夫「いいけど……こんな時間にどこ行くんだ?」
妻「ホストクラブ!」
夫「は?」
妻「行ってきまーす!」
バタンッ
夫「……」
夫(おいおい……。出かけるのはいいけど、いくらなんでもホストクラブって……)
2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/06/02(水) 20:34:08.819 ID:3ZgjX8sG0
妻「出かけてくるね」
夫「どこに行くんだよ」
妻「決まってるでしょ、ホストクラブ!」
夫「ちょっと待っ――」
妻「すぐ戻るから!」
バタンッ
夫「またかよ……」
同僚「ため息なんてついてどうした?」
夫「妻がホストクラブにハマってるっぽいんだ……」
同僚「え、ホスト!?」
夫「週に一回ぐらい通ってて……どうしたらいいか……」
同僚「そりゃもちろん止めるべきだろ。ホスト遊び繰り返してたら、下手すりゃ破産しちまうぞ」
夫「だよなぁ」
同僚「なんだったら一緒に行って、ホストに『二度と妻に近づくな!』ぐらいいってやった方がいい」
夫「そうだな……そうしてみるか!」
夫「またホストクラブか?」
妻「うん」
夫「俺もついてっていいか?」
妻「いいよー! 大歓迎!」
夫「え?」
妻「実はそういってくれるの待ってたんだ! 一緒に行こうよ!」
夫「う、うん」
夫(これは予想外の事態になったぞ……)
妻「もうすぐだよ」
妻「あ、あそこ!」
夫(きっとド派手な外見のビルなんだろうな……)
夫「ん?」
『ホストクラブ』
夫(暖簾に『ホストクラブ』とは書いてあるけど……)
夫「これ屋台じゃん!」
妻「また遊びに来ちゃった。今日は旦那も一緒」
おっさん「おう、よく来てくれたね」
夫「えええ!?」
おっさん「ん?」
夫「いや、あなた……どう見てもホストっていうか、屋台のおっさんにしか見えないんですが」
おっさん「なぁにいってる、俺はホストだよ」
夫「いや、ホストってもっとこう、スーツ着てて、髪を染めたりしてる若い男でしょ?」
おっさん「おいおい、兄ちゃん、辞書引いたことあるかい?」
おっさん「『客をもてなす主人』『クラブなどの接客係の男性』ってな」
おっさん「ここは一応クラブだし、俺は接客してる男だ。つまりホストでいいんだ」
夫「……拡大解釈にも程があるような」
妻「ま、いいじゃない。飲みましょ、ね?」
夫「う、うん」
夫「どうも……」グビッ
夫「うっす! これだいぶ薄めてるでしょ! ほとんど水じゃない!」
おっさん「分かってねえなぁ、この薄さがいいんじゃねえか」
妻「そそ、薄めてあるおかげで、ベロンベロンに酔わなくて済むしね」
夫「お前もだいぶこのおっさんに毒されてるな」
おっさん「これがエコってやつよ!」
夫「ずいぶんとまぁ、提供側に都合のいいエコだことで」
おっさん「――ってことがあってよ」
夫「いやー、おやっさんなかなか話上手いねえ」
妻「でしょ? だから私もついつい通っちゃって」
おっさん「おっとそろそろいい時間だ。帰った方がいい」
妻「えぇ~、もっとおじさんと話したい」
夫「ああ、日が変わるくらいまでいたいよ」
おっさん「深酒はやめときな。ホスト通いは名残り惜しいぐらいでちょうどいいのさ」
夫「分かったよ……で、料金は?」
おっさん「そうだな……夫婦で1000円でいいや!」
夫「え、結構食べたり飲んだのにそんな安いの!?」
おっさん「儲けるためにやってねえからな」
妻「どうだった?」
夫「うん、なかなか居心地よかった。いいホストクラブじゃないか」
妻「でしょ?」
夫「だけど一言いいたい」
妻「なに?」
夫「もっと早く俺も連れてってくれよ!」
妻「ごめんごめん」
夫「すみません……」
上司「こんなミス、今時の新卒社員だってしねえぞ!」
上司「お前がこの会社に入れたのは、よっぽど運がよかったんだろうな!」
夫「くっ……!」
夫(こういう日は……ホストクラブに行こう!)
