湿度と気温が高くなる梅雨の時季、熱中症予防対策もあってエアコンを使う場面が増えてきます。とくにじめじめした室内を快適にしようと「除湿」のスイッチに手が伸びがちですが、「『冷房』じゃないのに室温が下がって寒い」と感じる人も多いのではないでしょうか。
なぜ除湿で部屋が寒くなるのでしょうか。冷房との上手な使い分けとあわせて、ダイキン工業コーポレートコミュニケーション室広報グループの重政周之(しげまさ・ちかし)さんに伺いました。
除湿と冷房の機能はどう違うのでしょうか。
「エアコンの冷房は、部屋の空気の 『温度』を下げることを第一に考えた機能です。暑い部屋から熱を追い出して、 部屋を涼しくします。一方、除湿は部屋の空気の『湿度』を下げることを第一に考えた機能になります。じめじめした部屋から水分を追い出して、空気を“さらさら”にするのです。
空気がたくわえられる水分の量は、空気の温度によって決まっています。空気の温度が高いと、たくさんの水分をたくわえることができます。ところが、空気の温度が下がると水分をあまりたくわえることができなくなり、空気中にいられなくなった水分は、水滴としてあふれ出ます」(重政さん)
暑い日に冷蔵庫から冷えたジュースを出すと、コップのまわりにびっしり水滴が付きますが、あれは空気が冷たいコップに触れて温度が下がったため、空気中にいられなくなった水分なのだそうです。
「エアコンの除湿も冷たいコップと同様の機能で、空気中の水分を集めています。まずエアコンが湿度の高い部屋の空気を吸い込み、 熱交換器で熱を奪って温度を下げます。すると空気中にいられなくなった水分は水滴となって熱交換器に付着します。
その水分を集めてホースで部屋の外に排出し、水分を取ったあとのさらさらの空気を部屋に戻します。これをくり返すことで、部屋の水分をどんどん排出して、湿度を下げるのです。この際に室温が下がるため、冷房でなく除湿でも肌寒さを感じることがあるのです」(重政さん)
すべての除湿が室温を下げるわけではなく、室温を下げないタイプもあるそうです。
「除湿には主に『弱冷房除湿』と『再熱除湿』という2つのタイプがあります。水分を外に追い出すしくみは同じですが、部屋に戻す空気の温度が違うのです。弱冷房除湿は、水分を集めるために温度を下げた空気を、そのまま部屋に戻します。弱い冷房をかけているのと似た状態なので、肌寒く感じることがあるのです。
再熱除湿は、温度を下げた空気を適温に温め直してから部屋に戻します。除湿中も部屋の温度が下がりづらいところが、弱冷房除湿との大きな違いです。ただ、メーカーによって異なりますが、一般的な再熱除湿は空気を温め直す分、やや多めの電力を消費します」(重政さん)
では冷房と除湿をどのように使い分ければ良いのでしょうか?
「温度を下げたいときには冷房を、湿度を下げたいときには除湿をというように、目的に応じて使い分けましょう。除湿のなかでも、弱冷房除湿は弱めの冷房と同じく温度を少し下げてくれるので、暑くて湿気も気になるときには有効です。
一方、再熱除湿は部屋の温度が下がりづらいので、湿気は多いけどそこまで気温が高くないときなど、体を冷やしたくない人には再熱除湿がオススメです」(重政さん)
自宅のエアコンが再熱除湿か弱冷房除湿かを見分けるにはどうしたら良いのでしょうか?
「ご自宅のエアコンや、購入を考えているエアコンに搭載された除湿機能がどんなものなのか、まずはカタログや取扱説明書をご覧いただきたいと思います。
また、最近では、寒くなりづらい弱冷房除湿が登場したり、状況に応じて弱冷房除湿と再熱除湿を自動で使い分けて室温の低下防止や省エネを実現する新たな方式も登場しています。冷房との違いが分かりづらいと思われがちな除湿ですが、実は様々な工夫が盛り込まれはじめているのです」(重政さん)
それぞれの特徴を理解して、梅雨から真夏にかけての日々を快適に過ごしましょう。
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Source: ハフィントンポスト
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