中国・南京市の寺に旧日本軍の軍人の名が書かれた位牌が祀られていた騒動が、思わぬ方向に飛び火している。
騒動をきっかけに反日感情が高まるなか、南京市で開催予定だったアニメイベントに批判が殺到。その理由は日本の風物詩である「夏祭り」を冠したイベントだったからというもので、同様の動きが各地に広まりつつある。
問題の発端は、南京市の「玄奘寺」に旧日本軍の松井石根(いわね)・陸軍大将らの名前が書かれた位牌が祀られていることが発覚したこと。松井陸軍大将は1937年の南京攻略に参加し、終戦後にいわゆる「南京事件」の責任を問われ戦犯として死刑が執行されている。
位牌の写真はSNSで広く拡散され、寺などに批判が殺到。地元当局は位牌を祀った30代の中国人女性を、公共の秩序を乱した疑いで拘束した。
この騒動が思わぬところに飛び火している。南京市では7月17日にアニメやコスプレをテーマにしたイベントが開催される予定だったが、中止とされた。主催者は「天候のため」としているが、イベントのタイトルが日本を想起させる「夏祭り(中国語では『夏日祭』)」だったため、ネット上では批判が相次いでいた。
これを皮切りに、ネット空間では「夏祭り」と名のつくイベントを「日本による文化侵略だ」などとする言説が登場。なかには「夏祭りの開催予定地を点でつなぐと日本列島の形になる」という陰謀論めいたものまで現れた。
騒ぎはネット空間だけにとどまらなかった。中国メディアによると、雲南省のテーマパークは「夏祭り」と題されたイベントを中止としたうえ、主催者を出入り禁止にしたと発表。テーマパーク側は「普通のアニメイベントだと聞いていた。我々は愛国的なパークだ」などとする声明を出している。
さらに山東省棗荘(そうそう)市で24日に開催されるはずだったアニメイベントも取りやめになった。中国メディアによると、主催者は声明を出し「名称がふさわしくなかった」などと陳謝したという。
他にも、江西省新余市では市政府が「夏祭り」と関連するイベントがないかを調査。市内のホテルでそれらしき活動の予定があったと報告している。
「夏祭り」と題されたイベントは過去にも中国で実施されてきたが、今回、突然批判が相次ぐようになった格好だ。今後、同様のイベントは開催できなくなるのだろうか。
中国のサブカルチャーに詳しく、現地でアニメなどを題材としたイベントも手掛けている「MYC Japan」の峰岸宏行・代表は「『祭』という漢字は、日本と違って中国では『祀る』という意味合いが強い。そのため、寺の騒動が夏祭りへのバッシングに飛び火したのではないか。ネットユーザーの怒りをメディアやインフルエンサーらが拡散させ、政府機関などが対応を始めた印象だ」と分析する。
峰岸さんは、日本のアニメ・漫画などに関連するイベントは今後も問題なく開催できると見ている。一方で「知り合いの中国の事業者も今回の一件でイベント中止を余儀なくされた。今後は『祭』という文字が入ったものや、鳥居を使った演出なども難しくなる。気をつけるべき点が増えた」と話している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「夏祭りは日本の文化侵略」。中国ネット空間で陰謀論的な言説が拡散、アニメイベントが相次ぎ中止に