【グラフでみる】女性候補者は17.7%、自公は1割満たず。ゼロ〜1人は17県 衆院選2021

10月19日に公示された衆院選(31日投開票)では、186人の女性が立候補した。全ての候補者(1051人)に占める女性候補者の割合は17.7%で、前回の2017年(17.8%)と比べて横ばいになった。

候補者が男女均等になるよう政党に努力義務を課す「政治分野における男女共同参画推進法」が施行されてから初となる今回の衆院選。

政府は、2025年までに国政選挙の候補者に占める女性の割合を35%にする目標を掲げているが、実現のハードルは依然として高いままとなった。

 

政党別の女性比率は?

総務省の速報資料によると、政党ごとの候補者の女性比率は次の通り。(10月20日時点)

自民 9.8%

立民 18.3%

公明 7.5%

共産 35.4%

維新 14.6%

国民 29.6%

社民 60.0%

れいわ 23.8%

N党 33.3%

※小数点第二位を四捨五入

与党の自民・公明はいずれも1割に満たなかった。一方で、政府目標の35%を達成しているのは共産と社民のみだった。

 

女性候補ゼロは6県

総務省の20日時点の集計によると、全国の小選挙区のうち、女性の候補者がゼロだった都道府県は

【秋田、富山、石川、鳥取、高知、佐賀】の6県。

女性の候補者が1人の都道府県は

【福島、栃木、福井、長野、三重、滋賀、香川、愛媛、熊本、宮崎、沖縄】の11県だった。

 

女性の候補者がゼロまたは1人の都道府県は全体の4割近くを占める。

女性候補者数と、全体に占める女性候補の割合はどのように移り変わってきたのか?

小選挙区比例代表並立制が導入された1996年以降をグラフで見ると、女性の候補者数が低迷を続けていることがわかる。

この25年間で、女性比率が2割に届いた衆院選は一度もなく、1割台が続いている。

 

女性議員が少ない、何が問題?

なぜ女性の議員が増えるべきなのか。

過去を振り返ると、女性に関わる社会課題に関心を寄せる女性議員が政治的に影響力を持つポジションに立つと、従来取り組まれてこなかったジェンダー平等や女性の人権、女性に対する暴力防止などの政策が前進してきたことが分かる。

※参考:「日本の女性議員 どうすれば増えるのか」(三浦まり編著、朝日新聞出版)

女性候補者の割合が増加し、政党内の重要なポジションに女性議員がつくようになった1990年代から2000年代初頭にかけて、育児・介護休業法、男女雇用機会均等法改正、男女共同参画社会基本法、ストーカー規制法などが成立。DV防止法(2001年)は、超党派の女性議員たちが推し進めた議員立法として制定された。

さらに、女性議員と男性議員では、優先する政策課題に異なる傾向があるとする調査結果がある。

列国議会同盟が2008年に作成した報告書によると、女性議員は<子育て、同一賃金、育休、年金、リプロダクティブ・ライツ、身体的安全、ジェンダーに基づく暴力、貧困対策>といったテーマを優先する傾向があるという。

ジェンダーギャップと政治の問題に詳しいお茶の水女子大学ジェンダー研究所の濵田真里さん(東アジアにおける政治とジェンダー研究チーム共同研究者)は、「政治の場を男性ばかりが占めていると、女性が関わる社会問題が課題として認識されにくく、周辺化されてしまいます。子育て支援、少子化、貧困対策、賃金格差といった分野で長い間対応が遅れをとっているのは、女性たちが置かれた実情を知り、その訴えを政策に反映できる女性議員が政治の場に少ないからこそ」と指摘する。

 

「公平な選挙」の結果?

衆議院に占める女性議員の割合は9月時点で9.9。男女比は91と、大きくバランスを欠いている。

一方で、「選挙で公平に選ばれた結果だ」として政治の場に女性が少ないことを問題視しない考え方や、候補者や議席の一定数を割り当てるクオータ制は「逆差別だ」とする見方は根強い。

こうした意見に対し、濵田さんは「機会の平等があったとしても、選挙の結果でここまで男女差が出ている。本当にこれは公平な選挙なのかという疑いが出ざるを得ない」と話す。

「例えば、政党が公認候補者を選ぶ時にも、選ぶ側が男性であることが多い。そうした党内の意思決定者が、『女性候補では選挙に勝てない』など女性に対する無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を持っていた場合、女性は候補者としてそもそも選ばれにくいのです」

政治を志す女性にとっての「壁」。

立候補を断念した男女を対象にした内閣府の調査では、政治家として活動する上で課題となるものとして、女性は「家庭生活(家事・育児・介護等)との両立が難しい」「政治は男性が行うものだという周囲の考え」などの回答が男性に比べて割合が高かった。

家事や育児、介護の比重が女性に傾いており、立候補のハードルが高い実情がある。この他にも、政治を志す女性に対する周囲の否定的な見方や、家族の支援を得られにくいことなども、女性が立候補する際の障壁になっていると、これまでの研究で指摘されている。

「性別役割分業意識や性差別が今も社会に残っていて、立候補するときのスタート地点が男女で違うという大前提があります。その現実を共有した上で、暫定的な措置としてクオータ制や(候補者を男女同数にする)パリテといったポジティブアクションに取り組んでいくことが必要です」(濵田さん)

「女性がいないと選挙に勝てない」の危機感

超党派の女性議員たちによってクオータ制実現に向けての勉強会が立ち上がるなど動きはあるものの、制度の実現には至っていない。女性の候補者を増やすため、公認候補を送り出す政党の本気度を促すことが欠かせない。

だが今回の衆院選で、与党の候補者に占める女性比率は、他の政党と比べても低さが際立つ結果となった。

濵田さんは「『女性の候補者を増やさないと選挙に勝てない』という危機感を持つようになれば、政党も本気で動かざるを得なくなる」と強調する。

政党側の消極姿勢の背景に、報道するメディアのジェンダーギャップも絡んでいると、濵田さんは指摘する。

新聞労連の調査(2019年度、新聞・通信計38社が回答)では、女性の従業員の割合は19.9%、女性の管理職の割合は7.7%にとどまった。

「メディア業界で働く人の不均衡なジェンダーバランスも深刻な問題です。女性議員が少ないことを重要課題として認識せず、積極的に取り上げてこなかった点も省みなければなりません。メディア側が、政党に対してジェンダーギャップに本気で取り組んでいるかを突きつけていくことが求められます」

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Machi Kunizaki