日本の内閣府が2021年末に実施した調査によると、低年齢層の子ども(0〜9歳)の74.3%がインターネットを利用しており、うち12.3%が自分専用のスマートフォンを持っているという。利用内容を見ると、「動画を見る」が94%、「ゲームをする」が59%で上位だが、10.6%が「投稿やメッセージ交換をする」と答えた。
多くのSNSは公式規約で13歳未満の利用を禁止している。
しかし、イギリスのメディア規制当局Ofcomの委託調査によると、5歳から7歳の保護者3人に1人、8歳から11歳の保護者3人に2人が、子どもがSNSアカウントを持っていると答えており、規制が行き届いていないことが明らかになった。
ケンブリッジ大学でデジタル技術が思春期の心理的健康に与える影響について研究しているエイミー・オーベン博士は、ソーシャルメディアが小さい子どもたちに与える影響を正確に把握するのは難しいと述べる。
「13歳未満のソーシャルメディア利用者は、そのプラットフォームを利用することが法的に認められていないため、調査するのはとても難しいのです。そのため、ソーシャルメディアと子どもたちに関する知識が得られないのです」とハフポストUK版に話した。
しかし、ソーシャルメディアの脳への影響については、少し分かっている情報もある。
ソーシャルメディアは、小さな子どもの発達にどのような影響を与えるのだろうか?
9〜10歳の子どもたちを10年間追跡調査しているアメリカの思春期脳認知発達の研究によると、ソーシャルメディアの利用時間は、これまでの経験に関係なく思考や推論する「流動性知能」と経験や知識の蓄積に関係する「結晶性知能」の両方のテストの得点が低いことと関連していることがわかった。
しかし、この研究では、全てのデジタルメディアの中で、ソーシャルメディアに費やす時間が精神疾患への脆弱性につながる脳の構造変化と最も関係性が低いことがわかった。
若者のソーシャルメディア多用とメンタルヘルスの問題の間には関連性があることは既によく知られている。
インドのムンバイにあるWockhardt病院のメンタルヘルス専門家であるDeeksha Kunwar医師は、インドのニュースプラットフォームNews9にこう述べている。
「ほとんどの10代にとって、ソーシャルメディアを利用するのはコメントやシェア、『いいね!』などを通じて即座に認定してもらうためです。その一瞬の満足感がドーパミンを放出し、またやりたくさせるのです。しかし、自分の人生を他人と比較し始めると、自身のセルフイメージが破壊されることがあると理解しておくことも重要です」
Nature Communications誌に掲載されたオックスフォード大学とケンブリッジ大学が関与した別の研究では、ソーシャルメディアの多用は、男女ともに19歳時点での人生満足度の低下を予測した、と報告した。
この発見は、ソーシャルメディアが発達上の変化、脳の構造の変化、または思春期に関係している可能性があることを示唆している。
ソーシャルメディアが子供に与える影響は、少し複雑だとオーベン博士は話す。
「特定のコンテンツを見ることは、何らかの形で人に影響を与えると思います。だから、辛いコンテンツや逆にポジティブなものを見れば、感情は変化するでしょう。他にも、共通点が多いのにオフラインでは出会えなかったであろう人とも繋がることでも変化します」
「つまり、見るコンテンツの内容だけでなく、SNS上での交流や、自分の投稿にもよります。さまざまなSNS上でのアクティビティが、いろんな形で感情に影響するのです」
「ソーシャルメディアが与える影響は、その利用目的によって大きく異なるので細かく指摘するのはとても難しいです」とオーベン博士は述べる。
「私の同僚は、5歳の子供にスマートフォンを与えていました。しかし彼はテクノロジーにとても詳しいので、写真機能やオーディオブック、小さい子どもでも楽しめる機能だけに限定して、逆に一定のタイプのコンテンツに触れられないよう制限していました」
子どもたちがソーシャルメディアに興味を持ち始めたら、その年齢層に適したアクティビティを考えるのが重要だとオーベン博士は話す。
「子どもが小さいうちは、厳重に管理しなければなりません。でも子どもが成長したら、もっと自由を与えたくなるかもしれません」
オーベン博士によると、英国王立小児科小児保健学会は、子どもの画面を見ている時間とその影響、そしてそれについての親への手引きを記載したとても優れた報告書を作成したという。
「ソーシャルメディアやネット利用に費やす時間制限や年齢制限についての推奨はしていません。ただ、それらは子どもの生活への手助けを補完するものであることが重要で、食事に例えるならばデザートのような存在であるべきです」
「でも、もし子どもの日常生活が利用しているテクノロジー中心になり始めているようであれば、テクノロジーが『食事』になってしまい、そこから問題が発生し始めるのです。本当に個人差があり難しいのですが、私はそこに気をつけています」
また、TikTokやInstagramなど、子どもが安全に利用するための保護者向けガイドを公開しているサイトもあるので、参考にすると良いだろう。
ハフポストUK版の記事を翻訳・編集・加筆しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
SNSが子どもに与える影響は?中毒になる前に、親が気をつけるべきこと