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子育てエッセイ漫画「子どもの『やめて』を聞かなかったなら問題」と専門家。本人の許可は必要?

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親はどれだけ子どものことを発信していいのだろうか。

赤ちゃんの可愛さや夜泣きの辛さ、子どものおもしろ発言や想像の斜め上の行動、親が抱える悩みや孤独感…そうした日常を表現した子育てエッセイ漫画は今、SNSやブログなどで毎日のようにシェアされている。

しかし、5月下旬、親が子どもについてエッセイ漫画やSNSで公開することの是非や問題点などを訴える子ども視点のブログが拡散され、大きな話題に。発信について考えを新たにする親も出始めた。

子どものプライバシーや同意について、どう考えればいいのか。

専門家は、子どもに「消して」と言われたら削除することや、「守られるべき子どもの権利」を意識することが重要だと指摘する。

■本人が「描いてもいいよ」と言ったら書いていいのか?

子育て中は孤独を感じがちで、子育てエッセイ漫画を発信することで共感を得られたり元気付けられたりするメリットもある。自分も子どもも顔出しはせず、住んでいる地域についても明かさないなど、プライバシーに一定の配慮をしているものも多い。

ただ、どこまで描くか、悩みながら投稿する親もいる。

数年前から子育てエッセイ漫画をブログで公開している女性は、記録として残せること、思いを共有できることなどに発信の魅力を感じている。

個人情報などには気を配り、学校や住んでいる地域が推測できないようにした上でブログを公開。ただ、内容については「いろんな人や、大人になった時の子どもが読むかもしれない」と悩みながら選ぶ。トラブルや悩みに関することは、本人が「描いてもいいよ」と言ったとしても迷った末に描かないこともあるという。

エッセイ漫画を数年間SNSで公開してきた女性の1人は「私はTwitterに絵を投稿することで自分の子育てを肯定してもらったり、元気をもらったりしました。そのおかげで孤独な育児の時期を乗り越えられました」と振り返る。

これまでの発信に後悔はない。ただ、前述した子ども視点からのブログが話題になったことで、子どもに関わる発信を終わらせる時期を考え始めた。

ブログが指摘したとみられる作品は商業化されており、子どもが発信を嫌がっても親が聞かなかった、といった点が問題されていることも自身のケースとは異なる。それでも、子ども側からの訴えに「衝撃は大きかった」と振り返る。

子どもの心の成長を感じる中で、プライバシーを守り日記との区別をつけた上で、「SNSと向き合っていかないとなと改めて考えました」と話す。

■登場人物が増えると個人が特定されやすくなり、リスクも増える

子供の写真などをSNSに公開することに慎重な人も多い。ネットに個人情報を載せることの危険性が広く認知されてきたからだ。SNS上のトラブルに詳しい清水陽平弁護士は「まず法的には、写真で顔が出ているかどうかで大きな違いがあります。顔が出ていなければ、肖像権の侵害にはなりえません」と解説する。

では、エッセイ漫画のように写真が出ていない場合はどういったことに気をつけるべきなのか。

「イラストでも肖像権侵害の問題は生じ得ますが、それよりも問題になるとすればプライバシーの侵害ではないかと思います。ただ、プライバシーの侵害といえるためには、前提として、そのエッセイの対象がどこの誰のことを指すかが第三者から理解できる必要があります。そのため、どこの誰の話か明かしていない場合は法的に大きな問題にはなりにくいでしょう」とする。

子どもの同意に関しては、清水弁護士は「自分の写真や情報がネット上に公開されることの是非について、しっかりと理解して同意できるのは、子どもが相当大きくなってからだと思います」と分析。

幼い頃は説明した上で親が判断するしかないが、「のちに子どもが何らかの被害を被ったり、親との間でトラブルになったりするかもしれないというのは認識しておく必要があります」と言う。

トラブルを避けるためには、親を含め個人が特定できないようにすること、子どもが「描かないで」と言ったら描かない、後から「削除してほしい」と言ったら公開をやめるといったことが重要だという。

今回話題になったブログについては、本物だとすれば、著名で個人が特定できてしまうことに加え、「子どもからの『描かないでほしい』『公開しないでほしい』といった言葉を親が聞かなかったというのが事実なら問題です」とする。

ただ、どの程度の情報であれば個人が特定されないか、というのは場合によって異なる。

「例えば『地域の祭りに行った』といった情報が出ているからといって、すぐに個人が特定できるわけではありません。特定される場合というのは、炎上するなどして注目され、多くの人の目に触れた場合が多いかと思います。そういった意味では、常識的な内容を心がけるのは大切です」

加えて、登場人物の広がりもリスクになりうる、とも指摘する。

「例えば、親子のことだけを描いている場合は特定されづらいですが、子どもの友達やママ友、パパ友など、登場人物が増えるとコミュニティの中では個人が特定されやすくなります。トラブルになるリスクも増えていくので注意が必要です」

■子どもの権利を意識することが、子どもの最善の利益につながる

「子どもの権利」という面から考える必要がある、という専門家も。

「まずは、子どもにも私たち大人と同じように、尊厳があり、権利の主体である一人の人間だという意識を持っていただきたいです。大人がまず権利について知ってもらえたら」と話すのは、子どもの権利に詳しい児童精神科医の小澤いぶきさんだ。

「(日本も批准している)国連の『子どもの権利条約』では、どのように暮らしているかなどのプライバシーは守られるとされています。一方で、子どもが自分で表現する自由もありますし、意見を表す権利もあります」

「エッセイ漫画などで子どものことを描く場合、あなたにはこうした権利があるんだということや、起こりうるプライバシーの問題に加え、いつでも取り下げられること、意見が変化するのは自然であることなどを説明していただきたいです」

さらに、保護者と子どもという関係は権利の侵害が起こりやすいとも指摘。

「例えばNPOなどの団体が子どもの写真を使うときはしっかりと利用範囲を明確化しますが、保護者と子どもだと曖昧になってしまいます。大人が権威性を持ちやすく、判断するための情報量も大人の方が多いことがほとんど。そういう背景がある中で、子どもが対等な状態で選択できる、権利の話ができるような努力を私たち大人がしていく必要があります」

子どもがまだ幼いうちは同意を得ること自体が難しいこともある。

小澤さんは「イラストなどを使って早期から説明を。年代や言葉の有無に関わらず、子どもは言葉を話す前から、権利を持ち、表情や泣いたり笑ったりとさまざまな形で意思を表現しています」とした上で、「子どものさまざまな表現・意思を受け取って尊重することに加え、保護者を含む大人が子どもの最善の利益を考えることが重要になります」。

同意については、一度得るだけでなく、子どもの発達に合わせて何度も説明して話し合うこと、その過程で「嫌だ」と言われたらその意思を尊重すべきだと強調した。

エッセイ漫画などのノンフィクションは、実在の人物を描く。その特性によって「一歩間違えると人がコンテンツ化されて消費され、搾取性をはらむことがある」とも指摘。内容についても、子どもの権利を尊重しているか、侵害していないか、子どもの不利益を生み出していないか、などを考えることが重要だとする。

子どもと自分は違う人間で、時代も違う。そのため、「自分だったら大丈夫」が当てはまらないこともあると意識する必要があるという。

「子どもの権利を意識することが、プライバシーの保護や子どもの安全を守ること、子どもの最善の利益につながります。エッセイに関してだけでなく、インターネット上に子どもの写真を掲載する際などにも、子どもの声を聞いて考えていくことが重要ではないでしょうか」

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子育てエッセイ漫画「子どもの『やめて』を聞かなかったなら問題」と専門家。本人の許可は必要?

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