「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」
世界中の研究者たちの知恵を結集した、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が8月9日に発表した第6次報告書では、気候変動が人間の行動に起因するものだと強い表現で結論づけた。
熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧ーー。人類に起因する温暖化に伴い、異常気象の発生頻度も高まっている。
最低限知っておきたい、報告書が指摘する5つのポイントは?
気候の現状について「大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている」と指摘している。
数十年の間に温室効果ガスの排出量を削減するための大胆な努力がなければ、「パリ協定」で目標としている気温の上昇幅(1.5℃及び2℃)を21世紀中に超えるという。
IPCCは、今後の気候変動対策や経済のあり方について5つの排出シナリオを検討。
「気候変動への対策を取らないまま、化石燃料依存型の経済活動を続ける」という最悪のシナリオをたどれば、工業化前と比べた世界の平均気温は2100年までに最大5・7度上昇する可能性がある。
持続可能な発展の下で2050年までに世界全体でカーボンニュートラルを達成した場合でも、2021~2040年に1.5度を一時的に超える可能性がある。
人間の活動が主な要因となり、陸地のほとんどで、1950年以降の大雨の頻度と強度が増加。温暖化が進めば、極端な雨期や乾期など異常気象が増大する。
強い熱帯低気圧の発生割合も過去40年間で増加している。非常に強い熱帯低気圧の発生割合とピーク時の風速は、温暖化の進行とともに上昇する可能性がある。
1950年以降、北半球の春の積雪面積が減少したのは、人間の活動が影響している。
氷河の融解は数十年から数世紀にわたって継続。特に、北極圏で永久凍土が溶けると、数千年にわたって蓄積され凍結された死んだ植物や動物からの炭素が解凍して分解し、より多くのCO2が大気中に放出されるため、温暖化が早まる可能性がある。
少なくとも1971年以降に観測されている海面水位上昇の主要因は人間の活動。2100年までに2メートル上昇する可能性も「排除できない」。世界平均の海面水位は、数百年から数千年もの間上昇を続け、上昇した状態がさらに数千年にわたって継続する。
「報告書は人類にとってのコード・レッド(非常事態発生を告げる合図)だ。警鐘は耳をつんざくほどであり、証拠に反論の余地はない」
報告書を受け、アントニオ・グテーレス国連事務総長は強い危機感を示し、各国に行動を呼びかける声明を発表した。
10月に開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開催地・イギリスからも、ボリス・ジョンソン首相が「破滅につながりかねない気候変動を人類が引き起こしていることが、これ以上ないほどはっきりと示された」と動画メッセージを発信。
報告書を作るワーキンググループにオブザーバー参加したWWFジャパンの小西雅子・専門ディレクター(環境・エネルギー)は、「もはや気候危機は遠い国の話ではない」と指摘する。
日本は、2030年までに温室効果ガスを46%削減することを目標に掲げているが、小西さんは「50%以上の高みを目指すことがより一層必要。半減目標を確実に実施していく施策を整えて、COP26に提出してもらいたい」と語る。
IPCCがこの度発表したのは、2013年に第5次報告書が公開されて以来、8年ぶりとなる第1作業部会の報告書。地球温暖化とその現在および将来の影響に関する最新の科学的見解が集積している。66カ国234人の科学者によって作成され、1万4000以上の科学論文が引用された。
Source: ハフィントンポスト
「警鐘は耳をつんざくほど」 人類が引き起こした温暖化、地球からの5つの悲鳴とは?【IPCC報告書】