SDGsを達成するには、「食料システム」を持続可能なものに変えなければならない――。そうした問題意識のもと、国連が主催する初の「食料システムサミット」が9月23、24日、オンラインで開かれている。150カ国超が参加し、日本からは菅義偉首相がビデオメッセージを寄せた。
「食料システム」とは、食料の生産から加工、輸送、消費に関わる一連の活動を指す。現状のシステムのままでは、世界の食料需給バランスが維持できず、環境破壊も進んでいく、という危機感を背景に、アントニオ・グテーレス国連事務総長がサミットの開催を呼び掛けた。
農林水産省の資料によると、世界の人口は2050年には2010年比で1.3倍に増える一方、食料需要は1.7倍の約58億トンにまで増えることが予測されている。限られた農地で、人口の増加率以上に食料の生産性を上げなければならない。
また、本来食べられるのに廃棄される「フード(食品)ロス」は世界で年間13億トン、日本では年間600万トンに上る。他方で、アフリカなどでは依然、食料不足で飢餓の問題が続いている。
環境面では、農地確保のための森林伐採のほか、牛のげっぷなど家畜から排出される温室効果ガスが問題視されている。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の温室効果ガスの排出量のうち、家畜(飼料含む)による排出が15%を占め、そのうち65%が牛肉と牛乳によるものという。
食料システムサミットでは、各国が自国の取り組みなどを紹介し、日本からは菅首相が3分弱のビデオメッセージを寄せた。
「飢餓の撲滅をはじめ、世界の食料をめぐる様々な課題に取り組む上で、食料の生産、流通といった一連の過程を『食料システム』として一体的にとらえていくことは、極めて重要」としたうえで、以下の3点を重視すると述べた。
①生産性の向上と持続可能性の両立
②自由で公正な貿易の維持・強化
③各国・地域の気候風土、食文化を踏まえたアプローチ
①においては、「イノベーションやデジタル化の推進、科学技術の活用」がカギになると主張。農水省が5月に策定した「みどりの食料システム戦略」を通じて、農林水産業の脱炭素化など、「環境負荷の少ない持続可能な食料システムの構築を進めていく」と語った。
②では、食料自給率の低い日本として、コロナ禍で農作物の輸出を抑制している国々を念頭に「食料の輸出入規制は、真に必要最小限なものに抑制されるべきである」と訴えた。
国連では今回のサミットを機に、「飢餓の撲滅」「食品ロス」「気候目標」「健康的な食事」「学校給食」「水産食品」「適切な労働と賃金」「農業生態学」の八つを重点分野として、参加国に取り組みを促していく方針だ。
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Source: ハフィントンポスト
2050年には食料需要が1.7倍に…。飢餓やフードロスへの危機感「食料システムサミット」が初開催