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立憲はなぜ勝てないのか。再生のカギは、憲法論議と共産党に正面から向き合うことだ

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立憲民主党は10月末の衆院選で敗北し、枝野幸男氏が代表を引責辞任した。結党以来、「岩盤リベラル」層に軸足を置く戦略が、限界を迎えたと言える。

来年夏に参院選を控えるなか、次のリーダーは「中道」へ支持層を広げつつ、共闘パートナーの共産党とも正面から向き合わなければならない。立憲は再生できるのかーー?

代表選は11月19日告示、30日に投開票される。

立憲民主党の枝野幸男前代表=10月31日 、東京都港区

選挙前の政党支持率は「7%」

立憲は議席を109から 96に減らしたが、政権批判の受け皿になりきれないことは、衆院選前から予想はついていた。

朝日新聞の選挙直前(10月中旬)の世論調査では、立憲の政党支持率は7%とやや上向いたものの、自民党の5分の1程度。2009年に政権につく直前の旧民主党は32%で、自民の20%を上回っていたときとは大きく状況が異なっていた。

先進国の政治に詳しい同志社大学の吉田徹教授(比較政治)は選挙前、筆者のインタビューに、立憲の支持が広がらない理由をこう指摘していた。

立憲は『岩盤リベラル』にあまりに忠実すぎて、そこからウィングを中道の『無党派』に広げられないのが弱点だ

「岩盤リベラル」とは、憲法や安全保障など1960~70年代の対立軸を重視する確固たる左派層のこと。朝日新聞や毎日新聞がその理論を支えてきたが、読者の高齢化と発行部数の減少が象徴するように、その層の厚みは限定的なものになっている。

前回2017年衆院選では、結党直後の立憲がこの層に支えられ、55議席を獲得した。当時の民進党(旧民主党)は選挙直前、小池百合子氏率いる「希望の党」への合流を決めたが、安全保障法制に反対する議員らは「排除」され、枝野氏が立憲を立ち上げた。「原発ゼロ」などを訴え、公示前15議席から3倍超の躍進だった。

2020年秋には「希望」の後継である旧国民民主党と合流。衆院は100人を超えたが、立憲主導の合流だったため、政策は「岩盤リベラル」路線が踏襲された。その結果、今回の衆院選では中道票を十分に取り込めず、逆に日本維新の会や非合流組で結成した国民民主党が議席を伸ばすこととなった。

 

新リーダーに課せられる「支持拡大」と「共闘総括」

立憲が今後も政権交代を目指すのであれば、戦略の見直しが必須だ。その論戦の舞台となるのが11月末の代表選で、今のところ候補者として以下の名前が挙がっている。

▼ 泉健太氏  (47)衆院8期、党政調会長、元内閣府政務官

▼ 大串博志氏 (56)衆院6期、党役員室長、元首相補佐官

▼ 小川淳也氏 (50)衆院6期、元総務政務官

▼ 西村智奈美氏(54)衆院6期、元厚労副大臣  <以上50音順>

来年の参院選に向け、どうやって支持を拡大するのか。枝野氏が進めた共産党との共闘を、どう評価するのか。代表選はこの2つが主な争点になるだろう。

新リーダーに託される課題は重く険しいが、野党を取材してきた筆者から立憲が再生するための2つの提案をしたい。

 

①支持層を広げるカギは「憲法論議」

衆院選で議席を増やした維新と国民民主は11月9日、幹部同士が国会内で会談し、憲法改正論議などで協力することを確認した。

国会内で会談する日本維新の会の馬場伸幸幹事長(右から2人目)と国民民主党の榛葉賀津也幹事長(左から2人目)

国民民主(玉木雄一郎代表)は選挙後、同じ旧民主勢力である立憲との立ち位置の違いを強調しており、野党は左派の「立憲・共産」と中道の「維新・国民」の枠組みに大きく分かれようとしている。

立憲が支持層を「中道」へ広げるには、国民民主とのパイプを維持し、協力関係を再構築する必要があるだろう。その呼び水になるのが、これまで立憲が封じてきた「憲法論議」ではないか。

安倍・菅政権下では自民や維新が憲法審査会で議論を進めようとしてきたが、立憲は国民投票法の改正をめぐる手続き論にこだわり、ストップをかけてきた。「自民の土俵には乗らない」という駆け引きでもあったが、今回、国民民主が維新に接近したことで、路線の違いがより鮮明になった。

ただ、憲法9条に「自衛隊」などを明記する自民党案について、問題があるという認識では立憲と国民民主は一致している。自衛隊と集団的自衛権の関係をどう整理するか、その解決策は詰めきれていないが、立憲が議論に応じる姿勢を示せば、国民民主も一致点を探る対話に参加してくるだろう。

もともと立憲は綱領に「私たちは、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います」と掲げている。憲法の問題は9条だけではない。53条には臨時国会の召集規定に「抜け穴」があるため、これまで野党が招集を求めても、自公政権が応じない事態が繰り返されてきた。

憲法はなぜ守らなければならないのか。変えるなら、どこをどう変えるべきなのか。「未来志向」の憲法論議が深まれば、立憲につきまとう「批判ばかり」のイメージも薄まり、中道・無党派層の取り込みにつながるはずだ。

 

②共産との共闘、ビジョンの説明を

もう一つの論点が、野党共闘のあり方だ。

今回の衆院選では、立憲、共産、れいわ新選組、社民の4党が市民団体「市民連合」と政策協定を交わすことで、協力態勢を築いた。仮に政権交代が実現した場合、これらの政党で連立を組むことが想定されるが、共産主義を目指す共産党が参加することには、野党支持層でも抵抗感が強い。

そのため、共産の志位和夫委員長は「日米安保条約や自衛隊、天皇の制度の問題など、他の野党との相違点は野党連合政権(新政権)に持ち込まない」と説明。新政権への関わり方も「限定的な閣外からの協力」とすることで立憲と合意し、選挙戦にのぞんだ。

それでも、自民党からは「『(自公の)自由民主主義政権』か『共産主義(が参加する)政権』かの選択選挙」(自民党・甘利明氏のツイッター)などと攻撃され、防戦を強いられた。今回、立憲が比例区で議席を大幅に減らしたのは、新政権についての説明が足りず、「共産アレルギー」を払拭できなかったことが原因の一つだろう。

立憲民主党の枝野幸男前代表

選挙後、立憲内には共産との共闘を解消すべきだとの声も挙がっているという。だが、解消すれば、同一選挙区に複数の野党候補が立つ状態となり、議席をさらに減らすリスクがある。今回の衆院選で、野党統一候補に投じた有権者への「裏切り」にもなるだろう。11月10日の首相指名選挙では、共産は立憲の枝野氏に投票し、共闘路線を維持する姿勢をアピールしている。

公示前より減らしたとは言え、野党共闘で96議席を得た立憲の責任は、新政権の絵姿を明確にし、共産を含む共闘路線を有権者にきちんと理解してもらうことだ。

 

左腕で共産と肩を組みながら、右手で国民民主と手を握る――。

筆者が期待する野党の連携は、綱渡りのようなバランス感覚と包容力が求められる。しかし、それを実現してこそ、政権担当能力のある野党第1党と言えるだろう。次のリーダーは立憲だけでなく、野党全体をどう引っ張っていくか、その実行力が問われている。

(文:小林豪 編集:中村かさね

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立憲はなぜ勝てないのか。再生のカギは、憲法論議と共産党に正面から向き合うことだ

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