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SNSでサボテン乱獲が広まって砂漠スカスカ。密輸先には日本の名前も

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世界を股にかけて南米の稀少なサボテン1,035株を乱獲していた窃盗団が昨年イタリアで逮捕され、2度に渡る家宅捜索で押収された大量の株がこの春やっと故郷のアタカマ砂漠に返還されたというニュースがありました。

SNSでサボテン乱獲が広まって砂漠スカスカ。密輸先には日本の名前も

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  • author satomi
SNSでサボテン乱獲が広まって砂漠スカスカ。密輸先には日本の名前も
Image: Carabinieri via DW

銅価格の高騰で水道の蛇口が135個も消えたのと理屈は同じか…。

サボテンもワシントン条約で輸入が禁じられてから入手が困難になって価格が高騰中。そんななか世界を股にかけて南米の稀少なサボテン1,035株を乱獲していた窃盗団が昨年イタリアで逮捕され、2度に渡る家宅捜索で押収された大量の株がこの春やっと故郷のアタカマ砂漠に返還されたというニュースがありました。それに絡めたNY Timesの乱獲特集を読んでたら、主な輸出相手国の筆頭に日本の名前が出てきてガーン…となりましたよ。

レア種サボテンマニア=日本というイメージは今も根強いようです。

押収したサボテンは時価1億円超、主な輸出先はアジア

蛇口の銅は高騰したといっても1kgかき集めて1,000円そこそこだけど、サボテンはブラックマーケットで1億円を超える高値をつけることもしばしば。それが砂漠にゴロゴロ転がっているのだからダイヤモンドの盗掘みたいな状況になるのは想像に難くありません。

今回捕まった有名コレクターのAndrea Piombetti容疑者(40代男性)は、2013年にもチリ産サボテン600株を押収された常習犯です。今回も大半はアタカマ砂漠のものでした。チリに7回渡航してルーマニアとギリシャに箱詰めで送って、そこからイタリアに取り寄せて鍵つきの温室で栽培しながら主にアジアに売り飛ばしていたみたい。押収に立ち会った係員も「こんなに山のような不法輸入サボテンは見たことない」と呆然です。闇市場で総額120万ドル(約1億3200万円)相当にもなるのだから無理もありません。

1年がかりの返還作業には、世界の乱獲の中心地アタカマ砂漠を救え! という願いをこめて「アタカマ作戦」という名前がつき、イタリアの「種の多様性保護協会(Asociazione per la Biodiversitá e la sua Conservazione)」、国際自然保護連合(IUCN)、チリのコンセプシオン大学が共同体制で進めてきました。鉄壁の布陣ですが、もともとの保存状態が悪かったらしく、押収した1,035株のうち107株は腐食。84株はミラノの植物園が研究目的で手元に残し、残る844株については空輸→隔離→移植というステップを踏んで返還したとIUCNは書いています。大変な手間だ…。

  • 憧れの地方移住。どんなサポートがあるんだろう?

アタカマ砂漠が狙われる理由

チリ北部の太平洋岸に南北に1,000km続くアタカマ砂漠は、地上でもっとも降水量が少ない「純砂漠」。サボテンはほぼ海面から吹き上げる霧だけで生きています。特に南部はコレクター垂涎のコピアポア、エリオシケなどの希少種が豊富で、密輸中も水やりの心配がないのが餌食になる原因。

押収されたサボテンのなかには樹齢1,000年を超える株もありました。世界で一番過酷な不毛の地で、やっと生きる術を見つけて少しずつ少しずつ成長したサボテン。その果肉と花を虫が食べ、虫を鳥や爬虫類が食べ、それを動物が食べて豊かな循環が生まれているのに…。いくらお金になるからって根こそぎ採掘しちゃったら、周りのいきものすべてが死に絶えてしまうじゃないですかね…。

種の多様性・保護協会のAndrea Cattabriga会長も「何百年という年月をかけて地球上もっとも過酷な環境に順応した生命体をただの売り物扱いにして、こんなかたちで終わらせるなんて」とNY Timesに語り、悲しさをにじませていますよ。植物は動物ほど注目されなくて自然に存在するのが当たり前と思われがち。これを英語で「Plant Blindness」というわけですが、アタカマ作戦で少しでも目が向けばと関係者は期待を寄せています。

