なぜ、7月を「文月」と呼ぶか知ってる? 「七夕」「お盆」にまつわる異称も

7月の異称

2022/07/01 05:15 ウェザーニュース

すでに広いエリアで梅雨が明けており、これからが夏本番。そんな7月の代表的な和風月名は「文月(ふみづき)」です。

『二十四節気と七十二候の季節手帖』などの著者で作家の山下景子さんに、文月の由来とその他の7月の異称について伺いました。

なぜ「文月」と呼ぶのか?

「文月は、“文披月(ふみひらきづき・ふみひろげづき)”が略されたものという説が一般的です。

古くは、書物のことを“文”といいました。7月7日の七夕の夜に、書物を開いて夜気にさらし、書の上達を祈る風習があったことから、文披月と呼ぶようになったということです。

“文披月”のままでも、7月の異称として使われました。

ですが、異説もたくさんあります。

稲穂がふくらむ季節であることから、“穂見月”や“穂含月(ほふみづき)”、“含月(ふふみづき)”などが、“ふみづき”に変化したという説も有力です」(山下さん)

その他の7月の呼び名は?

7月の呼称

文月のほかにも、7月の異称はたくさんあります。その中からいくつかを選んで、山下さんに解説していただきました。

【秋初月】(あきはづき)

旧暦では、7月から秋になります。ちょうど今の8月頃にあたるのですが、この時期はまだまだ暑さが続く頃。それなのに、もう秋とは驚きですね。

7月は秋の初めの月ですから、「秋初月」と呼ばれました。

また「初秋」や「新秋」も、旧暦7月の異称として使われることもありました。

【巧月】(こうげつ)

7月7日の七夕は、中国から伝わった「乞巧奠(きっこうでん)」がもとになっています。乞巧奠は、供え物をして織姫星をまつり、技能や芸事の上達を祈る儀式でした。

今では、どんな願い事でも託してしまいますが、本来は、裁縫や織物、書道や和歌などの技が上手になるように祈る日だったのです。

【愛逢月】(めであいづき)

織姫と彦星の伝説も、乞巧奠と同じ頃に、中国から伝わりました。

この伝説は、通い婚だった当時の貴族たちの心をとらえ、歌に詠まれたり、さまざまな風習を生んだりしました。

「愛逢月」は、織姫と彦星が愛して逢う月という意味で、7月の異称です。

ほかに、「袖合月(そであいづき)」とも呼びました。

【七夕月】(たなばたづき)

「文披月」「巧月」「愛逢月」「袖合月」のほかにも、七夕にまつわる7月の異称はまだあります。

ずばり「七夕月」ともいいますし、「七夜月(ななよづき)」もそうです。

織姫と彦星に漢詩や和歌を捧げたことから「歌見月(うたみづき)」ともいいました。

7月といえば、七夕の月と思えるほど、楽しみにしていたのでしょう。

【女郎花月】(おみなえしづき)

女郎花の花が盛りを迎えることから、7月は「女郎花月」ともいいます。

女郎花は、秋の七草のひとつにも数えられる花。また、お盆に供える「盆花」の代表的な花です。

7月は15日を中心とした盂蘭盆会(うらぼんえ)の月。親の墓参りに行く月という意味の「親月(おやづき・しんげつ)」も、7月の異称になっています。

【餞暑】(せんしょ)

「餞」は、送るという意味を持っています。旧暦7月は、暑さを送り出す月という意味で、「餞暑」という異称もつきました。

現代の7月は、暑さを送り出すというより、迎える月といえるでしょう。

本格的な暑さを前に、しっかりと体調を整えておきたいですね。

【涼月】(りょうげつ)

「涼月」も7月の異称です。

旧暦7月は現代の8月頃ですから、なかなか涼しさが感じられない時期ですが、昔は、次第に涼しさが増していく時期だったのかもしれません。

一方、現代の7月は、日増しに暑さが厳しくなっていく時期です。涼をとる工夫をしながら過ごす時期といえますね。

七夕、お盆と、昔ながらの行事が残る7月。とはいえ、どちらも秋の季語ですから、季節感は、昔とずいぶん変わってしまいました。

それでも、これらの行事を楽しみつつ、受け継いでいけるといいですね。

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