手術後に女性患者の胸を舐めたなどとして準強制わいせつ罪に問われた男性医師の上告審で、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)は2月18日、懲役2年を言い渡した二審の有罪判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。
男性医師は2016年5月、働いていた東京都足立区の病院で、女性患者の手術を行った。執刀後、病室で女性の着衣をめくって左胸を舐めるなど、抗拒不能に乗じてわいせつ行為を行ったとして、準強制わいせつ罪で逮捕・起訴された。
裁判で弁護側は、女性が麻酔の影響による「せん妄」状態で性的幻覚を見た可能性があると主張。医師のDNAが検出された科学捜査研究所の鑑定に信用性が認められないなどとして、無罪を主張していた。
2019年2月の一審判決で、東京地裁は女性が「せん妄」状態だった可能性があり、鑑定手法は誠実性が疑われるなどと指摘し、医師に無罪を言い渡した。
2020年7月の二審判決では、東京高裁は幻覚を見た可能性はなかったと判断。検出されたDNA量が多量だったなどとして、懲役2年の逆転有罪を言い渡した。
弁護側は上告し、2022年1月21日に最高裁第二小法廷で弁論が開かれ、結審していた。検察側は上告棄却を求めていた。
2月18日の判決公判で、三浦守裁判長は二審の有罪判決を破棄。審理を高裁に差し戻した。
判決文によると、最高裁は二審で検察側の証人として証言した医師の見解について、「医学的に一般的なものではないことが相当程度うかがわれる」と指摘。二審判決の判断は、せん妄に伴う幻覚を体験した可能性があり得るとした一審判決の不合理性を「適切に指摘しているものとはいえない」とした。
さらに、DNA鑑定については、信頼性に「なお未だ明確でない部分がある」として、審理が尽くされていないと指摘。アミラーゼ鑑定とDNA定量検査結果などの証拠から医師がわいせつ行為をしたと認めた二審判決について、「審理不尽の違法があり、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するというべきである」と結論づけた。
東京高裁に審理を差し戻した最高裁は、専門的知見などをふまえてDNA定量検査の疑問点や信頼性を明らかにした上で、客観的証拠に照らして改めて女性の証言の信用性を判断するよう求めた。
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乳腺外科医の準強制わいせつ事件、最高裁が有罪判決を破棄差し戻し。DNA鑑定に「未だ明確でない部分がある」