障害者ら乗降の駅アナウンス、「あり」は22社中11社。性被害の訴えで見直す鉄道会社も

車いすユーザーなどの乗り降りを連絡する駅構内のアナウンスを悪用され、障害のある女性たちがつきまといや痴漢などに遭う被害が報告されていた問題。JR旅客6社と大手民鉄16社の計22社のうち、アナウンスをしている事業者が11社に上ることが、ハフポスト日本版の調べで分かった。(承諾を得た場合のみアナウンスする3社も含む)

アナウンスは、車いすユーザーや視覚障害者らが電車に乗り降りしている最中に誤ってドアを閉めてしまう事故などを防ぐため、駅係員と乗務員が情報共有することを目的に一部の鉄道事業者で行われている。

障害者の当事者団体から、駅の放送を悪用した性暴力の被害報告を受け、国交省は7月、アナウンス以外の方法で情報伝達することを検討するよう全国の鉄道事業者に促していた。

22社のうち、車いす利用者などの乗り降りの駅アナウンスを行っている鉄道会社は

【JR東日本、JR西日本、東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京急、東京メトロ、相鉄】の11社。

このうち、「◯号車に乗車ご案内中」のように、利用者が乗る号車番号を放送しているのは小田急と東京メトロの2社だった。

 

 

東急は、利用者の承諾を得られた場合に限り、利用者が降車する駅名を放送している。断られた場合は、司令所を通じた伝達などで対応するという。

号車番号と降車駅は伝えず、「お客様ご案内中です」などと乗降中であることのみ放送しているのは、JR西日本、東武、西武、京成、京王(降車駅は暗号を用いて放送)、相鉄の6社。相鉄は、車いすユーザーらが乗降中であると特定されないよう、清掃などの時と同じように「係員対応中です」といった文言に近く切り替える方針。

京急は、原則アナウンスはしないが、先頭と最後尾の車両以外に乗車する場合、利用者の承諾を得た上で号車番号と降車駅名を放送する。断られた場合は、運輸司令を通して乗務員に伝えている。

JR東日本は、利用者の承諾を得た上で号車番号と降車駅をアナウンスしているが、いずれも「原則として放送しない方向で見直す」という。

駅の放送を現在行なっている鉄道会社の多くは、「アナウンスに代わる情報伝達の方法を検討中」と答えたが、いずれも具体的な時期は示さなかった。

一方、アナウンスを行っていないと答えた事業者は以下の11社だった。

【JR北海道、JR東海、JR四国、JR九州、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神、西鉄】

これらの鉄道会社は、駅係員と乗務員が直接口頭で連絡を取るなどの方法で障害者らの乗降を伝えているという。

 

「車両ドアのところの外側を向いて立っていたら、『いたいた!手伝ってあげるよ』と言いながら後方に回り、ぴったり迫りもぞもぞされ、荒い息をされた」

「『いた!手伝ってあげようと思って走ってきたよ。◯◯駅でしょ?』と言いながらかわいそうにと繰り返し足をさすられた」

これらは、認定NPO法人「DPI日本会議」が、障害のある女性たちからヒアリングをして判明した訴えの一部だ。駅のアナウンスを悪用されて性被害に遭ったり差別的な言葉を浴びたりしたとして、同団体に相談を寄せた車いすユーザーや視覚障害者の女性はこれまでに30人以上に上るという。

事務局長の佐藤聡さんは「『お客様ご案内中です』と放送されたことで、『ここにいた』と追いかけられたケースもあります。号車番号や降車駅を言わなくても、乗り降りが分かるアナウンスをすること自体が危険だと理解してほしい」と訴える。

本人の承諾を得られない場合は放送しないという対応を取る企業もあるが、佐藤さんによると、断りにくく意に反して承諾してしまったという声もあったという。

事故防止の観点から、すぐに放送を中止することができず、「対応を検討中」としている鉄道会社は多い。佐藤さんは「駅アナウンスがストーカーや痴漢の被害につながっていることが、団体のヒアリングではっきり分かっています。被害体験から、電車に乗ることが怖くなったと話す人もいます。訴えを真剣に受け止め、できる限り早くアナウンスをやめてほしい」と呼びかけている。

(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)

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Machi Kunizaki