父「今度、娘が結婚するだろう」
息子「ああ、相手は名家の御曹司だとか……。一度だけ会ったが、いけ好かないキザ野郎だった」
父「この結婚は我が社とあの名家が強い結びつきを持つ絶好の機会なのだ」
父「二人とも愛し合ってるが、政略結婚的な側面もあるということだ」
息子「うん」
父「だが、娘はインフルエンザにかかってしまい、とても式には出られなくなってしまったのだ」
息子「え、そうなの?」
父「……そこでだ。頼む、女装してくれ」
息子「なんでだよ!?」
父「ようするに、妹のフリして花嫁になってくれということだ」
息子「バカか! できるわけねーだろ! すぐバレるだろんなもん!」
父「いや、お前と娘は双子の兄妹……よく似ている。絶対バレない!」
息子「いやいやいや、素直に妹は病気だから式は延期しますでいいじゃねーか!」
父「式には政財界の大物も大勢集まるのでな……今さらそんなことはできんのだ」
息子「女装野郎に花嫁やらす方がよっぽどリスクあるだろうが!」
父「いやいや、私からいうのもなんだが、お前たちはそっくりだ。絶対騙せる!」
息子「声が低いし……」
父「お前あまり声変わりしてないし、ちょっと高くすればイケるだろ」
息子「体格も……」
父「お前は華奢だから大丈夫!」
息子「く、くそっ、人のコンプレックスを……」
父「いつだったか、妹と間違えられてラブレターもらったこともあるらしいな?」
息子「わーっ、やめろ! 思い出したくない!」
父「頼むっ、この通りだ!」ガバッ
息子(土下座……!)
父「お願いします! お願いします!」
息子「……わ、分かったよ。父親に土下座されて断るほど、俺も鬼じゃないよ」
父「ということは女装してくれるのか!?」
息子「ああ……やるよ」
父「ありがとう! ありがとう!」
息子「だな」
父「というわけでメイド君カモーン!」
メイド「はい」
父「息子を女装してやってくれないか」
メイド「かしこまりました」
息子「ごめんなぁ、こんなバカな仕事やらせて」
メイド「いえいえ、お気になさらず」
息子「た、頼むよ」
メイド「では、お嬢様と同じようなメイクを施します」
……
メイド「できました。鏡をご覧ください」
息子「……」チラッ
息子(妹!? ……い、いや俺か)
メイド「いかがでしたか?」
息子「あ、いや……バッチリだと思うよ」
息子(おいおいマジか……ここまで化けれるものなのかよ)
息子「やっぱり着なきゃダメ?」
メイド「はい、服装も含めて女装ですから」
息子「だよね……」
息子(カーテンしめて)ピシャッ
息子(女物のパンツに……スカート……ブラジャー……おっと、胸に詰め物……)モゾモゾ…
息子(最後に……ウィッグつける)ファサッ
息子(俺……何やってんだろ。誰か教えて)
父「おお、どんな具合――」
女装息子「どうだ?」
父「……!」
父「娘そっくりじゃないか、いけるいける!」
女装息子「……」
父「どうした、ため息ついて。嬉しくないのか?」
女装息子「嬉しいわけねーだろ!」
父「ん?」
女装息子「このこと、相手のあの御曹司は当然知ってるんだよな?」
父「知ってるわけないだろ」
女装息子「は!? 知らないのかよ!? 教えとけよ!」
父「新郎に“新婦の兄と結婚式して下さい”なんて頼むのはいくらなんでも非常識だろう」
女装息子「オヤジの非常識の基準が全然分からん……」
父「ま、とにかく式当日は頼むぞ! 当日は大安だし、大丈夫大丈夫!」
女装息子「不安しかないわ……」
息子(式場には早めに着いておく……)
息子(念入りに女装しとかないといけないからな)
息子「じゃあメイドさん、着付け頼むよ」
メイド「かしこまりました」
息子「苦労かけるねえ」
メイド「いえいえ、私も少し楽しいですし」
息子「楽しまないでくれえ……」
父「……!」
女装息子「どうした?」
父「キレイだ……」ウルッ
女装息子「な、泣くな! 泣きてーのはこっちの方だよ!」
母「ごめんなさいね……」
女装息子「お袋も泣かないで……悪いのは全部このオヤジだから」
女装息子(さて、次は……いよいよ新郎に会わないとな)
御曹司「おおっ、我が愛しき人よ!」
女装息子(相変わらずキザったらしいなぁ。こいつ苦手だわ)
御曹司「うんうん、美しいよ。どんな花や宝石も君には敵わない」
女装息子「ありがとう……」
御曹司「今日この日、君は世界一美しい女性であると断言できる! 僕は世界一の幸せ者さ!」
女装息子「もう、そんな……」
女装息子(全然気づいてないみたいだな……ちょっと妹が不憫に思えてきた)
母「どうかお幸せに……」
御曹司「お任せ下さい」
御曹司「……あれ?」
女装息子「どうしたの?」
御曹司「お義兄さんは……来てくれてないのかい?」
女装息子「え! ああ、あの人は……風邪ひいちゃって」
御曹司「そうか、僕たちの門出を見ることができないなんて……世界一お気の毒だ」
女装息子(大丈夫、すんげえ近くで見てるから)
パチパチパチパチパチ…
御曹司「さ、行こうか。皆に見せつけてあげようじゃないか。極上のショータイムだ!」
女装息子「うん」
オオッ…
「綺麗だ!」 「美しい……」 「お似合いだよ!」
女装息子(あんまり綺麗だの美しいだのいわないでくれ。死にたくなる)
御曹司「はい」
女装息子「はい」
神父「健やかなる時も病める時も、豊かな時も貧しき時も……愛し合うことを誓いますか?」
御曹司「もちろん……誓います!」
女装息子「……」
御曹司「おや、どうしたんだい? 幸せすぎてお口がバケーションかな?」
女装息子(妹を差し置いて誓っちゃっていいのかなぁ……まあいいや!)
