黒人のジョージ・フロイドさんを殺害した元警察官のデレク・ショーヴィン被告に4月20日、第2級殺人罪、第3級殺人罪、第2級過失致死のすべての罪で有罪評決が言い渡された。
判決は8週間以内に言い渡され、ショーヴィン被告は数十年に渡って服役する可能性がある。
フロイドさんは2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスの路上でショーヴィン被告に首を押さえつけられた後に死亡した。
フロイドさんが亡くなった後、警察の人種差別や暴力への抗議活動が、アメリカだけでなく世界中に広がった。
警察官が有罪になるのは珍しい
ショーヴィン被告には殺人罪での有罪が下されたものの、アメリカで警察官が逮捕・起訴されることは非常に稀だ。
勤務中の警察官の発砲による死亡事件数を2015年から数えているワシントンポストによると、警察の発砲で毎年約1000人が死亡している。
しかしオハイオ州ボウリンググリーン州立大学の研究で、2005〜2019年の間に、殺人罪や過失致死で逮捕された連邦警察以外の警察官は104人だった。
104人の警察官のうちで有罪判決を受けたのは35人。15人が自ら罪を認め、20人が有罪評決を言い渡された。
また有罪判決を受けた35人のうち31人は、過失致死や無謀な発砲など、殺人罪よりも軽い刑だった。
こういったデータから、ショーヴィン被告の殺人の有罪評決が非常に例外的だったことがわかる。
なぜ警察官の責任が追求されないのか
警察官のほとんどが刑事処分を受けない大きな理由の一つは、人種差別だ。警察に殺害された黒人の数は、白人の2倍以上にのぼる。しかし陪審員が白人だと、黒人の被害者への共感が少なくなる可能性がある。
また、警察への公共の信頼が、起訴を阻む原因にもなる。警察に対する信頼はここ数十年で最も低くなっているものの、多くのアメリカ人たちが今でもなお警察官の説明を信用する傾向がある。警察を信頼している人が陪審員になった場合、有罪評決を下しにくい。
また、たとえ警察を熱心に支持しなくても、有罪評決を下さない場合もある。それは、警察に大きな法的権限が与えられているからだ。
最高裁判所は1980年代、自身の命もしくは他の人の命が危険にさらされていると感じた場合、警察官は危険を示す証拠がなくても武器を使ってもいいと判断した。
2014年に12歳だったタミル・ライスさんが、ティモシー・レーマン警察官に射殺された時、ティモシー・マギンティー検察官は「命の危険に脅かされていると信じる理由があった」と述べた。
ライスさんが持っていたのはエアガンだったが、マギンティー検察官は「銃が本物かどうかを待って確認してから発砲するのは、状況にそぐわない判断だった」と説明している。この事件で、大陪審はレーマン警察官の起訴を見送った。
一方、フロイドさんの事件では、ショーヴィン被告は自身が命の危険にさらされていたとは主張できなかった。
ショーヴィン被告は「息ができない」と訴えていたフロイドさんの首を9分29秒にわたって押さえ続けた。フロイドさんは武器を持っておらず、手錠をかけられた状態であり、身体的に誰かに危険を与えることは不可能だった。
また、周りの人たちが「フロイドさんが動かなくなった」と訴えた後も、ショーヴィン被告はフロイドさんの彼の体を離さなかった。そして反応しなくなったフロイドさんの命を、救おうともしなかった。
審理では、ミネアポリス警察のメダリア・アラドンド署長など、元同僚もショーヴィン被告に不利な証言をした。
スティーヴン・シュライヒャー検察官は審理の最後で「これは警察に反対するための起訴ではなく、警察を擁護するための起訴なのです」と述べている。
白人の警察官が黒人に対してありとあらゆる力を行使していいかのようなショーヴィン被告の行動は、決して珍しいことではない。
今回の評決のとても珍しかった点は、そういった行動に対して、警察官が責任をとらなければいけなくなったことを示唆しているということだ。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
Source: ハフィントンポスト
ジョージ・フロイドさん殺害で、警察官に有罪評決。この評決が非常にまれである理由