事件のことは、一部の幹部にだけ伝えられた。また、国家保衛省(秘密警察)は各地方の保衛局に事件のことを伝え、革命の首脳部(金正恩総書記)の安全保障事業に総力を傾けよとの指示を出している。
一方で、一般住民の間にも、少しずつ事件のことは伝わりつつあるようだが、このことを人に話したとして、ひとりの女性が逮捕された。容疑は流言飛語(デマ)を流したというものだ。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、逮捕されたのは鉱山で知られる茂山(ムサン)に住む女性。彼女は、親しい近所の人々に、安倍元首相が演説中にある男性に撃たれて逝去したという話をした。
ここから、事件のことが街中に広がり、茂山郡保衛部の反探課(スパイ担当部署)のメンバーの耳にも入った。噂の出どころを探ったところ、この女性であることがわかり、一定期間、泳がせて監視をした上で、先月末に逮捕した。
容疑は「デマを広げた」ということだが、保衛部が問題視しているのは、一般住民が知らないはずの安倍元首相銃撃事件について、彼女が知っていたことだ。中国キャリアの携帯電話を持ち、海外とのやり取りをしていると見て家宅捜索を行ったところ、天井裏から油紙に包まれた携帯電話2台が発見された。結局、茂山鉱山専門学校の教員である夫まで逮捕された。
今回の事件に、近隣住民は驚きを隠せずにいる。
「この夫婦は普段、家庭よりも国のことに忠実だと定評があったのに、近隣住民は彼らが外国の携帯電話を隠し持ち、外部からの情報を聞いていたとは知らなかったと大きな衝撃を受けた」(情報筋)
一方で、夫婦が「電話が通じない」と言って、あちこちうろちょろしていた姿を見て、怪しいと思い、保衛部に通報した知人もいたとのことだ。
この知人には、逮捕に協力したということで、大豆油2キロが贈られたとのことだが、口コミネットワークが発達している北朝鮮のこと、あっという間に誰であるかは知れ渡るだろう。
以下略
https://news.yahoo.co.jp/byline/kohyoungki/20220819-00310887
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