洋梨のラ・フランスが旬を迎えています。日本の生産量の約8割が山形県ですが、山形県では“山形ラ・フランス”の品質を維持するため、例年、“販売開始基準日”が決まっていて、今年は10月25日だそうです。詳しい話を山形県天童市のフルーツ農家、後藤広美さんに伺いました。
ラ・フランスは1800年代に発見されたフランス原産の洋梨の品種です。
「短い期間、フランスで栽培されましたが、他の洋梨に比べて実を付ける期間が1か月ほど長いうえに、病気にかかりやすく栽培に手間がかかるため、1900年代初頭にはフランスでは絶滅してしまいました。
現在、ラ・フランスを栽培しているのは、世界中でもフランスでの絶滅寸前に苗が持ち込まれた日本だけで、そのうちの約8割が山形県で栽培されています」(後藤さん)
ウェザーニューズで実施した「洋梨、食べたことある?」というアンケート調査でも、山形県は95%の人が「ある」と回答しています。この割合は青森県や秋田県と並んで全国トップです。
ラ・フランスは他の果物にはほとんどない“販売開始基準日”が設けられているそうですが、どうしてでしょうか。
「ラ・フランスは収穫してからエチレン処理や冷蔵庫での追熟が必要な果物です。適切な時期での収穫から追熟まで、梨がベストな状態になるように追熟期間が定められます。生育状況を見ながら、その追熟期間を計算して毎年、販売開始基準日が設けられています。
この基準日の設定は、県と出荷団体が県内各地の果実の品質を調査し、調査結果から予想される収穫期間と、蓄積されたデータに基づき予想されるもので、とても厳格です。
今年は昨年に比べて生育がやや早く、収穫が10月9日ごろから始まっているため、予冷品(冷蔵庫での追熟)が昨年より4日早く10月25日に決まりました。この販売開始基準日を守ることで、お客様に最も食べごろのラ・フランスが提供できるのです」(後藤さん)
食べごろのラ・フランスは香りも高く、トロッとして甘みが上品だそうです。ラ・フランスの最もおいしい食べ頃を見抜くにはどこに注目すればよいのか聞いてみました。
「ラ・フランスは追熟しても色が変わりにくいので見分け方が難しいのですが、完熟したものは独特のよい香りがします。そして、軸にシワが出てきて、軸の周りの皮にもシワがよってきます。こうなったらまさに食べごろです。
冷蔵庫で冷やしてから食べますが、完熟のラ・フランスは果肉が柔らかいので、リンゴのようにむくより、皮ごと縦半分に切ってスプーンで芯をくりぬき、果肉をすくって食べる方法がおすすめです。甘い果汁たっぷりでトロッとした果肉を存分に味わってください」(後藤さん)
栽培が難しいラ・フランスは山形県の生産農家さんの努力の賜(たまもの)だったのですね。
今年も販売開始基準日となりました。香り高いラ・フランスを食べられるのは今の時季だけです。ベストな状態のラ・フランスをおいしくいただいてみてはいかがでしょうか。
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