今年は梅雨が明けてからも局地的な豪雨に見舞われるなど不安定な天候が続いていますが、それと同時に熱中症への注意も欠かせません。
熱中症は症状によって対応が異なり、間違えると重大な事態を引き起こします。そこで、日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター科長の山口順子先生に、誰でもできる熱中症の症状把握と、重症度を知る方法を伺いました。
熱中症を疑うべき症状とは
「熱中症は、暑熱障害による症状の総称です。従って、暑熱環境にさらされた状況下での体調不良は、すべて熱中症と考えなければなりません。熱中症は重症度に応じて、次の3ランクに分けられます」(山口先生)
(1)手足がしびれる、めまいや立くらみがある、筋肉のこむら返りがある(痛い)、気分が悪くボーッとする、意識ははっきりしている
→軽症(重症度Ⅰ度):現場での応急処置で対応できる
(2)頭がガンガンする(頭痛)、吐き気がしたり吐く、体がだるい(倦怠感)、意識が何となくおかしい
→中等症(重症度Ⅱ度):病院への搬送を必要とする
(3)意識がない、呼びかけに対し返事がおかしい、体がひきつる(けいれん)、真っすぐ歩けない・走れない、体が熱い
→重症(重症度Ⅲ度):入院して集中治療の必要性がある
このように、症状を把握することで重症度の目安にできます。
命を左右する現場での応急処置
熱中症に気づき、重症度がわかったら、どう対処すればいいのでしょうか?
「軽症であれば、現場での対応が可能です。涼しい所に移動し、経口補水液など水分をたっぷりと補給して横になるなど、ゆっくり休ませてください。もし、休んでも回復が見込めないようでしたら、病院に行くことを検討してください。
ただし、めまいや立ちくらみがある人は、熱中症と決めつけてはいけません。脳梗塞の疑いもあるので、おかしいと思ったら医療機関を受診してください。
中等症であれば、できるだけ早く病院へ行きましょう。応急処置としては、衣服をゆるめるなどして、熱を体から放散させる。濡らしたハンカチを肌に当てたり、うちわ等で風を送ったりする。自動販売機で冷たいペットボトルを買い、首の両側、脇の下、太ももの付け根に当てて冷やすといった応急処置が効果的です。
その上で、経口補水液など水分をたっぷり補給しながら、病院へ行くようにしてください。
重症であれば、すぐに救急車を呼んでください。到着を待つ間は中等症と同じ応急処置を行い、体温の冷却に努める必要があります。
ただし、体の片面にだけマヒがある人は、脳梗塞の疑いもあります。脳梗塞の場合は熱中症とは治療法が異なるので、救急車を呼ぶときに片面にだけマヒがあることを伝えてください」(山口先生)
中等症から重症へは短時間で移行しやすい
気づいた人がすぐに行動を起こすことが必要なのですね。特に危険なサインはありますか?
「高い体温、顔や身体が赤い(熱い)・乾いた皮膚(全く汗をかかない、触るととても熱い)、激しい頭痛、ひどいめまいや吐き気、意識の障害(応答が異常である、呼びかけに反応がない等)が熱中症の危険信号です。そのような症状が出ていたら、積極的に重症の熱中症を疑うべきでしょう。
また、気をつけていただきたいのは、中等症から重症へは短時間で移行しやすいということです。中等症だから病院へ行けばいいと思っていると、いつの間にか重症へ移行していて、救急車でなければ間に合わなかった、ということになりかねません。
強い頭痛、吐き気、倦怠感、意識がぼんやりするなどの症状があれば、ためらわず救急車を呼んでください。
もし軽症であっても暑熱環境が続く限りは重症化のリスクが高まることになり、危機的なケースも出てきます。一方で、適切な応急処置ができれば重症化を回避することもできます」(山口先生)
近年は熱中症による死者数が急激に増加しています。今や熱中症はとても身近な病気となっていますが、まだ知識が十分に普及しているとはいえないようです。
適切な予防法を知って自分の身を守るのはもちろんですが、万一熱中症が疑われる人がいれば、重症化する前にすみやかに対処できるよう、正しい知識を身につけましょう。
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