性的マイノリティのカップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」をめぐる、東京・江東区議会の星野博議員(自民)の発言が、物議を醸している。
発言があったのは、9月20日の区議会定例会での一般質問。星野議員は、東京都で11月から「パートナーシップ宣誓制度」の運用がスタートすることに関して、その影響などを質問した。
この中で、星野議員はパートナーシップ制度が「少子化の進行につながることを危惧している」と発言した。
パートナーシップ制度を導入する自治体は200を超え、7月時点で8府県が取り入れている。制度の導入により、企業によっては生命保険の受取人に指定することが可能になる。
星野議員は、大阪府高槻市の民家で2021年7月、保険金目的で女性を殺害したとして殺人容疑などで養子が再逮捕された事件を例示。パートナーシップ制度を導入することで「このような事件が増加するのでは」という趣旨の発言をした。
星野議員の所属会派である自民党・政務調査会の「性的指向・性自認に関する特命委員会」は2019年、法律上の性別が同じカップルの結婚(いわゆる「同性婚」)やパートナーシップ制度に関して、次のような見解を示している。
<同性婚等に反対する理由として『同性婚を認めると少子化が進む』といった理由を述べる方がおられますが、現状でも少子化の進行が課題とされる中で、現在認められていない制度に理由を転嫁する根拠は特に見当たりません>
議員の一連の発言に対し、SNS上では「人権侵害で差別だ」などと批判が上がっている。
星野議員はハフポスト日本版の取材に対し、「子どもの出生率は今落ちており、(パートナーシップ制度の導入が)少子化につながるという危惧がある。同性カップルが増えることが、(出生率にとって)マイナス要因であることは確か。差別がどうこうという話ではないと思う」と述べ、改めて自身の考えを強調した。
パートナーシップ制度の導入と殺人事件の増加に関する発言については、「制度が導入されれば、それを悪用する人たちがいるわけで、そのことを言っている。パートナーシップ制度を利用する人たちが絶対に悪いことをするということではなくて、悪用する人に区はどう対応するのかと聞いただけ」だと説明。「誰かを侮辱する気持ちは全くない」と主張した。
発言に批判の声が上がっていることについて、「(制度に)賛成の人も反対の人もいるわけで、大いに議論をすることは私はいいと思う」と述べた。
その上で、「一方的にけしからんとかなんとかと言って議論を封殺することは、決してあってはならないと思う。一部の人が騒いで、尻馬に乗って謝れとか(発言を)取り消せとか、けしからん話だと思いますよ」と持論を展開した。
性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人『fair』代表理事の松岡宗嗣さんは、「パートナーシップ制度や同性婚の法制化と少子化に因果関係がないことは、同性婚をすでに法制化している海外の国々の事例を見ても明らか」と指摘する。
制度によって殺人事件が増える、という趣旨の発言については「論理が飛躍しており、事実誤認も甚だしい」と批判。「議員という影響力のある立場で、事実に基づかない差別発言をすることは性的マイノリティの生活や安全を脅かしかねず、許されないこと」と訴えた。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
パートナーシップ制度が「少子化につながると危惧」。江東区議の発言が物議「侮辱する気持ちない」