夫「ありがとう……」
おっさん「ミスしない人間なんかいねえんだ! それをネチネチ責め立てる奴はろくなもんじゃねえ!」
夫「そうですよね……」
おっさん「それに運がいい? 上等じゃねえか」
おっさん「いくら仕事ができたって運が悪けりゃどうにもならねえんだからな」
おっさん「俺は運だけで会社に入ったって開き直りゃいいんだ!」
夫「おやっさんと話してると、みるみる気力が回復するよ」
妻「今日ホストクラブ行かない?」
夫「いいねえ、俺も行きたいと思ってたところだ」
妻「こんばんはー!」
夫「どうもー!」
おっさん「お、夫婦そろって来たかい。いらっしゃい」
ワイワイ…
夫「いいぞー!」
妻「……」グビグビ
妻「ぷはっ!」
客A「いい飲みっぷりだ!」
客B「ヒューヒュー!」
夫「まあ、ほとんど水だけどね」
おっさん「濃い酒をイッキなんて体に悪いからな。もう一杯いくか?」
妻「いきまーす!」
妻「ドンペリタワー!」
おっさん「よーし、ドンペリはねえが、焼酎タワーといくか!」
夫「イェーイ!」
おっさん「コップを積み上げて、と……」
おっさん「……」
おっさん「やっぱり勿体ないし、普通に飲まない?」
夫「うんうん」
妻「そうしよう」
おっさん「ん?」
夫「おやっさんは結婚してるの?」
おっさん「昔な……」
妻「へぇ~、してたんだ! ちょっと意外!」
夫「意外は失礼だろ。だけど、昔ってのは?」
おっさん「離婚したんだ。バツイチってやつ」
夫「そうだったんだ……」
おっさん「最近、娘から連絡来て、『一緒に暮らさないか』なんていってくれてるんだが……」
妻「いい娘さんじゃない!」
おっさん「俺にそのつもりはねえや。今さら世話にはなれねえ」
妻「なんで? 一緒に暮らせばいいじゃない!」
夫「よせよ。人にはそれぞれ事情ってもんがあるんだ」
妻「そうだね……ごめんなさい」
妻「今日はいいニュースがあるの」
夫「どうしたの?」
妻「赤ちゃん……出来たみたい」
夫「ホントか!」
妻「うん、三ヶ月だって……」
夫「よーし、さっそくおやっさんに報告に行くか!」
妻「うん!」
夫「ありがとう、おやっさん」
おっさん「やるこたぁやってたんだな、お前さんたち」ニヤッ
夫「そりゃあ夫婦だし……」
妻「今日は飲むわよ~!」
おっさん「おいおい、妊婦が酒なんて飲んじゃダメだ。子供がアル中になっちまう」
おっさん「今日からは禁酒して……水にしな、水に! ほれ!」
妻「は~い」
夫(頑張れ……! どうか無事に……!)
おぎゃあ、おぎゃあ……!
夫「!」
医者「母子ともに健康です」
ナース「元気な娘さんですよ!」
夫「よくやったな!」
妻「うん!」
夫「うん、これで俺も一児の父親だよ」
おっさん「子供が出来たなら、そうそう奥さんと喧嘩したりすんなよ」
おっさん「俺みたいになっちまうからな。親同士が別れちまうってのはやっぱ悲しいもんだ」
夫「おやっさん……」
おっさん「湿っぽい話はやめやめ! 今夜は飲め!」
夫「うん!」グビグビ
夫「……うっす! 相変わらずの味だ」
おっさん「たとえめでたい日でも酒は薄くするのが俺のモットーよ」
赤子「キャッキャッ」
おっさん「おお~、可愛いじゃねえか。こりゃべっぴんになるぜ」
夫「べっぴんって久しぶりに聞いたな」
妻「ちょっと抱いてもらってもいい?」
おっさん「ああ、いいと……うっ!」
夫「おやっさん!?」
おっさん「ううっ……! うぐぐっ! ぐうっ……!」
夫「しっかり! おやっさん! ――救急車を!」
妻「分かった!」
妻「大丈夫かな……」
夫「胸を押さえてたし、多分心臓が悪かったんだろうなぁ……」
夫「ところでこれは他のお客から聞いた話なんだけど……」
妻「?」
夫「おやっさん、昔ホストやってたらしいんだ」
妻「え、そうだったの!?」
夫「結婚生活は上手くいかず、別れちゃったらしい」
妻「そっか。だから昔を懐かしむような感じで、屋台でホストクラブなんてやってたのかな」
夫「うん、どうりで話も上手いわけだよ」
妻「おじさん、助かるかな」
夫「俺たちにできることは何もないよ。せめておやっさんの無事を祈ろう」
妻「そうね……」
…………
……
夫「……」
夫「ここが……そのホストクラブがあった場所だ」
娘「今は……なにもないね」
夫「そう、ホストクラブはなくなってしまった」
夫「俺たち夫婦のホストだったおやっさんはもう……いないんだ」
娘「そんな……」
娘「え?」
夫「おやっさん!」
おっさん「久しぶりだな、元気してたか?」
夫「おやっさんこそ!」
娘「え? え?」
おっさん「ほら、挨拶しなさい」
孫娘「こんにちはー!」
夫「こんにちは」
娘「こんにちは」
夫「おやっさんは倒れたのをきっかけに、やっぱり別れた娘さん夫婦の世話になることにしてね」
夫「今ではおやっさんは、俺たちのホストじゃなく……お孫さんのホストさ」
娘「んもーっ、紛らわしいこといって!」ポカポカ
夫「いてっ!」
おっさん「ハハハ、お前さんの娘も元気のいいこって」
夫「今日はちょっとからかいすぎましたよ」
夫「そうですね。なんなら妻も呼びますよ」
おっさん「お、いいねえ」
娘「私たちはジュースでも飲ませてもらおうね! おかわりもしちゃおう!」
孫娘「うん!」
おわり
引用元: https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1622633473/
Source: GAMAG
【えっ】夫「妻がホストクラブにハマってるっぽいんだ……」