朝の目覚めに、仕事の合間の気分転換に、食後のデザートのお供にーー。私たちの暮らしを豊かにしてくれるコーヒー。
その一杯が、海の向こうの“渡り鳥”たちの命を脅かしているかもしれない…。そんな事実を知っていますか?
実は、コーヒーの生産が、中南米などでの渡り鳥の減少に影響していることが分かっているのです。
一方で、日本ではあまり知られていませんが、渡り鳥の休息地を守る「バードフレンドリー®」という認証がついたコーヒーが、実は身近でも販売されています。
一体、どんなコーヒーなのでしょうか。
毎年、何百万羽もの渡り鳥が、越冬のため、北米からメキシコやコロンビア、グアテマラ、ホンジュラスなどの中南米に移動しています。
冬の間、そんな渡り鳥たちの休息地となってきたのが、原生林が残る中南米の熱帯林。森の中は暖かく、鳥たちは豊富な食糧や水にありつくことができます。
しかし、そうした渡り鳥たちの森が急速に失われつつあります。
背景にあるのは、コーヒーの栽培方法の変化。かつて、コーヒー栽培といえば、熱帯林の下で育てる木陰栽培が主流でした。しかし、低コスト化を図るため、低木のコーヒーを大量に栽培するプランテーション型の農法が増加しているのです。
熱帯林が伐採され大規模農園に姿を変えるにつれて、渡り鳥の減少も確認されるようになっていきました。アメリカとカナダで行われた調査では、1970年から2020年までに約30億羽の渡り鳥が姿を消したことが分かっています。
こうした危機感から、アメリカのスミソニアン渡り鳥センターが1999年から始めたのが、バードフレンドリー認証です。認証は、渡り鳥の休息地を守ることを目的に、原生林に近い環境で木陰栽培によって生産されたコーヒーに与えられます。
「原生林に近い環境」とは何か。認証では、その条件が細かく定められています。たとえば、木の高さについては、20%が15メートル以上の大木であること、60%が12メートル以上の中木であることなどが求められています。樹種も11種類以上で構成されることが条件です。
また、有機農法で栽培されることも認証の条件。農薬の過剰な使用を控え、“コーヒーかす”などの有機廃棄物が肥料として使われます。こうすることで、土壌の流失や汚染を防げるほか、鳥たちの食糧となる虫なども増えていきます。
渡り鳥を含めた森の生態系を守るバードフレンドリー認証のコーヒー。実は生産者の支援にも繋がっています。木陰栽培のコーヒーは品質が高く、高値で取引されます。また、認証コーヒーの売り上げの一部は、渡り鳥の保護に使われるほか、生産者にも還元されるため、持続可能な経営をサポートすることができるのです。
現在、中南米、アフリカ、アジアなど13カ国、59農園 / 農協がバードフレンドリーの認証を受けたコーヒーを生産しています。
しかし、気になるのはそのお味。
輸入総代理店としてバードフレンドリー認証コーヒーを手がける住商フーズの鈴木聖規さんは「直射日光を長時間浴びて栽培される(プランテーション農園の)コーヒーと比べて木陰栽培のコーヒーはじっくりと育つので、風味豊かなのが特徴です」と話します。
日本でバードフレンドリーの認証コーヒーを販売するのは、カルディコーヒーファームや小川珈琲、ユニカフェなど。
毎朝、起き抜けにコーヒーを飲むのが欠かせない筆者。実際に、小川珈琲で商品を購入し、飲んでみました。
苦味や酸味が少なく、マイルドな味わい。どこかチョコレートのような風味も感じました。
スーパーで購入するコーヒーと比べると割高ですが、コーヒーが育つ森で過ごす渡り鳥の様子を思い浮かべながら飲むと、不思議と爽やかな気分になります。
生物多様性や生産者の人権を考慮したコーヒーに与えられる認証は、他にも「レインフォレスト・アライアンス認証」や「国際フェアトレード認証」などがあります。持続可能な形で生産・調達されたコーヒーは沢山販売されています。
皆さんも、一杯の「向こう側」を考えながら、コーヒー選びを楽しんでみてはいかがですか。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
一杯のコーヒーが渡り鳥の命を脅かしているかも…。実は身近にある「バードフレンドリー」なコーヒーについて調べてみた