アメリカ・ジョージア州で、ジョギング中だった黒人男性アマッド・アーバリー氏が銃殺された事件で、陪審員は11月24日、殺害に関わった3人の白人男性全員に有罪評決を言い渡した。
これはアメリカに人種平等の議論を巻き起こすきっかけになった事件の一つで、裁判の行方が大きく注目されていた。
3人の被告は9つの罪状で起訴され、アーバリー氏を撃ったトラヴィス・マクマイケル被告は、その全てで有罪を言い渡された。
父親のグレゴリー・マクマイケル被告は8つの罪、そして殺害時の様子を携帯電話で撮影していたウィリアム・ブライアン被告は6つの罪で有罪になった。
ジョージア州では殺人で有罪は最低でも終身刑と定められているため、3人は終身刑になると考えられている。
また、3人は連邦法のヘイトクライムと誘拐未遂の罪でも起訴されており、この裁判は2022年に連邦裁判所で開かれる予定だ。
事件が起きたのは、2020年2月23日。マクマイケル親子が、ジョギング中だったアーバリー氏をトラックで追跡して射殺し、その追跡の様子をブライアン被告が撮影した。
被告らは、アーバリー氏の窃盗を疑って追跡したのであり、自分達の行為は「私人逮捕」だと主張。
さらにトラヴィス・マクマイケル被告は、アーバリー氏と対峙した際にアーバリー氏が襲ってきたため、正当防衛のために発砲したと証言した。
その一方で、同被告は、追跡中にアーバリー氏に脅威を感じたことはなく、緊迫した状況を和らげるために発砲したとも証言し、検察側はその矛盾を指摘した。
さらに検察は、被告らが窃盗現場と主張した建設現場に、アーバリー氏の窃盗を示す証拠はなかった点も強調した。
建設現場に設置されたセキュリティーカメラの映像には、事件の数カ月前からアーバリー氏を含む複数の人が通過する様子が映っており、その中には白人の男性や女性も含まれていた。また、建物の持ち主は「窃盗の報告は一切なかった」と証言した。
検察は最終弁論で「被告らがアマッド・アーバリー氏を路上で襲うと決めたのは、アーバリー氏が道を走っていた黒人男性だったからです」と述べ、被告の偏見に基づく攻撃だったと訴えた。
一方、被告の弁護士は、アーバリー氏がマクマイケル親子らの追跡に「服従」しなかったことが問題だと主張していた。
陪審団は白人11人・黒人1人と白人が圧倒的多数を占めたため、裁判当初は「人種的な偏見が起きるのでは?」と懸念する声も出ていたが、被告側の罪が認められる結果になった。
アーバリー氏の母親のワンダ・クーパー=ジョーンズ氏は「こんな日が来るとは、夢にも思わなかった。だけど神は正義をもたらしてくださった」と記者会見で述べた。
また、アーバリー氏の家族の代理人ベン・クランプ氏は「アマッドの魂が、リンチをした群衆に打ち勝った」と述べた。
この評決の5日前の11月19日には、ウィスコンシン・ケノーシャで、警察の暴力に反対するデモ参加者の3人を殺害した白人のカイル・リッテンハウス氏に、無罪評決が言い渡されており、この1週間で、人種と正義について対照的な評決が出る結果になった。
アーバリー氏の死は、アメリカに大きな衝撃を与え、各地でで抗議活動が行われた。その後、ブレオナ・テイラー氏やジョージ・フロイド氏など、黒人が犠牲になる事件が続き、アメリカだけではなく世界中に、人種平等を求めるBLM運動が広がった。
また、ジョージア州議会は事件後、超党派議員の協力で私人逮捕に関する州の法律を撤廃した。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
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ジョギング中の黒人青年射殺事件で、白人の被告に有罪評決。「こんな日が来ると思わなかった」