「赤かぶ1個5円」「ねぎ1本30円」ーー。そんな野菜直売所が、安さだけでなく「販売方法が斬新」とネット上で話題になっている。
注目を集めたのは千葉県印西市の畑。かたわらには「収穫体験型」「すべてセルフ」と記された掲示板が立つ。購入者が自分で収穫し、そのまま購入して持ち帰れるシステムだ。
畑のまわりには料金箱のほか、収穫や持ち帰りに使えるビニール袋やハサミも設置されている。土中に野菜が埋まるあたりには、1個あたりの値段と簡単なレシピを掲げた看板が立つ。
古墳の近くにあった無人野菜販売所。販売方法が斬新、かつ新鮮、さらに激安。(もちろん収穫して買った) pic.twitter.com/bXavdVxn87
— 古墳にコーフン協会 (@kofun_ni_kohfun) April 24, 2022
4月24日に「古墳にコーフン協会」がTwitterに写真とともに投稿すると、買う人自身が収穫できるという珍しさから、ネット上では「毎日行きたい」「うちの地域でもできないかな」と多くの反響があった。
ハフポスト日本版は畑で野菜を生産している小久保力(つとむ)さん(68)に話を聞いた。
とれたての新鮮な野菜を食べて
60歳で千葉県警察を退職し、印西市小林地区などで畑作業を始めたという小久保さん。当初から畑のそばに直売所を設け、小林さんが収穫した野菜を並べていた。トマトやナス、きゅうりなどを売っていた夏頃、「収穫した野菜を放置しておくと、すぐに干からびて鮮度が落ちてしまう」 と気がついた。
「新鮮なのは、畑の中にある野菜だけ。それに、自分で食べる野菜を収穫するのも楽しいはず」。そう思いつき、購入者に野菜を採ってもらう販売方法に変えたのだという。
それから約7年が経った。いまでも季節ごとに何種類もの野菜を育てる。「正直に言って、疲れます」と小久保さん。それでも野菜の生産を続ける理由がある。
「近所の高齢者が、『ここの野菜を採りにくるのが生きがいだ』って言うんです。楽しみに待ってる人がいるから、いまも続けているんですよ」
ピーマン5円、ナス20円
小久保さんの野菜は格安だ。Twitterの投稿者は「(1個5円の)赤かぶを20個収穫したどー!これだけ採っても100円!!」と喜んだ。
小久保さんによると、値段は近所のスーパーなどで相場を調べた上で、「収穫にかかるコストを引いて」決定しているという。買う人が自分で採る分、安く売れる。それでも破格の値段だ。
赤かぶを20個収穫したどー!
5円×20個で100円。これだけ採っても100円!! pic.twitter.com/lWuQh4aOiS— 古墳にコーフン協会 (@kofun_ni_kohfun) April 24, 2022
季節によって収穫できる野菜は変わる。4月は赤カブやネギしか採れず、品目は少ない。6月中旬にもなると、ピーマン(1個5円)、ナス(同20円)、キュウリ(同20円)、ミニカボチャ(大きさにもよるが1個あたり約100円)なども収穫できるようになるという。
実家は祖父の代まで農家で、子どもの頃には家族で食べる野菜を自分たちで育てることもあった。そうした経験のほか、毎年の栽培の経験を記録して、最適な品種や育て方を日々研究しているという。
色々な野菜を育てていると、収穫しにきた客に「どうやって食べたらいいの」と尋ねられることもあるという。そこで、野菜のそばには簡単なレシピも掲示するようになった。
赤カブは「洗って容器に入れ、カンタン酢(ミツカン)を注ぐだけ!一晩でできます」。ネギには「スライサーで薄くカットし、乾燥しないようすぐに醤油をかけ、なじませます」などと調理工程を添えている。
「いつか野菜の購入と調理をセットで楽しめる施設を立ち上げることが、いまの私の夢です」
無人販売が「畑の賑わい」に
野菜の販売は無人で行っている。購入者は収穫した野菜の金額を畑の脇に設置された料金箱に納める。
「売り上げは時期によって変動もありますが、平均で1日2000円程度です。つくった野菜をみなさんにわけているつもりの『サービス気分』でやっています。色んな人が立ち寄ってくれることが、畑の賑わいにつながりますから」
ただ、現在はいつでも野菜を収穫できるようにしているが、購入できる時間帯を限定し、売り上げ金額を確認しやすくすることも検討中だという。
「私が無人販売所を適当に運営していたら、『このあたりでは勝手に野菜を採ってもいい』と思われてしまうかもしれません。治安維持のため、販売方法を変える可能性はもちろんあります」
現役時代は警察官だった小久保さん。地元の人たちの楽しみと安全の両立を願っている。
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「赤かぶ1個5円」自分で収穫もできる野菜直売所が「毎日行きたい」と話題に