「お金について考えよう」と言われたら、どんな気持ちになるだろう。増やすための投資・NISA・iDeCo…。聞いたことはあるが、何から手をつけるべきなのかと迷う人に。ファイナンシャルプランナー(FP)の高山一恵さんに、初心者向けの「お金のきほん」を聞いた。連載第3回は、お金の「貯め方」について考える。
こんにちは、FPの高山一恵です。あなたはお金を貯めるのが得意ですか? それとも、苦手ですか?
マネー相談に訪れる人たちの傾向を分析してみると、この両者の「違い」は明らか。ズバリ「自分が何にいくら使っているのか」を認識しているかどうかです。つまり、1カ月当たりの食費や服飾費を聞かれたとき、自信を持ってスラスラと答えられるようなら、あなたはお金を貯めるのが得意である可能性が高いでしょう。
連載の前回で「収入の増やし方」について考えました。ただ不思議なもので、収入が多ければ多いほど貯蓄が増えるわけでもありません。
イギリスの歴史学者・政治学者、シリル・ノースコート・パーキンソンは、著書の中で「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」という法則を提唱しています。つまり、人間はお金があればあるだけ使ってしまう傾向にあるということ。「転職や昇給で収入が増えたのに、貯金額が一向に増えない!」という人は、この法則にハマってしまっているのかもしれません。
私はFPとして、さまざまな企業の社員研修で、資産形成などについて話す機会があります。実際、平均年収が1000万円以上の層と、500万円前後の層を比較すると、貯蓄は前者のほうが少ないケースも。仕事のストレスを解消しようと無駄な買い物をしてしまったり、多忙で自炊ができず、外食の回数が増えたり……。このように、収入の多さと貯蓄の多さは決して比例するものではないのです。
「お金が貯まる人」になるための基本。それは支出を「見える化」することです。
マネーフォワードが自社の家計簿アプリの利用者約1万6000人を対象に実施した調査(2020年)によると、アプリ利用で収支を見える化して家計が改善したと答えた利用者は5874人、1カ月あたりの改善額の平均は2万7848円に上るそうです。
FPとしても、家計簿アプリの活用はお勧めです。紙の家計簿をつけるとなると、買い物のレシートを集めて計算したり、一つひとつ分類して手書きで記入したりという作業が大変で、なかなか長続きしません。アプリならその手間を大幅に軽減できます。
オンラインでいつでもどこでも収支状況を確認できるため、「今月は既に使い過ぎているな」などと気付いたら、月の途中から出費を抑制する対応もしやすいのが魅力です。
デジタルで管理するのは気が進まないという人は、食費や服飾費、図書費など、自分が特にウォッチしたい費目を最低1つ決めておいて、手帳などに金額をサッとメモする習慣をつけるのもいいですよ。完璧な家計簿をつけなくても、意識は変わります。
それが習慣づいたら、「今月はこれだけの金額を使ったから、来月はこの予算内で収めよう」といったように、目標を立てられるのが理想です。
支出を「見える化」していくと、多くの人がぶつかる問題が「臨時出費」です。つまり、一般的な費目に分類するのが難しい支出のことです。
家電や家具などの大きな買い物をしたり、旅行、転居などで日ごろは発生しない出費があったり。「これは臨時出費だからしかたない」と、貯蓄からその都度持ち出していたら、いつのまにか残高がわずかになっていた――なんて経験がある人もいるのではないでしょうか。
名前の付けにくい出費も、「臨時出費」といった枠をつくって、予算をあらかじめ見積もっておくのがお勧めです。
例えば、応援したいアイドルや俳優、コンテンツにお金をめいっぱい注ぎ込む「推し活」。私の顧客の中にも、推しのアイドルグループに毎月の給与の半額以上を使っている男性がいました。
相談に訪れた当初は、毎月のように支出が収入を上回る状態でした。しかし、ライフイベントごとの予算を一緒に整理し、「推し活費用」の枠を作って予算を設定したら、みるみるうちに収支が改善しました。
具体的には、「推し活」専用の口座にあらかじめ割り出した予算額を入金。その口座にお金がなくなったら、今月の「課金」は控えるという仕組みにしたのです。一人で予算額を考えるのが難しければ、FPなどの専門家を頼るのも手です。
気合いだけで節制しようとしても、なかなか難しいもの。意志の力に頼らなくていい仕組み作りを心掛けていきましょう。今回紹介した方法に加え、貯蓄したい額は、給与が入金されたら別口座に自動で引き去って積み立てる流れにしておくのもいいと思います。
(取材・文:加藤藍子@aikowork521 編集:竹下由佳@kuboyu318)
高山一恵さんプロフィール
Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWebメディア「FP Cafe」や「Mocha(モカ)」を運営。全国での講演活動、執筆・相談業務も行う。著書は『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『はじめてのNISA &iDeCo』(成美堂出版)など。
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