「お金について考えよう」と言われたら、どんな気持ちになるだろう。増やすための投資・NISA・iDeCo…。聞いたことはあるが、何から手をつけるべきなのかと迷う人は多いはず。そこで、ファイナンシャルプランナー(FP)の高山一恵さんに、初心者向けの「お金のきほん」を聞いた。連載第6回は、「株式投資」について学ぶ。
■「株式投資」にもチャレンジしてみたい人へ
こんにちは、FPの高山一恵です。この連載では「投資が気になるけれどやってみたことはない」人に向けて、着実にお金を増やせる「長期・分散・積立」投資の重要性や、それらを実践できる税制優遇制度「つみたてNISA」について解説してきました。
初心者であれば、まずはこれで十分。でも、ゆくゆくは「自分で好きな銘柄を選んでみたい」とか、「慣れてきたらもう少し勉強して、株式投資などでより大きなリターンを狙いたい」とかいった希望を持つ人もいるのではないでしょうか。今回は、そんな声に応える内容です。
株式投資とはそもそもどういうものだったか、おさらいしておきましょう。
企業がビジネスをしていく資金を集める時などに発行するものが「株式」です。株への投資で得られる利益は主に3つあります。
(1)株を保有していることで受け取れる配当金(業績が良い場合など)
(2)企業の商品の詰め合わせや商品券などの株主優待
(3)買い付けたときよりも株価が高くなったタイミングで売ると得られる値上がり益
(3)では大きなもうけを得られることがありますが、逆に株価が下落したタイミングで売りに出すと、損失を被ることもあります。株式は、リスクが比較的高い投資資産だといわれています。
■リスクが高い投資=危険な投資?
ここで注意してほしいのが「リスク」という概念の捉え方です。「リスクが高い」と聞くと、すぐに「じゃあ危険なんですね!」と反応してしまいがち。でも、投資において「リスク」という言葉を使うときには意味合いが少し異なります。
リスクとは「リターンの振れ幅」のことです。つまり、リスクが高いというのは値動きの振れ幅が大きいということ、逆にリスクが低いというのは値動きの振れ幅が小さいということなのです。
高いリターンを求めれば、それに比例してリスクも高くなることは理論上、避けられません。だからこそ、自分がどれくらいのリスクであれば対応できそうかを考えながらリターンの「下ブレ」にも備えておくことが大切です。
投資はあくまで余裕資金(手持ちのお金から当面の生活費や緊急時の備えとして必要なお金を除いたもの)でチャレンジすることを鉄則とし、最低でも生活費半年分くらいは、預貯金で確保しておくようにしましょう。
ただ、一口に株式投資といっても、スタイルはさまざまです。売却による値上がり益を狙うのではなく、中長期で株を保有して、配当金をもらったり株主優待を楽しんだりする人もたくさんいます。自分自身が投資とどう向き合っていきたいのかについても考えてみてくださいね。
■投資視点で身の回りに目を向けよう
株式投資は難しそうだし、そもそも銘柄の選び方も分からない――。そう感じて当然だと思います。そこで手始めにお勧めしたいのは、投資家になったつもりで、日々の生活や身の回りにあるものを見つめ直してみることです。
銘柄選びのヒントは、実は街の中にもたくさんありますよ。例えば、私は「デパ地下」の食品売り場を見て回るのが大好きです。あるとき、お気に入りの惣菜店を運営している企業について、ふと気になってインターネットで調べてみました。そうしたらとても業績がよく、株主優待も充実していた、なんてことがありました。
「この企業はどうして業績がよいのかな?」「中長期的に成長が見込める商品・サービスかな?」という視点で日々の経済ニュースなどにも関心を持てるようになれば、リテラシーがどんどん高まっていきます。
また近年は、企業が提供する商品やサービスが、環境や人権に配慮したものであるかどうかについても大きな注目が集まっています。そうした取り組みに積極的な企業を、投資で応援してみるのもいいでしょう。
通常、株は100株以上からしか売買できませんが、スマホ証券なら1株から購入できる場合も。ESG(環境・社会・企業統治)への取り組みに力を入れている投資先をピックアップした投資信託商品もあります。
ハードルは下がっているので、少額から「お試し」気分で投資してみると、視野が広がるかもしれません。投資には「もうける」以外のメリットもあるのです。
(取材・文:加藤藍子@aikowork521 編集:竹下由佳@kuboyu318)
高山一恵さんプロフィール
Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWebメディア「FP Cafe」や「Mocha(モカ)」を運営。全国での講演活動、執筆・相談業務も行う。著書は『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『はじめてのNISA &iDeCo』(成美堂出版)など。
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「株式投資」の始め方。FPが語る「もうける」だけじゃないメリットとは?