新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」によって、世界で急速に感染が拡大している。日本でも2022年に入り本格的に広がり始め、感染拡大は第6波に突入したと見られている。今や、誰がいつ感染してもおかしくない状況だ。
ワクチン接種を済まし、責任ある感染予防対策をしていても、オミクロン株ではブレイクスルー感染してしまう人も増えている。そのため、羞恥心や罪悪感などを感じる人も増加している。
しかし、この冬に新型コロナウイルスに感染したとしても、それは決してあなたが間違いや身勝手な行動をしたとか、感染対策が不十分だったという訳ではない。
このコロナウイルスは、2020年当時よりもかなり感染力が強く変異しており、米CDC(アメリカ疫病対策センター)の指示や勧告を厳格に守ってきた人たちでも感染してきている。
オミクロン株は世界中で急速に感染拡大しており、布や不織布マスク、ソーシャルディスタンスの確保、そしてワクチン接種など、これまで頼りにしていた感染予防対策の多くでは、全ての感染を防ぐことができないだろう。もちろん、これらの対策はこれからも、感染拡大の減速や減少には繋がるし、ワクチンは重症化を防いでくれるはずだ。しかし、新型コロナへの接触は、もはや避けられない状況になりつつある。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症の専門家モニカ・ガンジー氏はハフポストUS版に、「人は感染症にかかるもの。新型コロナウイルスは感染力の強い呼吸器系のウイルスで、特にオミクロン株は多くの人が感染することになるでしょう」と述べた。
パンデミックが始まってから、新型コロナは常にスティグマが付きまとう病気だった。パンデミック中の大部分の期間、私たちは命を守るため、外出を自粛し、ステイホームを強いられた。もちろん、何もわからなかった初期は特に、こういった予防措置は必要だった。しかし、外出自粛が困難だった人たちに対する批判的な態度は、行動への倫理観を生み出した。
このような「ゼロか100か」のメッセージは、人々の基本的なニーズを無視するものだ。(もちろん、ステイホームしたくてもできないエッセンシャルワーカーを無視していることは言うまでもない)
ノースウェスタン大学医学部の助教授で心理学者のシーハン・フィッシャー氏は、「人間は社会的な生き物であり、他人と繋がっていたいという欲求が常にあります」と述べる。そして今、人々はかつてないほどその繋がりを求めている。
私たちはこれまで、旅行や大人数でのパーティーなど、特定の行動をとる人々をすぐに批判してきた。「私たちは最初から、発しているメッセージに羞恥心や罪悪感を加えてきたのです」とガンジー氏は話す。
その結果、新型コロナの陽性判定が、自分の性格や判断力のなさをネガティブに映し出しているように感じるのだ。これによって、誰かが新型コロナに感染した際、過剰な罪悪感と他者からの批判が生まれる、とフィッシャー氏は述べる。
オミクロン株は、私たちが外出し、人々の周りにいる限り、接触や感染のリスクはゼロにならないことを教えてくれた。香港の最近の研究では、オミクロン株は上気道でこれまでの変異株よりも70倍も早く複製されることが分かり、オミクロン株の感染力の強さが示唆された。
新型コロナの感染力が強まり、ただの布や不織布マスクでは多くのオミクロン株感染の予防効果が低いのではないか、と多くの疫学者たちは考えているようだ。このウイルスはマイクロ飛沫感染すると言われており、小さな粒子がしばらくの間、空気中を漂い、離れていても感染が起こり得る。ニューヨークで臨床心理士として働くジェシカ・スターン氏は、ワクチン接種済みの人々は、推奨される感染予防対策を全て実践したのに感染してしまったことに、なかなか納得できないようだという。
「このウイルスがこれほど簡単に蔓延しているのは、私たちのせいではありません。…感染力が強く、感染期間が長いから。それが理由です」
新型コロナにまつわるこのような羞恥心や罪悪感、スティグマには、大きな代償が生まれる。人々は不快な気分になると、少し回避行動に出る。これは公衆衛生の取り組みにネガティブな影響を与える可能性がある。
「そうなると、ネガティブなイメージを持たれたくないがないために、検査を受けることや、接触について知る必要がある人に説明することを避ける傾向があります」とフィッシャー氏は話す。
中には批判されることを恐れ、感染予防に必要な以上に自分を隔離してしまう人もいる。
「そうなると、自分の状況を正直に話したり、社会的・精神的な支援を得ることを更に恐れるようになってしまうのです。…パンデミックが2年に及んでいる今、最も不要なのが更なる孤独です」
この状況にいるのは自分だけではない、ということを認識するのは重要だ。パンデミックは全ての人たちに起きており、多くの人が不安を抱えている。
また、変えられないことを受け入れることも役に立つ。私たちは、感染力の極めて高いウイルスが、急速に広がる世界に生きているのだ。
「外出するたびに、ウイルスに接触する可能性があります。だからと言って、全ての行動を制限する必要はありません」とスターン氏は話す。他人が感染者をどう見て、どう批判するかもコントロールできない。病気になったからってあなたのせいではない。自分を責めず、ウイルスを責めよう。
感染症の専門家は、新型コロナを撲滅することはもはや現実的な目標ではないと言っている。このウイルスは根強く、風土病になるだろう。そして人々はウイルスと共存する生活に適応しようとし、努力している。
スターン氏は患者に、2つの真実を同時に認識するようアドバイスしているという。1つは、生活において合理的な範囲で感染予防に注意を払うこと。2つ目は、感染リスクが蔓延している世界では、自分のベストを尽くすことしかできないこと。
もし感染しても、自分を説得する必要はない。近い接触のあった人が検査や予定調整するために連絡する責任はあるが、自分の過去の行動を擁護したり正当化しようとしたりする必要はない、とスターン氏は述べる。
そして、感染者の数値はもはや、新型コロナの状況を示す最も信頼できる指標ではない。「重症化レベルの数値を指標にする方向にシフトする必要があります。特に、偏在するオミクロン株においては、そうしないと私たちは常に悪い状況にあると思ってしまいます」とガンジー氏は話す。もしくは、感染予防対策や外出自粛が十分ではなかったのではないか、と常に羞恥心と罪悪感を感じてしまうだろう。
最も重要なのは、感染リスクが最も高い人々、特に免疫不全や高齢者、ワクチン接種がまだできない子どもたちに注意を払い続けること。他の人を守るために責任ある行動をとることは、今でも大事なことだ。しかし、オミクロン株の高い感染力を考えると、自分がどこでどのように感染したのか、間違った行動を取ったのかと繰り返し自問することは無駄な行為だろう。
「それよりも、感染リスクの高い人たちに目をむけ、彼らを守ることを考えてほしい」とガンジー氏は語った。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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