ヘイトスピーチは法律で禁止?LGBT差別解消法は必要?各政党の見解が分かれる【参議院議員選挙2022】

7月10日投開票の参議院議員選挙で、各政党は「人権」をどの程度、重要視しているか。国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」は6月27日、8政党を対象にしたアンケート結果を公表した。

ヘイトスピーチ禁止に向けた法改正や企業に「人権デューデリジェンス」を義務付けることの是非などについて、各政党の見解が分かれる結果となった。

■人権をテーマに24の質問

ヒューマンライツ・ナウは参院選の実施にあたって、自由民主党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党、れいわ新選組、社会民主党の8政党を対象にアンケート調査を実施し、人権に関する施策をテーマに24の質問をした。日本維新の会は、期日までに回答しなかった。

6月27日に実施されたオンライン記者会見では、ジャーナリストで、この団体のアドバイザーを務める津田大介さんらが結果について説明した。

■LGBT理解増進法は全政党が「◯」。しかし…

アンケートでは、性的マイノリティであるLGBTの人たちへの「理解増進法」や、差別の禁止を明文化した「差別解消法」の是非を聞いた。

理解増進法は2021年の通常国会で成立に向けた動きがあったが、自民党内の反対もあって国会提出が見送られた経緯がある。

この間、当事者団体などは、行政機関や事業者に対し、性的指向と性自認による差別的な取り扱いを禁止する「差別解消法」の制定を求めていた

アンケートに対し、回答のなかった維新を除き、全ての政党が賛成である「◯」をつけた。昨年秋の衆院選前のアンケートと比較すると、自民党の解答が「どちらでもない=△」から「◯」へと変化した。

各政党の回答一覧(一部)。ヒューマンライツ・ナウの調査結果より(https://hrn.or.jp/news/22162/)

今回、自民党は「性的マイノリティに関する広く正しい理解を促進するとともに、多様性を受け入れる寛容で温かい社会を築く法律の制定に賛成」と回答した。

これに対し、団体のアドバイザーを務める明治大学法学部の鈴木賢教授は「差別解消法と理解増進法は異なるもので、自民は差別解消法には反対だ」と指摘。その上で「(鈴木教授自身は)理解増進法は不要という立場だ。差別を解消すれば理解は自然と増進されるからだ」とあくまで解消法の成立が必要だと話した。

ちなみに回答の自由記述欄を見ると、差別解消法の成立にまで言及しているのは▽共産党▽国民民主党▽れいわ新選組だった。立憲民主党も「法律により差別を解消する必要がある」とした。公明党は「理解増進法の制定に向けて、引き続き全力で取り組んでいく」と答えた。社民党は自由記述欄は空白だった。

■ヘイトスピーチは法律で禁止する?

特定の国の出身者であることや、その子孫であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりする言動を指す「ヘイトスピーチ」。

現行の「解消法」を改正して、法的に禁止するかどうかを尋ねた質問では、自民党と公明党の与党がいずれも「どちらでもない=△」で、野党は全て「賛成=◯」だった。

各政党の回答一覧(一部)。ヒューマンライツ・ナウの調査結果より(https://hrn.or.jp/news/22162/)

ヘイトスピーチをめぐっては2016年に「解消法」が成立したが、罰則のないいわゆる「理念法」だ。

また、大阪市が制定したヘイトスピーチを規制する条例をめぐっては、憲法21条1項が定める「表現の自由」を侵害するかどうかが裁判で争われた。最高裁は2022年2月、憲法に違反しないとする判決を下した。

これに対し法務省は「憲法が保障する表現の自由を踏まえてもなお、ヘイトスピーチは、あってはならない」とするコラムを掲載している。

自民党は「憲法上の表現の自由に配慮して、ヘイトスピーチ自体の禁止規定や罰則規定をあえて設けず、啓発等を通じて国民の理解を深めるという理念の下で議員立法がされました。ヘイトスピーチを禁止する条項を追加することについては、このような制定経緯等を踏まえる必要がある」と慎重姿勢を示した。

公明党は最高裁の判決に触れたうえで「ヘイトスピーチを禁止する条項を追加することについては、引き続き検討し、議論を重ねていきたい」と答えた。

野党は、立憲民主党と国民民主党がそろって「人種・民族・出自などを理由とした差別を禁止する法律の制定」を掲げた。れいわ新選組は「さらに外国人差別をなくすための法律が必要」だと訴えた。

■人権DD義務化の是非は

自社や取引先での人権リスクを把握し、対処する「人権デューデリジェンス」を法律で義務付けることへの賛否も分かれた。

人権デューデリジェンスをめぐっては、東証一部と二部に上場している企業を対象に実施した国の調査(2021年)で、およそ半数が取り組んでいないと回答。人権デューデリジェンスという概念自体を「知らない」とした企業も3割に上っていた。

自民党、公明党、それにれいわ新選組が「どちらでもない=△」で、その他の政党はいずれも「賛成=◯」だった。

各政党の回答一覧(一部)。ヒューマンライツ・ナウの調査結果より(https://hrn.or.jp/news/22162/)

自民党は「企業がサプライチェーンも含めた人権尊重の取組みをしっかりと行わない場合、多くのリスクに直面するおそれ」があると指摘。一方で「将来的な法律の策定可能性も含めて、更なる政策対応についても検討していくべき」と法制定については明言しなかった。

公明党も「国際競争力の維持強化につながるように政府が支援していくことが重要であり、その上で法的義務化の必要があれば検討」とした。れいわは「検討が必要」と答えた。

日本共産党は「企業が労働者にたいして、サービス残業や児童労働、ハラスメント・人権侵害など法的・ 道義的に許されないような働かせ方を許さないためにも法的義務化が必要」と賛成の立場を明確にした。

国民民主党も「企業活動を毀損するリスクの低減、企業価値の向上に資するため、必要な法整備」だとの認識を示した。

こうした結果に対し、弁護士の伊藤和子・副理事長は「『どちらとも言えない』を含めれば反対している政党は見当たらない。この1、2年でしっかり合意形成をして人権に沿った外交をしてほしい」と話した。 

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ヘイトスピーチは法律で禁止?LGBT差別解消法は必要?各政党の見解が分かれる【参議院議員選挙2022】

Fumiya Takahashi