アメリカ連邦最高裁判所が、「中絶は憲法で認められた女性の権利」とした1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を下したことを受け、抗議デモが全米に広がっている。
一部の州ではすでに、中絶手術を行ってきたクリニックの閉鎖も始まった。
中絶の権利をめぐって全米が揺れる中、性教育を若い世代に伝える活動に取り組むタレントのSHELLYさんがInstagramを更新。アメリカ最高裁による今回の判断に対して「耳を疑う結論」「安全な中絶にたどり着けなくするもの」などと異議を唱えた。
妊娠中絶が憲法で保障された権利でなくなったことで、中絶規制の動きは各地に広がるとみられている。全米50州のうち26州で中絶を禁じたり、極めて厳しく規制したりする可能性が懸念されている。
こうした事態を念頭に、SHELLYさんは投稿で「違法となってしまう地域に住んでる人はお金や権力がないと仕事や学校を休んでまで中絶をしにいけません。そうなると近場で安く済まそうと、危険な方法で中絶をしようとします」「必要な人は何としてでも、どんな方法でも中絶に挑みます。この決定は沢山の死をもたらす事になります」などと懸念を示した。
その上で、「安全で安心、なおかつ安価で手の届く中絶は子宮のある人にとって人権であり、守られないといけないものです」と訴えた。
日本では妊娠中絶をする際、未婚やDVなどのケースを除き原則として配偶者の同意が必要とされる。
SHELLYさんは中絶をめぐる国内のこうした問題にも触れ、「意図せぬ妊娠を絶対に予防する方法はありません。確実な避妊方法はありません。セックスをしなくても、レイプされる可能性があります」と指摘。
「今回の恐ろしい出来事を決して遠いアメリカで起きてる他人事と思わず、日本でもこんな事が起きる可能性があると思って真剣に向き合ってほしいです」と強調した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとシカゴ大学の全国世論調査センター(NORC)による5月時点の世論調査では、「ロー対ウェイド判決」をアメリカ国民の3分の2以上が支持しているとの結果になった。
妊娠している女性が合法的な中絶を求めた場合、どのような理由であっても認められるべきだと答えたのは約57%に上った。
SHELLYさんは、こうしたアメリカの世論調査の傾向と逆行する連邦最高裁の決定は、「投票によって権力を手に入れた人々によって決まった事です」と主張。
「いかに投票が大切か。自分の意思表示が大切か。今回の出来事でわかると思います」と訴え、「こんな事が日本で起きないためにも。当たり前と思ってる権利をある日突然奪われないためにも、ぜひ投票権のある方は投票してください」と呼びかけた。
アメリカ連邦最高裁の今回の判断に対し、世界のリーダーたちからも非難の声が相次いでいる。
アメリカのバイデン大統領は6月24日、ホワイトハウスで演説し、「最高裁は憲法上の権利をアメリカ国民から取り上げた。悲劇的な過ちだ」などと糾弾。11月の中間選挙で民主党に投票するよう呼びかけた。
カナダのトルドー首相は「アメリカから届いたニュースは恐ろしいものです」とTwitterに投稿。「私の心は、中絶をする法的な権利を失いそうになっている何百万人ものアメリカ人女性とともにあります」として、中絶の権利を求める人たちに寄り添う姿勢を見せた。
フランスのマクロン大統領も「中絶はすべての女性にとって基本的な権利です。それは保護されなければなりません」などとツイートし、女性の自由と権利擁護に対する支持を表明している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
SHELLYさん「沢山の死をもたらす」中絶の権利覆すアメリカ最高裁の判断に異議