2021年でTVアニメ放送開始40周年を迎えた『うる星やつら』。漫画家の高橋留美子さんの代表作の一つで、国内外に今も根強いファンを持つ。そんな『うる星やつら』のトリビアをお届けしよう。
魅力的なキャラクターが数多く登場する作品だが、看板的な存在は宇宙人の少女「ラム」だ。鬼のようなツノが頭に生えて虎柄のビキニを着た姿、「だっちゃ」という特徴的語尾は、オタクカルチャーのアイコンとなった。2019年の東京ガスのテレビCMでは深田恭子さんがラムを演じるなど認知度は高い。
40周年で話題になっていることもあり、『うる星やつら』の原作を第1巻から読み返していると、奇妙なことに気づいた。第2話ではラムが一切登場しないのだ。
第1話「かけめぐる青春」で地球の運命をかけて、主人公の諸星あたると地球の運命をかけて鬼ごっこしていたラム。あたるの言葉をプロポーズを受けたと勘違いして「わかった!おまえがそこまでいうなら結婚してやるっちゃ!!」と言っていた。しかし、第2話「やさしい悪魔」は、あたると、そのガールフレンドの三宅しのぶのやり取りがメインで一切登場しない。第3話の「やさしい悪魔」ではラムが地球に帰ってきて、「夫婦が同居するのはあたりまえだっちゃ!!」と、あたるの自宅で同居するオチで終わる。
第2話になぜラムが登場しないのか。原作者の高橋さんのインタビューを読むと、真相が明らかになった。『うる星やつら』の原作漫画は1978年のスタート当時、週刊少年サンデーに計5回の集中連載だった。あたるを中心とした群像劇になる予定で、ラムは第1話のゲストキャラだったのだ。
ただ、高橋さんが第3話の構成を考えていたときに煮詰まってしまい「進退きわまって」第1話のラムを再登場させた……というのが真相だった。
高橋さんは以下のように証言している。
最初は5回連載の予定でしたから、描きたいキャラクターより、やりたいネタの方に重きを置いた。ラムは、第一回目のゲストキャラクターだったんです。だから2話目はでてこない。もう自分の星に帰っちゃったということで終わっていた。ところが3話目のコンテで煮つまりまくった。進退きわまってしまって、あの娘(こ)を使おう。と、再登場させたわけです。
(1988年2月発行の少年サンデーグラフィック・スペシャル[うる星やつら完結編]小学館より)
2話目にはラムは出てきませんしね(笑)。そのことからもわかるように、当初のヒロインはしのぶで、ラムはあくまでも脇役のひとりに過ぎませんでした。
(2019年12月発行の「漫画家本vol.14 高橋留美子本」小学館より)
「うる星」は当初5話短期連載の予定だったので、あたるが次々変な人に出会っていくオムニバスにするイメージで始めました。1話目はあたるとラムの話。その次は別の変な人、という具合にするつもりだったんです。それが、なんとなく3話目でもう一度ラムを出したら、世界観がまとまってきたので……。
(2013年5月にコミックナタリーに掲載された「高橋留美子画業35周年インタビュー」より)
もし高橋さんが第3話の構成がすんなりと決まって、ラムが登場しないまま話が終わっていたら、『うる星やつら』は全く別の作品になっていただろう。ラムを中心とした作品にはならず、今のような人気コンテンツになることもなかったのかもしれない。高橋さんの苦肉の策が、長寿コンテンツになるきっかけだった。
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『うる星やつら』ラムは原作第1話のみのゲストだった。それがなぜ看板キャラに?【アニメ40周年】