「ラテン系の服を着ている人は大麻取締法違反の可能性がある」とする教育が、警察内部で行われた可能性が浮上している。
発端となったのは、ある大麻取締法違反事件をめぐる公判。被告人は2021年8月、群馬県内の路上に駐車中の車内で大麻を所持していたとして、大麻取締法違反の罪で起訴された。現在前橋地裁で裁判が続いている。
2022年5月に開かれた公判で、被告人に当時職務質問をした群馬県警の警察官への証人尋問が行われた。
被告に職質をした理由の一つとして、警察官は法廷で、「(被告が)大麻使用者が好むラテン系の服装だった」ことを挙げた。
さらに、「大麻使用者はラテン系の服装を好む」という認識について、警察官は「以前勤めていた機動警ら隊で教養を受けた」と公判で発言。被告側の弁護人が「機動警ら隊でそういう教育をしているんですね」と再び確認すると、警察官は「あくまでも参考情報にはなります」と説明し、認めた。
一方、弁護人が「群馬県警では、ラテン系の服と大麻取締法は強い関係があるということを共通認識として持っているということでよろしいですか」と尋ねると、警察官は「強い関係とまでは言えないと思います」との見方を示した。
「ラテン系の服装」が具体的にどのような身なりを指すかは、法廷では明らかにされなかった。
職務質問の根拠となる「警察官職務執行法」(警職法)は、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断」し、犯罪を犯しているまたは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由がある場合に、相手を停止させて質問をすることができると定めている。
対象者の服装を理由とした職質は、警職法上の規定に該当しない恐れがある。
実際に、群馬県警では警察官に対し、「大麻使用者はラテン系の服装を好む」とする教育を行っているのか。
県警はハフポスト日本版の取材に、「そのような教養は、群馬県警(地域部)機動警ら隊では行なっていません。過去においても同趣旨の教養を機動警ら隊で実施したとの確認はできません」と否定した。
法廷での警察官の証言と県警の主張が食い違っていることへの見解を問うと、県警は「係争中の事件のため、お答えする立場にありません」として回答を拒んだ。
服装など外見を理由とした不当な職務質問は、これまでも度々問題になってきた。
差別的な職務質問に関して、警察庁は2021年12月、全ての都道府県警に文書を送付。この中で、「職務質問の対象となる者であるかを判断する際には、その容姿や服装等の外見のみを根拠とすることのないよう」指導を徹底することを求めた。
差別的な職質の問題に詳しい西山温子弁護士は、「服装や髪型などは、犯罪の疑いをかける根拠とは本来なり得ない。警察内部で、差別を助長する教育がなされているのであれば問題だ」と指摘した。
「大麻使用者はラテン系の服装を好む」ことを理由とした職質について、中島広勝弁護士は「合理的な根拠を欠いた偏見に基づく職務質問であり、人権侵害に当たる」と批判する。
「警察官の証言からは、職務の中で(ラテン系の服装の人は犯罪の疑いがあるとする)偏見を身に付けたことが分かる。客観的なデータや根拠に乏しい職務質問を推し進め、それを許容する指導や教育が行われていないか、県警は調査するべきだ」と強調した。
<取材・執筆=國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版>
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「大麻使用者はラテン系の服装を好む」と教育か。警察官が法廷で証言、県警は否定 群馬