というのは、日米豪印4カ国(クアッド)の韓国参加をどう考えるか、と複数の日本政府関係者に尋ねると、一様に冷淡だったためだ。尹氏はクアッドへの段階的な参加に意欲を示すものの、日本では「クアッドは対中ヘッジのための枠組みなのに、本当に中国より日本を選べるのか」と疑念が消えない。韓国がクアッドに参加する日は来るだろうか。
(略)
「韓国は中国との間で揺れており、クアッドで何ができるのか。それより、インドをどう根付かせるかが重要だ」
「米国が言えばどうぞ(参加を)、なんていう簡単な話ではない。4カ国でも調整が大変なのに、韓国が入ってきたらどうなるのか」
クアッドの現状をよく知る複数の日本政府関係者は、私の問いに苦笑するばかりだった。最も印象的だったのは、この言葉だった。
「今、日本の中で韓国をクアッドに入れようと考えている人はいない。クアッドは日本が作り上げてきた枠組みだ。感情的に、韓国が入ることを歓迎する雰囲気はない」
中国の台頭に対し、日本が日米豪印の枠組みを提唱したのは第1次安倍政権の時だ。当時、中国への関与や協調を重視していた米国、豪州、インドはいずれも冷ややかだった。地道に育ててきた自負のある日本としては、突然韓国が参加に意欲を示しても素直に喜べない、というのである。
◇韓国の対中世論は年々悪化
日韓両国の対照的な姿勢は、世論を反映している側面もある。非営利団体「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」が2021年9月に発表した共同世論調査で、中国に良い印象を持つと答えた韓国人は10・7%にとどまった。20年は16・3%、19年は22・2%で年々悪化している。要因は「終末高高度防衛(THAAD)ミサイルの配備による報復など中国の強圧的な行動」(65・2%)や、「韓国を尊重しない」(43・8%)などが上位を占め、中国に軍事的脅威を感じるとの回答は前年比17・5ポイント増の61・8%に上った。
韓国のクアッド参加については、韓国人の51・1%がすべきだと答えており、同研究院は、中国への警戒感の高まりが背景にあると分析する。一方、日本人はわずか11・4%で、「参加する必要はない」が39・4%だった。
◇韓国引き込みは日本にもメリット
韓国と対中けん制で足並みをそろえるのは難しい、と日本側が考えるのはこれまでの経緯からも理解できる。同じく保守系の朴槿恵大統領(当時)は15年、日米両国の懸念をよそに、抗日戦争勝利70周年記念式典に出席し、天安門広場で行われた軍事パレードを習近平国家主席とともに観覧した。
尹氏がクアッドの正式参加ではなく、個別分野での協力からと慎重姿勢を示しているのは、依然として対中バランスに苦慮していることの表れだ。5月のクアッド首脳会議に尹氏が出席するのは、オブザーバーであっても可能性は極めて低い。
とはいえ、韓国を西側陣営に引き込むことは日本にも大きなメリットがある。韓国をメンバーに加えた新たな枠組みを作れれば、中国をはじめ内外に大きなインパクトを与える。
感情論を口にした先述の政府関係者も、韓国の対中世論の変化は注目に値するとみていた。尹氏は当選直後、バイデン米大統領の次に岸田文雄首相と電話協議したほか、米国に続いて24日から訪日特使団を派遣すると発表した。中国より日米との関係強化を目指しているのは明らかだ。
まずは、既存の日米韓の枠組みで一歩ずつ信頼関係を築く。そのうえで、クアッド+1という名称に抵抗があるなら、「自由で開かれたインド太平洋」実現のため、新たなグループ作りを検討してみるのはどうだろうか。【大貫智子】
https://news.yahoo.co.jp/articles/e28a67b455b8fc5b759a2f7e504ab5859db1a126
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日本政府関係者「日本の中で韓国をクアッドに入れようと考えている人はいない」