ジェンダー不平等と気候変動は繋がっている。19歳のチリ人女性活動家が訴える「エコフェミニズム」

カタリナ・サンテリーセスさん

政治や社会について「知って、スタンスを持って、行動する」U30世代を増やすため、SNSなどで政治や社会について発信する『NO YOUTH NO JAPAN』(ノー・ユース・ノー・ジャパン)。本連載では、U30世代の運営メンバーが、社会に対して声をあげる海外の同世代にインタビューをします。

今回お話を聞いたのは、南米チリのカタリナ・サンテリーセスさん(19歳)。環境問題とジェンダー不平等の繋がりを指摘し、同時に解決していくことを目指す「エコフェミニスト」として活躍しています。

一見すると別々の社会課題に思える、気候変動などの環境問題とジェンダー不平等。両者はどのように相関しているのでしょうか。

カタリナ・サンテリーセス
2003年生まれ。チリのマウレ州出身。チリのポンティフィカル・カトリック大学の法科大学院で勉強している。2019年に気候変動問題に取り組む若者グループ「Fridays For Future Chile」に参加し、2020年に活動家10人とLFCを設立した。

ーーサンテリーセスさんはご自身のことを「エコフェミニスト」と名乗っていますね。そもそも「エコフェミニズム」とはどういうものなのですか。

気候変動とジェンダー不平等という2つの問題は繋がっていて、片方を解決するためには、もう片方を解決することが欠かせません。これが「エコフェミニズム」の立場です。

皆さんは、女性は男性よりも気候変動の被害を受けやすいことを知っていますか。女性の方が教育を受ける機会が少なく、経済的な自立が妨げられているために、災害時に逃げ遅れたり、復興からも取り残されたりする可能性が高いと言われているんです。

また、気候変動の背景には、現在の資本主義による社会・経済システムがあります。これは裕福な白人男性が牛耳ってきたものです。私たちは、こうした歪なパワーバランスを変えていくことが、気候変動を食い止めることにも繋がると信じています。

私は幼いときから女性を取り巻く不平等を目にしてきました。だからこそ、女性の権利向上と気候変動対策のどちらにも立ち上がる「エコフェミニスト」になりたいと思ったのです。

カタリナ・サンテリーセスさん

ーー気候変動に興味を持ち始めたきっかけは何だったのですか。

Fridays For Futureのグレタ・トゥーンベリさんに憧れて、2019年にFridays For Future Chileに参加したことがきっかけです。当時、私は15歳でした。

活動を重ねるうちに気候変動へ危機感をますます感じるようになり、チリのタルカという都市で、友人と気候変動教育を広める活動やゴミ拾いをするようになりました。

ーーチリでは気候変動への取り組みは進んでいるのでしょうか。

チリを含めた中南米諸国では、気候変動への意識がまだとても低いと感じています。チリ政府も、インフレや人権問題への対応で精一杯で、気候変動政策は後回しです。

また、チリでは義務教育の中に気候変動教育が取り入れられていないため、そもそも地球が温暖化していることを知らない人も多いのです。教育レベルの低い女性は特に、です。

私が指導を手伝っている気候変動の授業でも「気候変動に関する教育をこれまで一度も受けたことがない」という生徒がほとんどです。気候変動に危機感を持ってもらうためには、まず教育から始めることが大切だと痛感しています。

ーー2020年8月にはLatinas For Climateという団体を立ち上げましたね。どういった活動をしているのですか。

中南米諸国では、活動家が殺害されるなどの暴力が多発しており、環境活動家は命の危険と隣り合わせの状況です。そのため、中南米諸国の環境活動家らで連帯して、国際的な環境キャンペーンを立ち上げることを決意しました。

現在、団体ではエコフェミニズムに焦点を当てた活動をしています。団体の設立当初に集まった活動家がたまたま全員女性だったことから、ジェンダー不平等についての議論が白熱し、気がつけば自然にエコフェミニズムに取り組んでいたという経緯です。

今では、15か国から集まる100人以上の女性が参加しており、ソーシャルメディアや「気候マーチ」で気候変動対策を求めたり、政治家らと気候変動政策を話し合う会議に参加したりしています。

ソーシャルメディアでの発信は、世界中のU30に気候変動について知ってもらうために非常に効果的だと思っています。そのため、インスタグラムのキャプションはスペイン語、ポルトガル語、英語の3言語で書くなど、言語の壁を越え、より多くの若者にメッセージが届くように工夫しています。

カタリナ・サンテリーセスさん

ーー気候変動の影響を最も受ける人々や場所は「MAPA(Most Afected People and Areas)」と呼ばれており、主にグローバル・サウス(主に南半球の発展途上国)がそれに当たります。グローバル・サウスで育ったサンテリーセスさんは、グローバル・ノースで暮らす私たちや、世界のリーダーにどのようなメッセージを伝えたいですか。

私たちの国に「バカンス」に訪れるだけではなく、私たちの話を真剣に聞いてください。特に、先進国が多いグローバル・ノースで暮らすU30には、グローバル・サウスのU30にもっと共感してほしいです。

2021年11月のCOP26では、国際的な気候変動対策の進捗に大きな発展がなかったことにがっかりしました。コロナ禍で何かが変わると期待していましたが、2030年までの目標の見直しや石炭使用削減についての具体的な対策は見られませんでした。私も会場にいましたが、意思決定が見えないところで行われているため、会議の最後まで代表たちが何を考えているかが分からないままでした。また、意思決定をする代表も白人男性ばかりで、私たち活動家の声はなかなか届きませんでした。

最もショックだったのは、懸命なアピールをしたにも関わらず、数少ない若い女性の代表たちにも耳を傾けてもらえなかったことです。本来ならば女性同士こそ連帯すべきなのにそうした動きもなかったので残念だと感じました。

次のCOPでは、世界のリーダーたちに私たちの声にもっと耳を傾けてほしいですし、透明性の高い意思決定を期待したいです。

ーー気候変動に対して何かしたいと思っている日本の若者にメッセージをお願いします。

まずは気候変動について正しい知識を身につけてください。学校で気候変動教育が受けられなくても、今はSNSで情報を得ることができます。

また、他の人がアクションを起こすのを待つだけではなく、自分から行動を起こすマインドセットも重要です。Latinas For Climateなど、自分の考えに合った団体に参加し、サポートしてくれる仲間を見つけると、行動しやすいと思います。自分に合う団体が見つからなければ、自分で団体を立ち上げてみるのも良いかもしれません。

<取材を終えて>

中南米には、自らの身を危険にさらして、環境・社会のために活動しているU30がいます。気候変動だけではなく、関連する「不平等」にも目を向け、根本的な解決を目指すサンテリーセスさんの考え方に感銘を受けました。グローバル・ノースに住んでいる私たちも、グローバル・サウスのU30の声を聞き、一緒に声を上げていくことが重要です。

(取材・執筆:和倉莉央 / NO YOUTH NO JAPAN)

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