「芸能人が投票呼びかけ」だけで終わらないために。発起人が思う、タブーを破り政治の会話ができる社会

衆院選(10月19日公示、31日投開票)を前に、小栗旬さんや菅田将暉さん、橋本環奈さん、二階堂ふみさんなど、14人の人気芸能人が出演し、投票を呼びかける動画「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」が、大きな反響を呼んでいる。

10月16日に突如プロジェクトが始動。YouTubeに投稿された動画は48万回以上再生され(10月21日時点)、賛同する多くのコメントが集まった。

芸能人の政治に関する発言がタブー視されがちで、時に批判されることもある日本で、人気芸能人たちが一斉に発信したのは「異例」の出来事だ。

どんな問題意識から生まれたのか。「VOICE PROJECT」発起人の関根光才さんと菅原直太さんがハフポスト日本版の取材に答えた。

 

「特に大きかったのは、小栗旬さんが参加を表明してくれたこと」

関根さんは普段は映像作家・映画監督、菅原さんは映像プロデューサーとして活動している。

日本における投票率の低さ、特に若者の投票率の低さは、選挙のたびに話題に上る。若者の「声」を政治に届けるにはどうしたらよいか。この状況に対し何かアクションができないか、7月頃から構想を練ってきた。

効果的なのは、影響力のある俳優やアーティストたちが映像で発信することではないかと考え、特に20〜30代の世代に影響力のある人を中心に、賛同してくれそうな人に声をかけていきました」(菅原さん)

出演者に渡した企画書では、日本の投票率の低さを示すデータを添えました。若者の投票率が低いまま世代交代していくとどんな未来が待ち受けているか?出演者のみなさんも、そういったことに危機感を抱いて参加を決意してくれたのではないでしょうか。

特に大きかったのは、小栗旬さんが早い段階で『これはやるべきですね』と参加を表明してくれたこと。上の世代からも下の世代からも信頼が厚く、『小栗さんが出るなら』と出演を決断してくれた方もいました。

小栗さんはとても真っ直ぐに、自分の考えや思いを発信すべきと考えていらっしゃる方だと思います。こういう方が投票について前向きに発信してくれれば、何かが変わるきっかけになるのではないかと思い、声をかけました。小栗さん自身も色々悩み考えながら参加してくださったと思います」(関根さん)

 

出演者の言葉を尊重。なぜ芸能人の政治的発言はタブー視されるのか。

出演者の中には、ONE OK ROCKのTakaさんや秋元才加さん、橋本環奈さんなど、これまでも選挙の際にSNSなどで投票を呼びかけてきた人もいる。

この『VOICE PROJECT』は、「いっさいの政党や企業に関わりのない、市民による自主制作プロジェクト」。映像の中では、14人がそれぞれの言葉で投票や政治との関わりについて自分の思いを語っている。

 

「政治のことなんて興味なかったし、それだけ僕はすごく幸せな環境で生きてることができたんだなっていうのを今になって実感しますけど」と率直に明かしたTakaさん。

コムアイさんは若者の投票率の低さを指摘し、菅田将暉さんは「そんなに少ないんだみたいなことは驚いたし、その中の1人でもあるよな俺、みたいな」と語った。

石橋静河さんは「昔って女性は投票権なかったですよね」と、女性に参政権がなかったことに触れ、「言いたくても言えなかった人がいっぱいいるのに、言えるのに言わないのはもったいない」と続けた。

撮影は9月上旬頃、出演者に対し関根さんがインタビューをする形で行われた。

最初は映像で話す内容について、ある程度雛形を用意していました。しかし、インタビューをする中で出てきた本人たちの言葉がとても胸に響くものだったので、それを尊重し映像を作っていきました」(関根さん)

YouTubeには1500を超えるコメントが寄せられており、その多くが好意的な反応だ。「影響力のある芸能人が選挙や政治について語ってくれるのを待っていた」とする声も多い。

日本では、芸能人が政治について発言することをタブー視する風潮が強くある。それは、普段俳優やアーティストと仕事をすることの多い関根さん、菅原さんも感じているという。

芸能や表現の世界にいる人が政治について発言すると、『俳優が政治に口を出すな』『音楽に政治を持ち込むな』などと揶揄されることが日本ではとても多いです。特に著名な人は影響力が強いからこそ言ってはいけないというのが『暗黙のルール』のようになっていた。

多くの俳優やアーティストの方は、作品を通してどう社会にメッセージを伝えていくか考えています。なのに直接的には発信できないことに違和感を抱いている方々もいたのではないでしょうか。

『VOICE PROJECT』は、特定の政党や主張の支持を表明するのではなく、ただ、自分たちの言葉で『選挙に行きませんか?』と呼びかけるものです。本来、何も臆することなく発言できるべきこと。にもかかわらずこれほどの反響があったのは、裏返せば、芸能人の方々も、そして一般の方々の間でも、『政治の話はタブー』という意識が強く根付いていたことの現れではないでしょうか」(関根さん)

動画は出演者のSNSでも拡散され、一時は「#わたしも投票します」がTwitterのトレンド1位に。中には、今回のプロジェクトには参加していないが、動画をシェアする芸能人もいた。

 

「この動画は『一歩目』にすぎない」

関根さんと菅原さんは、「この動画は『一歩目』にすぎない」と強調する。どれほど反響が多くても、実際に投票に足を運ぶかは、一人一人の有権者の意志に託されている。「投票率が1%でも上がれば」という強い願いを持ちながら、同時に、それがどれほど難しいことなのかも感じているという。

このプロジェクトで大事にしているのは『投票に行く』という民主主義の基本の部分。これで社会や政治ががらりと変わるわけではないと思っています。この動画を作った目的は、『芸能人が投票を呼びかけた』という一つの事象に止まることなく、ここからアクションが広がり、一人一人が当事者として投票で意思を示していくことです。

選挙や政治について語ること・考えることを誰かに任せるのではなく、自分が主体的に動いていく。例えば投票に行っていない家族や友人など身近な人を誘うとか、実はそういうことが一番勇気が必要で、極めて大事なことだと思います」(関根さん)

出演者の方々も、この反響の大きさを喜んでくれていますし、投票に足を運ぶ人が増えることを願っていると思います。社会全体が、政治に関して活発に会話でき、自分ごと・身近なこととして語れるようになってほしいです」(菅原さん)

(取材・文=若田悠希 @yukiwkt/ハフポスト日本版)

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「芸能人が投票呼びかけ」だけで終わらないために。発起人が思う、タブーを破り政治の会話ができる社会

Yuki Wakata