女装息子「ち、誓います!」
神父「では誓いのキスを」
御曹司「はい」
女装息子「え」
御曹司「さあ、こっちを向いて。お互いの唇で永遠の愛を誓おう」
女装息子「え、え、え」
女装息子(ちょっと待ってくれぇぇぇぇぇ!!!)
女装息子(オヤジ……助けてくれえ……)チラッ
父「……」
父「……」グッ
女装息子(グッ、じゃねえええええ!!!)
女装息子(てめえ、式が終わったら覚えてやがれ! 式が終わった時がお前の死期だかんな!)
女装息子(ひいい、キザイケメンのツラが近づいてくる!)
女装息子(ダメだ……ここまできてキスを拒否することはできない!)
女装息子(ええい……やってやる!)
女装息子(キスしてやらぁ! いっそ舌でも入れたらぁ!)
女装息子(うおおおおおおっ!)
チュッ
女装息子「……ん?」
女装息子(この感触は……ラップ!? サランラップの切れはしだ!)
御曹司「……」
女装息子(キスする寸前、こいつが唇の間に挟んだんだ!)
パチパチパチパチパチ…
御曹司「ご覧、皆が僕たちを祝福しているよ。実に晴れやかな気分だ。屋内だけど青空が見えるよ」
女装息子(こいつ……まさか……!)
御曹司「ん?」
女装息子「お前……いつから気づいてた……?」
御曹司「もちろん最初からですよ」
御曹司「一目で気づいて、どういう事情か察しがつきました」
御曹司「この僕が……愛する人が別人になっていて気づかないはずがないでしょう。ねえ、お義兄さん」ニコッ
女装息子「……!」ドクンッ
女装息子(いや、待て待て待て! 今のドクンってのはなんやねん!)
女装息子(妹の旦那にときめいてどうする! 泥沼の三角関係になっちゃうぞ!)
女装息子(今の無し! 今の無ーし!)
御曹司「?」
メイド「お疲れ様でした、若様」
息子「ああ……本当に疲れたよ」
メイド「それにしても最後までバレずに済んで……本当によかったですね」
息子「いや、そんなことはないさ……」
メイド「え?」
妹「どうもありがとう……」
息子「お前こそもう大丈夫なのか?」
妹「うん、もう大丈夫。ごめんね、女装なんかしてもらっちゃって……」
息子「ハハ、まあ一生に一度ぐらいなら悪くない経験だよ。二度とやらねーけど」
息子「ああ、それと俺から提案があるんだが……」
妹「なに?」
御曹司「永遠の愛を……誓います!」
妹「誓います!」
パチパチパチパチパチ…
息子「よっ、おめでとう!」
メイド「おめでとうございます」
息子(俺の提案で、ごく少人数でではあるが、二人は結婚式をやり直した)
息子(妹だって、本当は自分で結婚式を挙げたかっただろうしな……)
息子「なぁに、俺としてもあんなメチャクチャな式はさっさと上書きして欲しいからな」
息子「それにしても……お前とは上手くやってけそうな気がするよ」
御曹司「はい、今後ともよろしくお願いします!」
妹「あら二人ともすっかり仲良くなって。今度はラップ無しでキスする気?」
息子「だ、誰がするか!」
おわり
引用元: https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1615719040/
Source: GAMAG
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