日中戦争の最中、1937年に起きた「南京事件」をめぐり、犠牲者が30万人に及んだとされる中国側の見解に疑問を呈した専門学校の教師が除籍処分となった騒動で、SNS上でこの教師を庇う発言をした女性・李田田さんが精神病院に入院させられた。
中国メディアは「うつ病のため」などとしている一方で、本人は入院を拒否していたとの情報もある。
この騒動は、ネットに投稿されたある動画がきっかけだ。
12月14日、上海にある専門学校「震旦学院」で、女性教師が「南京事件」をめぐり、犠牲者が30万人に上るという中国側の見解について「データはない」などと疑問を呈した。この様子を捉えた動画が拡散され、2日後の16日、この教師は除籍処分とされた。
南京事件の犠牲者数をめぐっては、日本側と中国側で主張が異なる。日本の外務省は「非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難」という見方を示している。
中国のネット空間では女性教師への批判が相次いだが、擁護する側に立ったのが李田田さんだった。李さんはSNS・ウェイボーで「問題があるのは学生、除籍処分とした学校、官製メディア、そして沈黙する知識分子だ」と主張した。
その後、李田田さんは精神病院に入院させられた。12月23日までに中国メディアが明らかにしている。しかし、中国メディアでは「長期にわたるうつ病の症状があり、このところ病状が悪化しているから」だとする家族の声を伝え、強制的なものではないとしている。
一方で、アメリカ政府系の「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によると、李さんは入院を迫られていたようだ。RFAは、李さんのものだとするSNS上の投稿を掲載している。
それによると、地元の公安当局の担当者などが李さんの家を訪れ「精神に問題があるため病院で治療を受けなさい」と要求したという。李さんは拒否したが「ならば逮捕する」などと脅されたとしている。
李さんは投稿の最後で「社会に助けを求めたい。もし私が死んでしまえば、二つの命が失われる」と綴っており、妊娠している可能性がある。
中国では、過去にも反政府的な言動をした人が精神病院に送られたことがある。2018年7月、上海で習近平国家主席の写真に墨汁をかけた董瑤瓊(ドン・ヤオチョン)さんがその一例だ。
董さんは2020年1月に退院したが、顔はむくみ「お父さん」という言葉しか発せない状態だった。同年12月にはTwitterに本人とみられる動画がアップされ、政府の監視下にあると説明。「もうこんな生活は嫌です。死んだほうがましです。常に監視されているのはもう耐えられない」などと訴えていた。
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「南京事件」発言の教師を擁護した女性、精神病院へ送られる。本人はSOSを求めていたとの情報も 中国