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水島新司さん「ドカベン」伝説のプレーは甲子園で再現された。「ルールブックの盲点」とは

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野球漫画の金字塔「ドカベン」などで知られる漫画家の水島新司さんが1月10日、肺炎のため亡くなった。82歳だった。

水島さんの作品は多くの野球少年に影響を与え続けてきた。作品がきっかけとなり、甲子園で実際に生まれた伝説のプレーがある。ファンの間で「ルールブックの盲点」と呼ばれるものだ。

2012年8月13日の鳴門ー済々黌。写真は3回裏、済々黌・松永薫平(左)が内野安打を放ち先制する場面

■不知火も驚愕

「ドカベン」35巻にそのシーンはある。主人公・山田太郎率いる明訓高校とライバル・不知火守を擁する白新高校との一戦。明訓高校は1アウト満塁のチャンスでスクイズを敢行するも、投手への小飛球に。一塁走者の山田が飛び出していたため、一塁へ送ってアウト。ゲッツーという最悪の展開になったはずだった。

しかし、白新ナインがベンチに戻ると、明訓高校のスコアボードには「1点」が刻まれている。「ダブルプレイでチェンジじゃないか」と驚く不知火。

実は、山田がアウトになる寸前、三塁走者の岩鬼がホームインしていたのだ。この場合、守備側は一塁でとったアウトを三塁に「置き換え」しなければこの点は防げない。選手がファウルラインを超え、ベンチに戻ったことでアピールプレイの資格を喪失していたのだ。

ドカベンファンからは、このプレイは「ルールブックの盲点」と呼ばれる。実際にルールに欠落があるわけではなく、野球をプレイする選手側が見落としているケースが多いからだ。

このプレイは実際の甲子園で再現されることになる。

2012年夏の甲子園。鳴門高校(徳島)と済々黌高校(せいせいこう/大分)の一戦だった。7回裏・済々黌の攻撃。1アウト一、三塁の場面で、打球はショート頭上を襲うも、ショートがジャンプ一番、好捕する。飛び出した一塁走者を見たショートが一塁に送球し、アウトとなった。

しかし、この時もドカベンの岩鬼と同じように、三塁走者が先に生還。3対1となる貴重な追加点となり、試合は済々黌が勝利した。

当時のことを振り返る2019年7月31日朝日新聞夕刊「時代の栞」によると、三塁走者の中村謙太選手は、ドカベンを読んでこのルールを事前に知っていたという。さらにチームの監督も、一、三塁から無安打で得点できる作戦として選手に伝えていたという。中村選手はこう語っている。

「力以上の何か、水島(新司)先生や野球の神様のおかげでしょう」。

まさに、ドカベンが与えてくれた伝説のプレーだった。

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