ハフポスト日本版と若い世代に政治や社会のニュースを発信している「NO YOUTH NO JAPAN」は、10月31日投開票の衆院選に向けて9政党(自由民主党、立憲民主党、公明党、日本共産党、日本維新の会、国民民主党、社会民主党、れいわ新選組、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)にアンケートを実施しました。
このアンケートに先立ち、読者の皆さんが政治に対して「特に積極的に取り組んでほしい社会課題」(選択肢から複数回答)について尋ねました。30歳未満の若い世代の関心の上位には「ジェンダー平等(選択的夫婦別姓など)」や「妊娠・出産・子育て」があがり、自由記述からは雇用などに対する将来不安を感じていることも伺えました。
政党アンケートには、全世代を通して関心の高かった「格差是正」などについても質問を加えました。その回答の一部を4回に分けて詳報します。まずは、U30世代で関心が最も高かった「ジェンダー平等」について取り上げます。
夫婦が希望すればそれぞれが結婚前の姓を名乗ることができる「選択的夫婦別姓制度」。最高裁大法廷は2021年6月、夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定を「合憲」と判断した。同時に、改めて「国会で議論し、判断されるべきだ」と議論を促した。
U30世代からは、選択的夫婦別姓制度を求める声が多数寄せられた。
・ずっと議論ばかりで進展がなく、結婚したくても婚姻届の提出に踏み切ることができない
・結婚適齢期といわれる年齢に近づいていますが、姓を変える必要があるなら結婚はしたくありません
(【選挙アップデート for U30】アンケートより)
司法の指摘や市民の声を、政治はどう受け止めるのだろうか。
「選択的夫婦別姓制度の導入」について「賛成・反対・その他」の選択肢のうち、自民以外の8政党は「賛成」と答えた。
「いつまでに導入を目指すか」という質問に対しては、「今すぐにでも導入すべき」(立憲)、「早期実現に向けて取り組む」(公明)など、できる限り早い導入を目指す考えを示した。
自民は「その他」を選び、最高裁の判断を踏まえつつ、「氏を改めることによる不利益に関する国民の声や時代の変化を受け止め、その不利益をさらに解消し、国民一人一人の活躍を推進してまいります」と回答した。
維新は「戸籍制度を維持しながら、旧称に法的効力を与える選択的夫婦別姓制度を提案」、N党は「反対意見が強い場合には、代替案としてフランスのパックス制度を参考にしたパートナーシップ合意へ婚姻に準ずるような税制度や相続制度などの保護を与える政策も、選択肢としては考えられる」とそれぞれ補足のコメントをつけた。
2021年3月に発表された世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」で、調査対象となった世界156ヵ国のうち120位と低迷した日本。中でも、衆院議員の女性割合の低さなど、政治分野の男女差が順位に影響した。
そこで、世界118の国・地域(2020年2月時点)で導入されている「クオータ制」の導入について、賛否を尋ねた。
クオータ制は、候補者や議席の一定数を女性に割り当てるもので、制度が導入されたところでは女性比率の向上を後押ししている。
制度について立憲、共産、国民、社民、れいわ、N党が「賛成」を選択。自民、公明、維新が「その他」を選び、考えが分かれた。
■「その他」を選んだ党の考えは?
