今年は異例の早さで梅雨明けし、広範囲で統計史上最短の梅雨となりました。梅雨明け後は6月としては記録的な猛暑の襲来。7月1日も、全国6地点で40℃台まで気温が上がるなど、危険なほどの暑さが続いています。
いま日本には何が起きているのでしょうか。地球温暖化との関係は?
<東京>
6月25日~7月1日、7日連続の猛暑日(最高気温が35℃以上の日)→観測史上2位の記録
<関東甲信>
6月27日ごろ梅雨明け→統計史上最も早い
<九州北部、四国、中国、近畿、北陸>
6月28日ごろ梅雨明け→統計史上最も早く、6月の梅雨明けは初
<東北南部>
6月29日ごろ梅雨明け→統計史上最も早く、6月の梅雨明けは初
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東京は7月1日現在で既に7日連続の猛暑日で、通年2位の記録となっています。
ちなみに歴代記録は2015年7月31日~8月7日の8日間です。今年は1位の記録に肉薄していることになります。
このように記録づくめと言われると、とんでもないことが起こっていると、頭が混乱してしまう方もいるかもしれません。
実は先日、いとこの子ども(小学校6年生)に「梅雨明けが早いのは温暖化のせいなの?」と聞かれました。
私は「時期が早いのは地球温暖化のせいではないけど、明けた後にこんなに暑いのは地球温暖化が1つの理由」と答えました。
梅雨明けの時期の早さを決めているのは、梅雨前線の北上や高気圧の位置の変化です。こういった個別の気圧配置への地球温暖化の影響は、ある程度はあると考えられますが、あくまで間接的な影響であって、主要因ではありません。
ただ、「温暖化のせい?」という疑問はもっとも。小学校から温暖化について習うのに、科学的な裏付けに基づいてそれらの関係を正しく解説した報道が少ないという問題点があり、気候変動や異常気象についての正しい科学的な知識が世の中に伝えられていないように感じます。
日本の日々のニュースの中では、猛暑と地球温暖化を結びつけた報道をあまり見かけません。これは私の考えでは、以前使った原稿や言い回しに倣った「前例踏襲型の、定型文の報道文化」が影響しているのではないかと思います。
確かに、1990年に発表されたIPCCの報告書では「人為起源の温室効果ガスは気候変化を生じさせる恐れがある」という表現で、影響を断定していませんでした。しかしながら、2021年に発表された最新の報告書では、「人間の影響が大気・海洋を温暖化させてきたことは疑う余地がない」という断定表現に変わっているのです。
メディアが地球温暖化の科学について知識をアップデートし、正しい科学に基づいたニュースを発信していくことの必要性を感じます。
では、今回の猛暑を科学的に見ると、どうなるのでしょうか?
まず、地球温暖化は日本の気温を底上げする効果を果たしている、と言われています。
夏の東京は、約100年前に比べ、気温が2.1℃上昇しています。地球温暖化による地球全体の気温上昇度合いは約1.09℃/100年ですから、夏の場合、約半分が地球温暖化、約半分は都市化(ヒートアイランド)による影響です。
たった2℃と思うかもしれませんが、猛暑の中のでの2℃は温度計をちょくちょく見ていれば意外とわかるものです。30℃から冷房を効かせて28℃にするだけで、結構涼しく感じられます。
もう少し科学的な話をしましょう。2℃はあくまで平均値なので、結果としては例えば、このように現れます。
こちらは東京の猛暑日の変化です。特に1990年以降に急増していることがわかります。
大ざっぱに理解するならば、1930〜40年頃の東京は、気温が上がっても33~34℃くらいだったのが、1990年以降は35℃の大台を突破することが増えてきた、と言うことができます。
また、実際には「温暖化が進むと気象現象はより極端になる」と言われますので、平均2℃以上の効果をもたらしているものと考えられます。
ちなみに、東京は2014年(▲)に観測所の移転がありました。大手町のビル群付近から北の丸公園の中に移動し気温は少し低く出る傾向となったはずなのですが、それでも35℃以上の猛暑日は近年も増加しています。
ここまで説明したような、「地球温暖化」や「都市化」による気温の底上げに加えて、異例の猛暑の直接の原因になっているのが、「二段重ねの高気圧」です。
日本の西側にある中国大陸、チベット付近から張り出している「チベット高気圧」と、太平洋の方から張り出している「太平洋高気圧」。この2つが重なると猛暑になります。夏場にお布団を2枚かぶっているイメージです。
こういった二段重ねの高気圧という個別の気圧配置に、地球温暖化はどれくらい影響しているのか。これも「ある程度は影響していると考えられるが、あくまで間接的な影響であって、主要因ではない」という答えになります。
しかしながら、「地球温暖化や都市化の影響で気温が底上げされている」のは事実であり、「100年前に比べて、猛暑日の日数が増えている」というのも観測データからわかる事実なのです。
<まとめ>
(1)6月としての異例の猛暑の原因は、3つに大別できる。
・気圧配置の要因
・地球温暖化
・都市化
(2)地球温暖化と都市化により、東京の猛暑日の日数は近年急増している。
【文:気象予報士 ・千種ゆり子、編集:中村かさね】
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