残念です」とした上で、「ご回答の前提に、誤解と偏見があるように感じます。3団体からの正式なコメントは後ほど出したいと思っています」と語った。
城内氏は回答の前に「ぜひ一度意見交換をする機会を設けることができましたら幸いです」とも記しており、鈴木さんは「意見や要望を聞くだけではなく、みんなが平等に暮らせる法制度を作っていくのが議員の仕事だと思っています」とし、今後城内氏とやり取りをしていく方針だという。その内容や3団体の正式コメントは今後、浜松TG研究会のフェイスブックに公開していく予定だ。
質問状と、城内氏の回答全文はこちらから(質問は太字)。
【質問1】8月25日、城内さんが事務局長をつとめられている、自民党性的指向・性自認に関する特命委員会の会合で「美しいポリコレ(政治的な正しさ)みたいなものでストーリーをつくって、それを疑問視する人をひたすらたたくお花畑正義感の人たち」との発言が共同通信を通じて報道されました。また、そうした人たちは「多様な価値観、多様な市民を、ステレオタイプでやっているんじゃないか」という発言をされたと朝日新聞で報道されています。
【1-1】 こうした発言をされたことは事実でしょうか。
【1-2】 発言の内容に「問題はない」とお考えでしょうか。理由も併せてお答えください。
【1-3】 もし「問題がある」とお考えの場合、どのように問題があると認識されているでしょうか。
【1-4】 発言について謝罪や撤回をするおつもりはあるでしょうか。
ご指摘の私の発言について、非公開会議での発言の一部が切り取られて報道され、本来の趣旨と異なった形で伝わっていることを大変残念に思います。
報道されている発言があった「性的マイノリティに関する特命委員会」ではこれまで様々な立場の当事者の方々から、直面する困難や課題等についてお話しを聞いてきました。この日は、当事者であり、「LGBTの不都合な真実: 活動家の言葉を 100%妄信するマスコミ報道は公共的か」の著者である松浦大悟氏を招いた講演が行われ、当事者の方々にも様々な方がいらっしゃるにも関わらず、声の大きな活動団体の主張がまるで当事者を代表しているかのように扱われ、当事者の方々の分断、ひいては社会の分断をも招いている現状についてお話を伺いました。
ご指摘の発言は、講演を受け、性的マイノリティの方々にもいろんな方がいるのであって、問題を単純化することは決して当事者の方々の幸福につながらない。私自身も含め、国会議員、そしてマスコミも、性的マイノリティをめぐる議論においては、様々な立場の当事者の方々からお話を聞くことも無く、一つの主張を絶対正義として振りかざすことがあってはならない。という趣旨で発言しました。
【質問2】城内さんが事務局長をつとめられている、神道政治連盟国会議員懇談会、6 月 13 日の総会で配布された冊子に「同性愛は精神障害で依存症」「同性愛からの回復治療の効果が期待できる」「LGBT の自殺率が高いのは、差別が原因ではなく本人が悩みを抱えているせい」「性的少数者のライフスタイルが正当化されるべきでないのは、家庭と社会を崩壊させる社会問題だから」といった性的マイノリティに関する差別的な言説が掲載されていたことが報じられています。
【2-1】 こうした言説に「問題はない」とお考えでしょうか。理由も併せてお答えください。
【2-2】 「問題がある」とお考えの場合、どのように問題があると認識されているのでしょうか。
【2-3】 冊子の内容を否定、謝罪や回収等の対応をするおつもりはあるのでしょうか。
性的マイノリティの方々が暮らしやすい社会を実現するために、一方的な意見や価値観だけでなく、様々な立場からのご意見、客観的事実や科学的根拠をふまえて議論を進めていくことが重要だと考えます。ご指摘の冊子に掲載の内容は、識者による講演内容が掲載されていると承知しております。講演内容については、当該識者にご確認頂ければと思います。
【質問3】城内さんの地元である浜松市、そして静岡 7 区にもたくさんの性的マイノリティ当事者が生活をしています。今回質問させて頂いている団体のひとつ「浜松 TG 研究会」の代表住所は浜松市天竜区春野町にあり、選挙区が静岡 7 区になります。ここにも当然、たくさんの仲間が生活をしています。
【3-1】 城内さんの地元で共に生活をする、トランスジェンダーや同性愛、両性愛者等の性的マイノリティの仲間たちに心を込めたメッセージをください。
これまで様々な性的マイノリティ当事者の方々から、社会の困難やお困りごとを伺ってきました。お話を聞いてきて、当事者の方々には色々な事情や背景があり、極めて複雑であると認識しています。差別はあってはならず、性的マイノリティの方々が直面する困難を取り除いていかなければなりません。また、社会の分断が招かれるようなことがあってはなりません。必要なことは、対立ではなく対話することです。声の大きな主張だけでなく、様々な当事者の方々から、引き続きお声を頂いてまいります。
<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>
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「お花畑正義感の人」城内実氏のLGBTQ差別発言。当事者からの公開質問状に、撤回や謝罪なし