自民 まずは、女性議員を増やすために改正された「政治分野における男女共同参画推進法」に基づき、議員や候補者に対するハラスメントの防止のための研修等を実施し、国会において女性が活躍しやすい環境を整えるとともに、地方議会の女性議員の増加を図る
公明 クオータ制についての議論を深めるとともに、ハラスメント対策など女性議員を増やすために有効な取組も進める
維新 女性議員の活躍は重要であるが、ミスマッチを防ぐためにまず環境整備が重要である
2018年に成立した「候補者男女均等法」では、「男女の候補者の数ができるかぎり均等となる」 ことを目指し、各政党に男女の候補者数について目標を定めるなどの取り組みを求めている。
今回の衆院選の候補者擁立に際して目標を定めたかや、この法律に基づいて努力したこと、具体的な成果についても聞いた。
具体的な目標設定に言及したのは、共産(国政選挙での女性候補比率50%)、国民(候補者のうち35%を女性とする)、社民(女性候補者50%擁立の目標を立てて60%を実現)。立憲は「2030年までのなるべく早い時期に3割をこえる目標を設定」と回答した。
今回の衆院選では、186人の女性が立候補。全ての候補者に占める女性割合は17.7%で、前回(2017)と比べて横ばいだった。
各党の女性候補者は次の通りだった(10月20日時点の総務省速報資料より算出、小数点第二位を四捨五入)。アンケートで言及した目標に届いたのは社民だけだった。
自民 9.8%
立民 18.3%
公明 7.5%
共産 35.4%
維新 14.6%
国民 29.6%
社民 60.0%
れいわ 23.8%
N党 33.3%
男女の賃金格差についても、是正を求める声が寄せられた。
・女性は正社員であっても男性より賃金が低くされていたり、非正規雇用の割合が大きいなど、結婚をして夫と家計を共にしないと生活が苦しい人が多いという現実がある
・男女の賃金格差の是正について、具体的にどのように動きますか
(【選挙アップデート for U30】アンケートより)
厚労省によると、男女間の賃金格差は男性を100とした場合、女性は74と依然として差があるままだ。
アンケートでは是正の重要性をどのように考えているか、「非常に重要」「重要」「あまり重要ではない」「重要ではない」と4つの選択肢から選んでもらい、是正策についても聞いた。
N党が「重要」、ほか8党が「非常に重要」と回答した。
是正策については、非正規雇用の女性が多いことを踏まえ、非正規雇用の見直しに言及した党が多かった。共産は「企業に男女賃金格差の実態の把握・公表と、その是正計画の策定・公表を義務付ける」と、企業の対応にも言及した。
■具体策についての回答(一部抜粋)
自民 非常に重要/男女間賃金格差の主な要因は、管理職比率や勤続年数の差異などが考えられる。➀改正女性活躍推進法の着実な施行、➁保育の受け皿の整備、育児休業などの両立支援体制の整備、➂採用・配置等における差別的取扱いを禁止し、法違反の場合の指導などに取り組む。
立憲 非常に重要/同じ価値の仕事でも非正規雇用などを理由に賃金が低くなることが多く、不公平。こうした処遇の改善を目指し、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部を改正する法律」(同一価値労働同一賃金関係)を制定。現行の法制度の不備を改める。
公明 非常に重要/女性にデジタル教育の機会を提供し、広く雇用に結び付ける「女性デジタル人材育成10万人プラン」(仮称)を提唱。「同一労働同一賃金」に基づく非正規雇用の処遇改善や、正社員化への支援を推進する。
共産 非常に重要/企業に男女賃金格差の実態の把握・公表と、その是正計画の策定・公表を義務付ける。ケア労働の賃金を引き上げる。非正規から正社員への流れをつくるとともに、非正規雇用の労働条件改善と均等待遇を進める。
維新 非常に重要/女性は非正規、パート労働者が多い。正規非正規の賃金格差を改め「同一労働同一賃金」を進める
国民 非常に重要
社民 非常に重要/パートタイム労働法、派遣法等に賃金格差の是正等を入れ強化する
れいわ 非常に重要/非正規雇用を多く生み出した派遣法や、実質、男女の雇用形態(一般職・総合職)を分けてしまった男女雇用機会均等法といった法制度を見直し、システムから平等な雇用を生み出す。育児・介護といった女性が無償労働を担っている部分も正規賃金での雇用を増やす必要がある。
N党 重要/待機児童ゼロ、男性の家事育児参画支援やスマート家電導入支援による女性の家事育児負担の軽減、女性の再就職やキャリアアップ・キャリアチェンジ支援、生理の貧困解消、女性の権利擁護、フェムテックの支援など。
(文・澤木香織 グラフィック・坪池順/ハフポスト日本版)
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