花森が2年ほど前から定期的に訪れていたという喫茶店の店主の女性は「優しい子です……」と言葉を詰まらせる。
「2年前くらいにふらっと店に来て、そこから月2回くらい来てくれるようになりました。窓際のテレビが見える席がお気に入りで、いつもアイスコーヒーを飲んでいましたね。訪れるのは決まって昼過ぎで、いつも1人でした。アメリカの友達がコーヒー豆を送ってくれたことがあったようで『たくさんもらったから、他のお客さんにも出してください』とコーヒー豆をお裾分けしてくれました。優しい子、という印象でした。
恋愛話になった時に、こんなおばさんばかりの喫茶店に来てないで彼女を作りなよって言ったら『いやー彼女作るのは無理だと思う。僕の彼女は宇宙人しかいないかな』って冗談のような本気のような雰囲気で言っていました」
花森容疑者が白金高輪駅で硫酸事件を起こしたのは8月24日の21時頃。最後に来店したのは、5日前の19日だったという。
「19日の15時くらいですかね。その日は、他のお客さんとカブトムシの話をしていて『育てていたカブトムシが2万円で売れたんです!』とすごく嬉しそうに話していました。普段は無口であれほど饒舌に話す姿は初めて見たので、自分の好きなことだとあんな顔もするのかと驚きました。他のお客さんに自分から積極的に話しかけるタイプではなかったですが、将来の夢を語っていたこともありますよ。専門的な話は難しくてさっぱり分かりませんでしたが、将来研究員や教授になるために大学で勉強を頑張っているようでした。『僕はサラリーマンは向いてないし、日本では自分のスキルや知識を活かせないから海外でやりたい』とアメリカや中国で働くことも考えていたようです」(同前)
「今にもお母さんを殴りそうな雰囲気が衝撃的で」
彼女をはじめ花森を知る人は事件について「信じられない」と声を揃えるが、ある近隣住民は過去に花森の凶暴性を目の当たりにしたことがあるという。
「彼が高校生くらいの頃だったでしょうか。昼間に、家の前の道路の真ん中で花森がお母さんに馬乗りになって首元を掴んでいるのを目撃したんです。今にもお母さんを殴りそうな雰囲気が衝撃的で、今でも鮮明に覚えています。私の姿を見るとバツが悪そうに家の中に入っていきましたが、誰かが通りかからなかったらどうなっていたんでしょうか……」
無口で大人しいという評判と、凶暴性を示すエピソード。一見矛盾する2つの要素はどうつながるのか。花森容疑者は事件について「今は話したくない」と認否を留保している。