SNSで国境を越える違法なサボテン売買

今はSNSの個人売買が広まって、国境を越えて情報とモノがシェアされていて、わけても一番人気はサボテンと多肉です。世界に1,500種近くあるサボテンのうち30%以上は絶滅の危機に瀕していて、その半数近くは無節操なコレクションによるもの。「ひとたび違法採掘されると、サボテンは公然と売買される。保護された野生種が日本の店頭に並んだり、世界中の業者がeBay、Instagram、Etsy、FacebookでこれをPRするといったことが大っぴらに行なわれているのだ」とNY Timesは報じていますよ(いちおうその後の文章には「違法な取引きを牽引してきたのは米・英・欧・日だったが、最近は韓・中・タイにまでその動きが拡大している」とあるので日本だけがレアものに目がくらんだマニア立国じゃないことがわかりますけどね…)。

日本の名前はしょっちゅう出る

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Image: Michigan State Univ

稀少種の密輸を憂慮する2019年の記事に出ているのも、ご覧のように、日本のサボテン愛好家がインスタで広めた長野の希少種の売り場を捉えた写真です。タイトルは「今の密輸業者はSNSを使ってチリ太古の植物を売っている」とあるので、あたかも日本で売買される希少種すべてが密売品のような印象を与えます。園芸は日本のお家芸なので、なかには輸入禁止前に合法的に入手したサボテンを手塩にかけて育てたものや、合法的ルートで欧州などから実を買って育てたものもあると思うのですが、その辺の割合はどうなのかなあ…。

サボテン本の著書を複数お持ちのshabomaniac!さんのブログによると、闇ルートのサボテンも日本には合法と偽って売られることもあるそうな。そうするとトラッキングは不可能ってことなのか…。世界の保護団体も正確な数は把握していないもようです。

SNSでサボテン情報シェアするときは気をつけよう

日本のお家芸といえば、旅ルポも実は地味にすごくて、情報の精度においては世界でもダントツだと個人的には思っています。でもこれがサボテン原産地を訪ねる旅になると非常にまずいことに…。SNSには今や自動翻訳機能も実装されていますし、写真や動画はそもそも言葉の要らない世界ですからね。ご丁寧にGoogleマップで道順なんか載せた日にゃ、次の日には世界の果てで最後の生き残りのサボテンが根こそぎ消えてるわけですよ。

Shabomaniac!さんもこう警鐘を鳴らしています。

実際、いまインスタなどをみても、コピアポアの山木をアップしている欧米人はほとんどいません。のんきな人がたまに“現地球”をアップして、意識の高い人に発見されると、「自生地から盗んだ!」「泥棒!」などとコメント欄がプチ炎上状態になっています。野生コピがたまらなく魅力的なことは百も承知ですが、今後は入手はおろか、だんだん品評会に出すのも憚られるようになっていくのではないでしょうか。私も十年前くらいまで、KKさんから“サイテスつき”の山木を輸入して大切に栽培していますが、これから先の入手はもう無理でしょう。というか、この十年で大きくカルチャーが変わり、セクハラにパワハラ、人前での喫煙が “ありえないこと” になったのと同じように、稀少な野生植物の採集は社会的に容認されなくなってきています。自然環境への配慮がこれだけ語られるなか、今後は時代の要請としてちゃんと適応しなければ…と思っています。 (「今年もコピアポアを撒く理由」より)

そんな次第なので、みなさまも保護種サボテンの違法取引には十分注意しましょうね。店頭やWebで原種を自慢したりPRするときには、海外の人が盗掘品と誤解しないように実生と明記したり、合法な入手ルートを公開するなどの配慮が必要。ただの見物でも、こんな風に使われてしまうのだから。

Source: NewYork Times


Source: ギズモード・ジャパン
SNSでサボテン乱獲が広まって砂漠スカスカ。密輸先には日本の名前も

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