警視庁の警察官に、個人情報を同意なく第三者に提供されるなど違法な対応を受けたとして、南アジア出身の40代女性が東京都を相手取り、損害賠償を求めて東京地裁に近く提訴することが 9月14日、分かった。女性側の弁護団が明らかにした。
女性と弁護団は、女性の3歳の長女が警察官から「日本語しゃべれねえのか」などの差別的な言葉を浴びせられるなど不当な聴取を受けたとして、謝罪や処分を求めて7月、東京都公安委員会に苦情申出をしていた。
女性側の弁護団によると、女性は南アジア出身で、10年前に来日した。
訴えによると、事案があったのは6月1日。女性と長女は、2人で都内の公園を訪れていた。長女が滑り台で遊んでいたところ、近くにいた男性が、女性と長女に対して「息子が(長女に)蹴られた」と主張し、トラブルになった。女性は長女から目を離しておらず、長女は蹴っていないと否定した。だが、男性から「在留カード出せ」などと詰め寄られたという。
現場には計6人の警察官が駆けつけた。男性が外国人に対する差別的な発言を繰り返していたが、警察官らは制止しなかった。
女性は日本語でのコミュニケーションがほとんどできず、仲裁に入った30代男性の証言によると、一人の警察官が長女に対して「お前がどうせ蹴ったんだろ」「本当に日本語しゃべれねえのか」などと追及していたという。
女性と長女は公園で約2時間の聞き取りを受けた後、警察署への同行を求められ、署で再び聴取をされた。その際、警察官は女性と長女を引き離し、長女ひとりに対して複数の警察官で個室で聴取を行ったという。
聴取の間、女性の母語の通訳は用意されず、電話を介しての英語通訳のみだった。
署内では、担当の警察官は任意であることを説明せずに女性と長女の写真を撮影した。さらに、女性が同意していないにもかかわらず、女性の氏名や住所、電話番号といった個人情報を、公園でトラブルになった男性に対して警察官が提供したと訴えている。
警察署では約3時間にわたり事情聴取され、帰宅や休憩の要望も聞き入れられなかったという。
弁護団は、担当警察官らの一連の対応が、憲法の「公権力の行使に際し人種差別行為を行わない義務」に違反する行為で違法であり、母子が身体的・精神的な苦痛を受けたと主張する。「原告らが一貫して否定し客観的な証拠がないにもかかわらず、(トラブルの相手の)男性の言い分のみを信用し公平性を欠いた対応をとって差別に加担」したと指摘し、「母娘に対して、外国人をあたかも犯罪予備軍のようにみなす差別と偏見があったと考えられる」と訴えている。
女性側が不当な聴取を訴えた苦情申出をめぐって、警視庁はハフポスト日本版の取材に「個別具体の案件については回答を差し控えさせていただきます」として一切回答していない。
女性は取材に、「警察官は私たち親子を犯罪者のように扱いました。人生で最悪の経験で、非人道的な対応でした。心の平穏が奪われ、住所などを漏らされたことで強い不安を感じています」と述べていた。警察の言動によって、長女は不眠の症状を訴えているという。
女性の代理人の西山温子弁護士は、「警察という公的機関が、差別を黙認・加担するような対応をとれば、差別を助長する悪影響をもたらします」と強調。「差別の助長を食い止めるために、母子の事情聴取を行った警察官らの対応が間違っていることを明らかにし、その法的責任を問いたい」などとコメントを出した。
(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)
Source: ハフィントンポスト
「警察官に同意なく住所を漏らされた」南アジア出身の女性、東京都を提訴へ。「人種差別」と訴え