映画のストリーミングサービスといえば、真っ先に浮かぶのがNetflix。2022年2月現在でも、Netflixは時価総額で第2位のエンターテインメント/メディア企業として知られています。
コロナ渦が発生した当初、巣ごもり需要に完全にマッチしたNetflixの人気や株価はさらに急騰しました。しかしここ数ヶ月ではNetflixの株価は急減し、ここ4ヶ月で時価総額の50%、約1500ドル(18兆円超)を失っています。この未曾有の大暴落の理由について、YouTubeチャンネル「Logically Answered」が解説しています。
*Category:テクノロジー Technology|*Source:Logically Answered,Wikipedia(1),(2)
Netfilxはコロナ渦によって一時勢いに乗ったかのように見えましたが、これまで抱えてきた根本的な問題が露呈し、苦戦を強いられるようになりました。「Logically Answered」が指摘する、Netfilxの根強い課題の1つが「スタジオ依存」です。
オリジナルコンテンツが高評価を受けてきたNetflixですが、そのコンテンツ自体の制作は、従来のテレビ業界や映画業界に依存しています。つまり、Netflixが大規模で多様なコンテンツ・ライブラリを持つことができるかどうかは、制作スタジオとどれだけ多くのライセンス契約を結べるかに大きく依存しているのです。
Netflixは創業当初からこのことをよく理解しており、だからこそ「ボージャック・ホースマン」や「ハウス・オブ・カード」「イカゲーム」などのオリジナル作品の制作に最大の力を注いできました。また、オリジナル作品以外にも「ペーパー・ハウス」や「ルシファー」といった番組のライセンス買い取りなどで、ラインナップを充実させてきました。
しかし結局のところ、これらのオリジナルコンテンツはほんの一部でしかありません。もしも他の制作スタジオが何らかの理由でNetflixへの提供を拒否すれば、Netflixはコンテンツのほとんどを失い、その作品のファンを失ってしまうこととなります。
このように撤退した制作スタジオの最たる例が、現在最大の競合となっている「ディズニー」です。同社は2019年にNetflixとの既存の配信契約を終了した後、最大の競合サービスとなる「Disney+」を開始しました。
「Disney+」が開始したのは、2019年11月、つまり2年余り前のことです。しかし、最近参入したにもかかわらず、すでに加入者は1億3000万人近くまで増加しています。ちなみに、Netflixの加入者数は現在2億2100万人。Disney+と比べると、まだ約9000万人多い状態ではあります。
しかし、ディスニーには「アラジン」「アリス・イン・ワンダーランド」「フローズン」「モアナ」などの名作を有する「ウォルト・ディズニー・プロダクション・スタジオ」があり、「ソウル」「ココ」「インクレディブル」「カーズ」「ファインディング・ニモ」「インサイド・アウト」「トイ・ストーリー」などを制作した、「ピクサー」の権利も所有しています。その上「マーベル・シネマティック・ユニバース」も見る事が出来るのです。
当然のことながら、この映画の権利はディズニーが持っている為、誰からのライセンスにも依存することはありません。
Netflixとディズニーの決定的な違いは、前者が「制作もするストリーミング会社」であるのに対し、後者は「ストリーミングサービスを立ち上げた制作会社」であるという点です。今後さらに独自のストリーミングサービスを立ち上げる制作会社が増えれば、Netflixがコンテンツと加入者を維持することはますます難しくなるでしょう。
Netflixの苦戦には、意外なことにコロナ渦による巣ごもり需要も影響しています。このような状況は、もともとNetflixのような自宅で利用できるサービスにとっては良い影響を及ぼすはずでした。
しかし長期的に見ると、パンデミックはNetflixにとってマイナスでした。その理由の1つは、消費者が他のストリーミングサービスを試すことに積極的になったからです。
コロナ渦が始まる前から、ストリーミングで番組や映画を楽しむ人のほとんどは、すでにNetflixを契約している状態でした。そのような既存ユーザーがコロナ渦により、他のサービスを試すようになったのです。
実際、コロナ渦以降のDisney+は1億人の増加なのに対し、Netflixは4千万人の増加です。両方のサービスに加入している1千万人の加入者全員がNetflixを選んだとしても、Disney+は9千万人の加入者を獲得した事になり、その増加はNetflixの2倍以上になるのです。
コロナ渦が長期的にNetflixにとって不利であったもう1つの理由は、競合の増加が挙げられます。
コロナ渦以前は、ストリーミングビジネスは、多くのビジネスの1つに過ぎませんでした。しかし現在では、ストリーミングビジネスは最優先事項の1つとなっています。
ディズニーも同じです。以前は興行収入10億ドルを超える映画をコンスタントに発表し、世界中にテーマパークを展開していました。しかしその収益は、コロナ渦によって収益が一夜にしてなくなってしまいました。そのため、ストリーミングビジネスに注力することは不可欠だったのです。
そしてこのような状況は、ディズニーだけでなく、すべての制作スタジオにも当てはまります。コロナ渦による競合他社の登場や急成長が、Netflixを追い詰めているのです。
オリジナルサイトで読む : AppBank
18兆円超を4ヶ月で失ったNetfilx。巣ごもり需要が増えたコロナ渦に「逆に苦しめられた」理由とは?