3人子どもがおり、全員不登校です。仕事は半分しか行けなくなりました。正社員で年収400万円台でしたが、今は半分以下です。民間の不登校支援に頼るしかなく月10万越える出費になっています。いつまで続けられるか不安でいっぱいです。(3児の母親)
子ども2人とも不登校です。精神的に不安定で、子どもの年齢も低くて1人で家に置いておけず、また登校期には予定が立てられず、パートの仕事を辞めざるを得ませんでした。学校外の選択肢を増やすためにはお金が必要だが助成などもなく、全額負担するしかない。100万以上はかかりました。(2児の母親)
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これは、不登校などを含む子どもの支援を続けている認定NPO法人のカタリバが2022年に実施した、不登校と保護者の収入・就労・家計調査に寄せられた声だ。
「学校に行かなくてもいい」。
夏休み明けのこの時期、苦しむ子どもに寄り添うメッセージが様々な機関や人から発せられることが増えてきた。学校に通う以外の選択肢を選んでもよい、そんな意識・制度が広がっている。
しかし、その変化に追いついていないのが公的な支援の乏しさだ。
そして、苦しんでいるのは子どもだけではない。親もまた、苦しんでいるのだとカタリバの代表理事、今村久美さんは語る。
ーーまず、不登校の子が毎年増えているという現状について、どう捉えていますか?
今村久美:さまざまな要因があり予測しかできませんが、「学校に戻せ」という一点張りではなく学びが続くこと、子どものケアがより大切であるという意識が広がってきたというのはポジティブな要因です。教育機会確保法(2017年施行)でそれが制度としても認められるようになりました。
一方で、ネガティブな要因としては学校に疲弊感が広がっていることが、子どもたちにとって苦しい環境を強いているではないかと思います。
今、学校の先生が「課題集積地」のようになっていて、何から何まで対応しなければならない。それは教員の採用倍率の低下にも現れています。学校に対する親のニーズは増えているのに、尊敬されなくなっているし、地域の機能はなくなり、代替が学校に求められている。社会の目も厳しく、事務作業も増えている。
発達障害がある子の数自体も増えていますが、適切な環境で受け止められれば他の子と同じように学校に通える場合もある。ただ、先生たちが忙しすぎて、受け止める環境が学校にない場合が多い。多様性を受け入れられる状態ではないのだと思います。
ーーその難しさをroom-Kでサポートできる可能性があるということですね。
先生たちが忙しすぎるのだから、教育のDXは進めないといけない。どの自治体もすでにわかっています。ただ、データサイエンスの専門家やエンジニア、個別の子どもに対応する臨床心理士やカウンセラーなども全ての自治体や学校にいるわけではない。
特に地方は人材が不足しているところが多いです。不登校の子どもの支援をする教育支援センターも、今回連携協定を結んだ戸田市には設置されていますが、全国での設置率はまだ6割程度です。
子どもにとってはオンラインで学ぶハードルの低さが特徴ですが、支援する専門家が全国の学校を横断して取り組めるのがもう一つの大事な点です。room-Kには、日本だけでなく海外からも臨床心理士や医師などさまざまな第一線の専門家が参加しています。オンラインだからこそ集められるスタッフが、子どもの支援にあたれます。
今起こっている子どもの問題には、今すぐに選択肢を出してあげないといけない。数年がかりで環境を構築するわけにはいかないのです。フットワークの軽い、我々のようなNPOと教育委員会が連携することで、不登校についてそれぞれの得意を生かしたアプローチができると思います。戸田市が市町村レベルでは初の連携ですが、もっと全国でこの仕組みを広げていきたいと思っています。
ーーroom-Kでは、保護者の相談窓口や、保護者同士が悩みや困り事を話せる場もあるなど、保護者支援も重視されています。
親たちの抱える悩みは本当に深く、「学校に行かなくても大丈夫」というだけでは解決しない問題も多くあります。地域社会では誰にも相談できなかった悩みを、同じ境遇の人になら打ち明けられるという話を多く聞きました。
子どもにとっては、親が「安全基地」であり続けるということが、子どもの幸せにとっては何よりも重要なことだと私は思います。親が笑顔でいる、ストレスを減らす必要があるんです。
しかし、公的なサポートが不十分である点は早急に改善すべきです。
教育機会確保法では、不登校特例校や、教育支援センターを設置することが自治体や国の努力義務になりましたし、それらの学校に通うことで出席扱いにできる制度もできました。しかし、特例校は全国で21しかありませんし、センターの設置率は全国で6割とまだまだです。
民間のフリースクールなど「別の選択肢が認められた」ことは一つの希望だとは思うのですが、親として、実際に選べるのは、都市部に住んでいる、一部の経済力のある人に限られてしまうのが現状です。さらに、調査では、不登校が貧困に繋がることも浮き彫りになっており、公的な支援がなければ、家庭の経済力による教育格差が広がる一方です。
ーーそもそも、多様な子どもたちの学びの場として、学校の限界のようなものも感じます。未来の学校はどのようであると良いでしょうか?
room-Kの取り組みは、不登校になってから個別に学習計画を作るというサポートですが、本来はもっと最初から全ての子にその選択肢があるといいと思います。すでに子どもたちは1人1台のタブレット端末などを持っているのですから、学ぶということを教室の椅子に縛り付けて行うのではなく、個人に合わせていく。
全員が同じ進度で学びを進めると、極端に勉強ができる子も、できない子も両方がしんどい。カタリバでは、東日本大震災後に東北で、放課後の支援活動を行いましたが、個別の進度でないと学びを楽しめないのだと痛感しました。
オンラインであれば、教材や先生は学校外にもたくさんあります。全ての学びを学校の中で調達する必要もなくなります。「学校ガチャ」「クラスメイトガチャ」のあたりはずれで、その子の可能性が縛られるのではなく、先生はコーディネーターの役割のようになっていくのが理想ではないでしょうか。
一方で、グループワークや係の活動や、学校のルールを考えるために、集団で助けあうとか、支え合う、議論する、協調するという学校ならではの学びは必要だと思います。学校はもっとそこにフォーカスするのがいいと思います。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「子どもの不登校で、仕事を辞めた」。支援するNPOが親のサポートも重視する理由