ナスは夏から秋にかけて旬を迎え、今頃から9月にかけては「夏ナス」、それ以降を「秋ナス」と呼び名が変わります。
「秋ナスは嫁に食わすな」という諺(ことわざ)が有名ですが、本来ナスは夏野菜。採れる時季によって味にも違いがあるそうです。詳しい話を野菜ソムリエプロの吉田謹子さんに伺いました。
ナスはインド原産で、もともと熱帯に適した野菜だそうです。
「原産地では2mを超えるほど大きくなる多年草で、見た目は木のようですが、温帯の日本では冬を越すことができないため一年草として栽培されています。
奈良時代ころに日本に伝わったとされ、今では非常に多くの品種があります。またハウス栽培もできるため1年中出回っています。
しかし、本来は熱帯原産の夏野菜なので、直射日光を浴びた露地栽培ものが出回る今頃からが旬になります。露地ものは味も濃く、うま味も増してくるのでおすすめです」(吉田さん)
今頃から盛んに出回る「夏ナス」と秋に出回る「秋ナス」では呼び名が変わるだけなのでしょうか。
「『夏ナス』は気温が高く強い日差しを浴びて生長するため、皮が厚くなり、果肉も詰まった実になります。また種もやや多めです。
これに対し、『秋ナス』は昼夜の寒暖差が大きく、日差しもやわらかくなってから育つので、皮が薄くて柔らかく、しっとりと水分を含んだ実になります。種も少なめです。
つまり、夏ナスは実が詰まってしっかりしているので、熱を加えても煮崩れしにくいのが特徴です。水分も少なめなので、ソースやだしの味をあまり薄めずに料理をおいしく仕上げることができます。煮物や炒め物にすると形も崩れにくくきれいに仕上がり、しかも食べ応えがあります。
一方の秋ナスは、水分が多くすぐに火が通るので、さっと炒めるもの、また柔らかさを生かした焼きナスや天ぷら、浅漬けなどに向いています。形が崩れやすいので、かき混ぜる必要がある料理、長時間の煮込み料理には夏ナスの方がおすすめです」(吉田さん)
ナスは夏におすすめの野菜だそうです。
「『秋ナスは嫁に食わすな』の意味にはいくつか説がありますが、『ナスは体を冷やすので、妊娠中の女性は食べない方がよい』という意味もあると言われています。
これは、ナスには利尿作用があり、身体の熱を外に逃がす働きがあるカリウムが多く含まれているからといわれています。そのため、夏には特におすすめの野菜です。
また、皮には『ナスニン』と呼ばれるポリフェノールの一部が含まれていて、強い抗酸化作用があるため、生活習慣病の予防にも良いと言われています。食物繊維も豊富、90%以上が水分で低カロリーなので、夏のダイエットにももってこいです」(吉田さん)
夏の日差しをたっぷり浴びて、たくましく育った夏ナスをおいしく食べてこの夏の暑さに備えましょう。
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